最終話 竜
ユウナたちが数歩歩いて行くと、そこには大きな大きな竜がいた。
(大きい)
そう、思いながら上を向く。
その竜は大きい。それも、遥かに。
前にあったドラゴン。そんな物とは比較すらも出来ない。
それだけ大きな竜だ。
「よくぞ我の元にたどり着いた」
龍がユウナたちを見下ろしながら、見る。もの凄い威圧感だ。
「それで、なぜここに来た」
「なぜ」
「ああ、我ら原子の竜と貴様ら人間とは住む世界が違う。だからこそ、ゴーレムによって入り口をふさいでいたわけだが。ここまで来たという事は、それ相応の覚悟があってきたのだろうな」
「お願いがあってきました」
ユウナは頭を下げる。
「私たちを完成体の因果から解放してください」
その言葉に、竜は一瞬目を見開いた。
そして、ユウナの方に顔を向けて来る。
「ふむ、なるほど」
そう、唸った後、
「中々の因縁に苛まれていると見える。貴様の中にもう一人、人間が眠っているな」
その言葉に、ユウナは静かにうなずく。
「なるほど、なら我に出来る事がある」
そう言って竜はユウナの体にちょこんと首を当てる。
「この少女をどうしたい」
「私の中から解放してあげたい、勿論生きたままで」
「それならたやすい事だ」
そう言って竜はユウナの体を触る。すると、ユウナの他に一人の少女が爆誕した。
勿論ユウリだ。
「私?」
ユウリは自分の方を指さす。
その姿はユウナとは大違いだ。だけど、声で分かった。
「私の体が出来たー」
そう言ってユウリは大喜びをした。
「それだけで願いは終わりか?」
「いいえ、もう一つお願いしたいことがあるの」
「なんだ、言え」
「それは……私たちを完成体の呪縛から解放して欲しいの」
「完成体の呪縛から?」
「うん」ユウナは頷く。
「いま、私達の他にも完成体の呪縛で苦しんでいる人が多いの。もし完成体になると、別人格が生まれる。そうなったら、また苦しみを追う人が増えるから」
そう、ユウナたちだけではないのだ。
完成体により苦しんでいる人達は沢山いる。ユウナたちだけが良ければすべて良しではないのだ。
ミコトだってそうだ。純粋な完成体として生を受けていたのだ。
「お願いします。私たちみたいに苦しんでいる人たちを救ってください」
ミコトのような人たちのために救済も必要なのだ。
「分かった。そなたらを完成体の因果から解放してやろう。しかし、これだけの大きな力だ。易々とつかう訳にはいかない」
そして一呼吸を置く。
「代償が必要だ。それも大きな、な」
「大きな」
ユウナは唾をのむ。そして、次の瞬間、代償が説明された。
「それは、力だ」
「力って?」
「この我を倒して見せよ。それが、条件だ」
龍を倒す。その言葉にユウナたちは目をぱちくりとさせた。
「どうして?」
「理由などない。ただ、の。我の我儘だ。しかし、それくらい覚悟しているのではないのか?」
覚悟。勿論覚悟なら既にしている。
戦う覚悟なら。
「言っておくが、我はゴーレムよりはるかに強い。覚悟はできているか」
「できているよー」
その、ユウリの言葉に「よし」と竜がいい、空に飛ぶ。
「あれを倒せばいいんだよねー」
ユウリもまた地面を蹴って空に飛ぶ。
「覚悟しててねー」
そして空から一気に飛び降り、急所を狙う。
無駄だ」
竜は体をしなやかに動かし、攻撃を攻撃を避ける。
ユウリは空をしなやかに飛びながら追撃を試みるが、それが罠だった。
次の瞬間竜は逃げるのをやめ一気に炎を吐いてきた。その攻撃に空中にいたユウリは上手く受けきれず、その場で攻撃をくらう。
しかし、流石はユウリ。地面に上手く着地した。
「あれ、図体のわりに素早いよー」
「みたいなのです」
そう言ったミアは空に飛ぶ。
「私はユウリちゃんみたいなへまはしないのです」
そう言うと体を巧みに動かして、竜の上に乗る。
「こういうのは、上に乗ればいいのです。ユウリちゃんは遠距離攻撃に集中して欲しいのです!!」
そう言って、こぶしを熱心に振りまくる。
「私をなめてないかなー?」
「それに私もいるしね」
ユウナは必死に手で魔力を溜める。
別にユウリが上位互換な訳ではない。あの日から魔力の質が上がっている。
ゴーレム戦の時は力を存分に使えなかった。
だけど、今ならそれが出来る。
ユウナは竜を視界にとらえる。
その間にユウリは竜にまた近づいていく。
「うっとおしい」
龍がそう言って上に載っているミアをはじこうとしている。
「私だって、役立たずは嫌なのです。出てくるのです」
そして、ミアは念じた。するとそこには完成体としてのミアがいた。
「分離に成功したのです」
先程の竜の力はその場にいた二人に注がれた。
という事は、ミアも完成体を分離させることに成功できるという事。
「懐かしい景色だな。ハーグス、貴様が出したのか?」
「うん。そうなのです。わたしと一緒に戦うのです」
「良かろう」
そして、ハグルティアは空を飛ぶ。そして竜の面前でこぶしを振りまくる。
そのまま連撃を加えていくも、中々竜はしぶとく生き残ってくる。
そして、返しに強大な炎を吐けば台地が爆ぜる。
中々の無茶な戦いだ。
だが、そんな無茶な戦いも希望はある物だ。
確実に状況は上向いていた。
ユウナたちの粘りに段々と竜が体力を削って行ったのだ。
竜は巨大だ。
だけど、体力は無限ではない。最初は二人だけだった。しかし竜はユウナたちをそれぞれ二人に分離させた。つまり、結局は四人になったのだ。
つわもの四人。その攻撃が重なれば、もう敵はいないのだ。
「覚悟して」
「やるよー」
「覚悟しろ」
「覚悟するのです」
四人の攻撃が一気に竜を貫く。
戦闘の中で体力を段々と減少させてきていた竜はその攻撃でついに、地へとついた。
「やるな」
竜は地面の上でそう呟いた。
「分かった。満足した。今からこの世のすべての完成体を祖の因果から解放して見せよう」
そして、竜は点に向けて吐息を吐いた。
そのブレスは天に到達しそして、地に降り注いだ。
「これでもう、完成体などという物は生まれることがない」
「ありがとうございます」
ユウナは頭を下げた。すると竜もまた「我も感謝する。久方ぶりに楽しかったぞ」と言った。
そして、帰り道は竜の背中に乗って帰ることとなった。行きは何日もかけた道が、帰りはたったの5時間ほどで到着した。
「おかえり」
ウェルツはユウナに対して言った。そんな彼に向かってユウナは一目散に抱き着きに行った。
「ただいま」
満面の笑みと共に。




