32/? 僕らはみんな用意周到
「バリアボールです! 大佐!」
「見れば分かります! 第2射、装填!」
バリアボール。その名の通り、ドーム状の魔法バリアを張るアイテムだ。時間経過で消える上、攻撃を受け続ければ割れてしまうし、何より使っている間はバリアドームの中から出られないため逃げられないしこちらから攻撃もできない。それでも、敵の射撃攻撃の第一波をしのげるだけの強度はある。
「撃ち続ければ、いつかは割れます! 彼らは追い詰められた袋のネズミ同然! 第2射、構え! 撃てえ!」
再び降り注ぐ矢の雨。淡く輝く魔法バリアの表面にヒビが入る。次は割られるだろう。割られたら2個目のバリアボールを使う? いいや、それじゃあ不毛な消耗戦になってしまう。延々足止めされるなんて御免だ。
「窮鼠猫を噛むって言葉、知らない? 出番だよ、エ」
「ああ」
濁った瞳に、ギラギラと欲望に満ち満ちた笑みを浮かべたリザードマンが、バリアドーム内で一歩前に歩み出る。
「異様な大爆発、と言ったな。その理由と原因を……教えてやるよ!」
「な!?」
羽織っていたフード付きのマントを、ガバっと脱ぎ捨てるエメラリエ。その下から現れたのは、緑の鱗に覆われた逞しい肉体……に巻き付いた、大量の赤い筒状の爆薬だ。腕、胴体、脚、首にも。全身至るところに大量の爆薬を巻き付けた彼の覚悟の姿に、オリビエ含む国王軍の兵隊たちが息を呑む。
「お前らには失望した! 本当に! 心の底からガッカリだ! 何がデザトリアンドリームだ! 何が賞金だ! 何も知らない冒険者を騙して、いざとなったら国王と国王軍が最後の美味しいところだけを横取りするつもりだったんだろう! 最初から! バカにしやがって! 冒険者を、冒険者の夢を! バカにしやがって!」
「それは誤解です! 落ち着いて、バカな真似はやめなさいエメラリエ! チャオ・チェンも、アナタがそんな過ちを犯すことを望まない筈です!」
「うるさい! うるさいうるさいうるさい! 黙れ黙れ黙れ黙れえ! 頼むからここで死んでくれ! 俺の夢のために死んでくれ! 俺諸共死んでくれ!」
エメラリエはマッチを擦り、それを己の体に近付ける。
「この小型高性能爆弾の威力は今朝思い知ったばかりだろう! この程度の量でも……この場にいる全員を消し炭にするなんて朝飯前だ! 腐りきった街の奴らも! 俺らをバカにしやがった国王の軍隊も! みんなみんな、消えちまええええ!」
「このバリアが消えた時がここにいる全員の命日です。では、サヨウナラ」
「攻撃中止! 撃ってはいけません! 退避! 総員、退避いいいい!」
「うわあああ!? に、逃げろおおおお!」
悲鳴、絶叫、大混乱。我先にと逃げ出そうとした暴徒・野次馬どもが押し合い圧し合い将棋倒しになって、身動きが取れなくなり悲鳴を上げながらそれでも誰かを押しのけて我先にと逃げ出そうともがく。国王軍も、さすがに命を捨ててまで俺たちを止めようとする剛の者はいなかったらしい。オリビエが退避命令を出したのをこれ幸いにと、大慌てで退避し始める。誰も彼もが大パニック状態になり、俺たちから一瞬視線を切った。ほんの僅かに開けた活路。それだけあれば十分だ!
「今だ、シ!」
「走れ、エ! レッツラゴー! ゴーゴー!」
道を塞いでいた国王軍が陣形を崩し、塔へ通じる道が開けたのを確認した俺たちは、バリアボールを解除し全速力で駆け抜ける。
「な!? しまった! 爆薬は脅し!?」
今更気付いてももう遅い。オリビエが体勢を立て直すよりも先に、俺たちは8階のボスメダルを使って8階のボス部屋の奥にある転送装置まで一気にワープしたのだった。やったね大成功!




