6/? 原作キャラには愛想よく
「それで? その有名人さんたちが俺に何か用ですか?」
「いや、随分と腕の立つ新人が来たな、と思ってな」
「ああ、強い相手と勝負するのが好きなんでしたっけ、あなた。でも今の俺じゃあなたには到底敵わないと思いますよ。文字通り、レベルが違うって言うか。一方的に叩きのめされて終わるだけだと思いますけど、そんな弱い者イジメ楽しくないでしょ?」
「!」
なんだ、変な顔して。後ろの連中もにわかに殺気立つ。勘弁してくれよ! 確かに俺みたいなのが女の人に話しかけたら大抵こういう反応になるけれども!
「あ、ああ。そうかもしれないが。君は随分謙虚なのだな」
「身の程を知らない奴から死んでいく。そうでしょ?」
「!?」
いよいよもって彼女の笑顔の引き攣りが隠せないレベルにまでなってきた。なんでだよ! 今の俺は勇者ショウトのイケメン顔だぞ!? 魂がブサメンだと顔がイケメンでも女性にドン引きされてしまう運命なのか!? それって辛くないか!?
ちなみに『身の程を知らない奴から死んでいく』はチャオ・チェンの戦闘終了ボイスだ。無駄に575で韻を踏んでいるため、東国出身のサムライという設定も相俟ってファンの間では実は趣味が俳句、などといった二次創作設定を付けられたりもしていたが、今は関係ないので割愛。
「あ、ああ。そうだな。その通りだ」
「じゃ、俺そろそろ2階目指すんでこの辺で」
なんか悲しくなってきたので早々に切り上げることにした。ブサメンに人権はない。たとえ顔がイケメンでも魂がブサメンなら同罪。そんな事実知りとうなかった!
「最後にひとつだけ。君は本気で最上階を目指しているのか?」
「逆に目指さない奴ここに来ます?」
「そうだな。愚問だった」
知ってるけど知らない人と初対面で話すのは精神的によろしくないな。俺は愛想笑いを浮かべ、手を振って別れる。4階で初遭遇する筈の彼女らに1階で出会ってしまうだなんて、やはり全てがゲームのシナリオ通りには事は運ばないらしい。実際、最初の仲間に変態呼ばわりされてパーティーから離脱されるなんてイベント、原作にはなかったわけだし。あんま攻略情報を過信せず、都度都度状況を鑑みて臨機応変にやっていかないと、思わぬところで足を掬われるかもな。用心しないと。