第101話 店
早速店に着いた。
ここはそこそこの値段がする所謂居酒屋だ。
お酒があったりだとか、肉が置いてあったり、様々な物があるのだ。
「お金があるからいくらでも食べられるのです」
ミアはそう言って涎をたらす。
「うん、そうだね。たくさん食べたい」
『私にも食べさせてー』
「分かってる」
「食べ過ぎないでよね」
そんな三人にミコトがそう言ってウェルツもうなずく。
「あれ、もしかして英雄さん?」
ふと水を注ぎに来た店員さんがそう言った。
「褒章式に来てたんですか?」
「ええ、勿論。あの事件から魔物が減ったんだもの。感謝しなきゃならないわ。それに消えた魔物はたべられない魔物ばっかりだったしね」
そう言って店員さんは笑う。
「ありがとうね」
そう、感謝を述べる店員に対して、ユウナは「いえいえ」と返した。
「ユウリちゃん、ありがとうだって」
「うるさい」
ユウリはそう言うものの、まんざらでもない様子だ。
そして食べていく。
酒はウェルツしか飲めない。
「私も飲みたいな」
「子どもは、酒を分解できないんだ。我慢してくれ」
「ちぇ、私だって17歳なのにさ」
『ユウナちゃんって17だったのー?」
「うん。ま、精神年齢は低いんだけどさ」
「英雄さん、誰と話しているんですか?」
「ああ、ユウリちゃんと話してるの、えい!」
そしてユウナはユウリと体の主を変える。
「わたしとはなしてたのー」
「ええ??」
店員は見てわかるような驚いた表情を見せる。
「正確に言うと魔王を倒したのも私だよー。私はユウナちゃんの別人格なんだー」
そう言ってユウリはウェルツの前にあるお酒に手を出す。
「だから、これものめるわけー」
正確に言えばこの世界の飲酒可能年齢はない。しかし、18からが望ましいとされる。
『よく飲んだ。流石!!』
ユウナは拍手をする。
「お前なあ」
「大丈夫ー、全然酔ってないしー」
『ふふ、ははは』
「ユウナちゃんもお酒の影響受けてるのー?」
『うん、少し気分が高揚してきた」
(不思議、私が飲んでるわけじゃないのに)
『そう言えばユウリちゃん」
「なーにー?」
『ユウリちゃんに体を取り戻したいと思うの。どうしたらいいか、今度聞いてみてもいい?』
「だれにー?」
「ルイスさんに」
ルイス、あの人はクズだ。様々な騒動はあの人が発端として起きていると言っても過言ではない。
だけど、ユウナにはどうしても彼に訊きたいことがある。
今はきっと牢にいるだろう。
彼がやったことは到底許されることではないのだから。
あの時注射針を打つという選択肢を取ったのはユウナだ。
その時にユウリの存在を知った。ユウリの苦しみを知った。
ユウリがいつまでも体を持てない、というのもあまりにも可哀そうな事だ。
何とかしなければという思いはある。
『あなたの体を作ってあげたいの。そしたらなんとか出来るかもしれないから』
いや、何とかして欲しい。
そう、心の底から思っている。
今まで様々な悪事に手を付け、ユウナとしても許せない存在のルイス。だからこそ、少しでも自分のためにユウリのために力になって欲しい。それが今まさにユウナが思っていることだ。
「それはいい考えかもしれないねー、いこー」
「どこに行くのです?」
ミアが訊く。
「ルイスの所だよー」
その言葉に、ミコトが「やめた方がいいと思う」と言った。
「嫌な気持ちにしかならないと思うから」
そのミコトの言葉、まさにルイスを嫌悪している様子だ。
「戦いの途中は仕方がないと思って許してたけど、あの人のしたことは最悪だよ。私もみんなも酷い目に逢ったんだもん」
「私は恨んではないのです」
ミアはどちらかと言えば最初は協力的な立場だった。
「恨んではないのですけど、でも思うところはあるのです」
「思うとこー?」
「はい、なのです。私は、組織の事は恨んではないのです。あの時はゆがんだ愛を貰ってたとは思うのですけど、でも、あの時はそれなりに人生を楽しんでましたから。でも、魔王を復活させたり、国を奪おうとしたことは許せないのです」
「俺もだ、組織にいて、洗脳されてたとは言え、ユウナの両親を殺したり沢山の人を殺した。俺は悪人だ。組織に洗脳されていたからと、許されることではない」
「私も同じなのです。あの人の命令で沢山の人を殺したのです。それは、変わらないのです」
二人はかつて組織のために盲目的に貢献していた。
だからこそ、ユウナやミコトとは違う感想が出てくるのだ。
そして、沈黙状態になった。
誰も言葉を話さない。所謂気まずい雰囲気だ。
そして、その沈黙を破ったのはユウリだ。
「私が一人で行くよー、ってユウナちゃんが」
ユウナが言ったのだ。
「変わるねー」
そして、目つきが変わり、ユウナが現れた。
「私はさ、ユウリちゃんを解放したいだけなんだ。二人で一人の体を使うのも、私は良いけどユウリちゃんは不便じゃないかなと思って」
「なるほど。それなら奴なら知っている可能性があるな」
「でしょー!! だから、良いかなって」
「そうだな。だが、本当に一人で行くつもりか?」
「一人で行った方が分かりやすいかなって。まあ、ユウリちゃんとの二人だけどね」
「だと、してもだ」
「大丈夫だよ。私もう大人だよ?」
「酒で赤くなってるのに」
「なってるのにだよ。明日は私一人で行きたいの」
ウェルツはユウナの顔をじっと見る。
そしてその顔にやる気が詰まっているのが分かった。
「分かった。じゃあ、そういう事でいいな」
「私は心配だよ。お姉ちゃん」
「ミコトも大丈夫。私を信じてよ」
そう言ってユウナはにっこりと笑った。




