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完成体少女  作者: 有原優


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第十一話 初任務

 

「しかし、中々深い森だな」

「だねー」

「しかし、これでは俺の負担がでかいな」


 そうウェルツは車椅子を押しながら言う。ユウナも飛行魔法を自己習得は下が、まだまだ実践レベルにはない。むしろあの時ユウナが倒れたのは飛行魔法のせいかもしれないからだ。


「いや、ごめんね、私のために」

「ほんとだよ、まあお前の体力を使わすわけには行かないからな」

「ありがとう」


 ユウナは素直にお礼を言った。


「素直にお礼を言うなよ、照れくさい」

「えへへ」

「先に行くぞ」



「ねえ、あれじゃない? 森をたむろしてる魔物って」

「ああ、ぽいな」


 そこには二本足の黄緑色した肌を持つ、人間に似た魔物がいた。


「じゃあ私が燃やしちゃうね」

「おい、お前が炎を発したら森が燃えちゃうだろ」

「それもそっか。じゃあウェルツさん任せた」

「わかった、まあやるだけやってみるさ」


 そして看守は剣を取り、戦闘体制を取る。


「とは言え、俺はそこまで強くないからなあ」

「頑張れー!」

「ああ」


 そしてウェルツが魔物に斬りかかる。魔物は突然の奇襲に驚くが、すぐに剣を持ち、剣で攻撃を受けた。魔物とは言え、剣の扱いには慣れているようだった。

 ウェルツはひとたち斬り合った後に、いったん下がり距離を取る。魔物も、警戒して様子を見る。ユウナは戦闘などほぼ見たことがないので、緊張して見ている。


「ふん!」


 ウェルツは剣で再び斬りかかる。だが、今度は少し違うことに、剣を炎で纏っている。少し工夫を加えたのだろう。ウェルツは剣でしつこく斬りかかる。だか、魔物もうまく剣で捌き切って、戦闘が終わる気配がない。


「私も手伝う。雷だったらいいでしょ」

「お前の場合は威力がデカいから気をつけろよ」

「わかった」

「いっけー、サンダーボール!」


 雷弾が魔物めがげて発射される。魔物はすぐに危険だと把握して、避ける。


「曲がれー!」


 だが、雷弾も同じように曲がって、魔物を追尾する。その雷弾が魔物にぶつかり、魔物は粉砕される。


「やった!!!」


 しかし喜んだのも束の間、雷弾が魔物を粉砕した後、勢い止まらずに木に当たった。そしてその影響で山が燃え始めた。


「え!?」

「だから威力は気をつけろと言ったんだ。これどうするんだ?」

「私が水で消しますよ。そりゃあ」

「お前の場合、水が強すぎて山が潰れないように気をつけろよ」

「私がそんなに不器用に見える?」

「見える」

「……」

「早く消せ」

「はいはい」


 そしてユウナは大量の水を出して山に流す。


「やればできるじゃん」

「うるさい」


 ユウナは顔をそっぽに向ける。


「しかし、水が多すぎないか?」

「あ、たしかに。水よ、止まれ」


 そして水が止まった。しかし、水は勢いが止まった後、そのまま山の下の方へと方向転換し始めた。


「ふう」

「おい、あの水こちらに向かってくるぞ」


 ウェルツが気づいた時にはもうだいぶ流れてきていた。


「避けなきゃ」

「それもそうだが、あれ、街に向かって行くぞ」

「え!」

「そりゃそうだろ、あんなに水を出したら」

「仕方ない。雷弾だしてせきとめるか」

「今度は火を出さないようにな」

「分かってますよ」


 そして雷弾でせきとめようとするが、うまくいかない。


「これ、どうしたらいいの?」

「俺に聞くなよ、俺だってわからねえんだから」

「ええ!」

「しかし、このままでは時間の問題だな」


 実際水は山を流れてそろそろ街に本格的に攻めてこようとしていた。

 このままではやばいと二人が感じた時、看守が奇策を思いついた。


「おい、ユウナ! 土の隆起は出来るか?」

「たぶんできるけど、なんで?」

「壁を作るためだ」

「わかった!」


 そして地面から土が隆起して、水をせき止める。


「これでいいの?」

「ああ」


 だが、水の勢いに壁が少しずつ壊れていく。


「え、だめじゃん」

「……そのまま壁を斜めにしろ」

「こう?」


 そして土の壁は斜め向きに動き、水の勢いを殺す。


「これで水は収まっただろう」

「流石、ウェルツさんだね」

「いや、これは……お前の成果だ」

「え、もっと褒めて!」

「よくやった」


 ウェルツが頭をなでた。


「ありがとう!」

「さて帰るか」

「うん!」

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