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31/? それぞれの今後の身の振り方

「時間もあまりないんだ。これからの話をしようじゃないか。俺はこの街から手を引くつもりだが、お前はどうする?」


「愚問ですね。俺は塔の天辺を目指しますよ。折角ようやくここまで来て逃げるぐらいなら、死んだ方がマシです」


「そうかい。何がそこまでお前を駆り立てるのかは知らんが、精々頑張れ」


「アナタも、ご武運を」


 街全体がこんな状況になったせいで、彼の商売は立ち行かなくなってしまった。であれば、別の街に避難するのは当然だろう。虎王は幾つもの隠し財産を持っているらしく、最大の稼ぎ頭であるこのホテルとカジノを放棄しなければならないのはかなりの痛手だが、それでも致命傷にはならないという。


「とはいえ、大損なのは事実だ。それならせめて最期ぐらいは、弔いにド派手にドデカい花火を打ち上げてやろうじゃないか。呼ばれもしないのに押しかけてきた迷惑な団体客を根こそぎ巻き込んで、盛大にな」


「いいですねえ! 俺も街の連中にはウンザリさせられました。ここらで一発スカっとしてから、お互い全速力で目標に向かって突っ走るとしましょう!」


 ニヤリと笑う白虎。メソメソ泣き続ける裏切りトカゲ。混迷がグルっと一周して裏返って、なんだかワクワクしてきた俺。この世界に転生して3週間。そろそろ俺のリアルRTAもクライマックスが近付いてきたわけだ。


――


 地上10階建てのデザーの塔。その入り口。高さだけなら13階建てのホワイトタイガースホテルの方が高い上に豪華だが、それでもある種の威厳をもって佇むかの塔は、この数十年間多くの人間を魅了し、その人生を狂わせ、拒み、そうして今も相変わらず、この乾いた熱風吹き荒ぶ砂漠の大地に悠然とそびえ立っている。


「止まりなさい」


 その入り口には今、国王軍が完全武装して待ち構えていた。その指揮を執るのは、何かと俺と縁のある女軍人オリビエだ。暴動を起こし暴徒と化した民衆たちも、国王軍に協力するかのように塔の周辺を包囲している。


「今朝発生した、ホワイトタイガースホテル並びにホワイトタイガースカジノでの爆発事故。闇市全域を一瞬で吹き飛ばしたあの異様な大爆発のせいで、一体何人死んだか分かりますか」


「分かりませんし、興味もありません。アレは爆破テロですよ。狂った民衆が、虎王を殺すために行った悪質なテロ行為です。私を責めるのはお門違い。むしろ被害者なんですけど?」


「黙りなさい。全部あなたのせいです。あなたさえ現れなければ、こうはならなかった。あなたさえいなければ!」


 虎王の切り札。秘蔵の爆弾。いざって時は、敵諸共全てを吹っ飛ばして自爆するための大量の爆薬。彼がもしもの時のためにカジノの地下にせっせと集めて大量に貯蔵しておいた爆薬が、時限式の発火装置で一斉に起爆した結果、闇市はほぼ完全に消し飛んだ。朝一番の大地震で飛び起きた何も知らぬ人間たちは、全てが消し飛んで更地となった闇市跡地にホテルとカジノの一部残骸が落ちているだけという信じ難い光景を前に、自分がまだ夢の中にいるのではないかと思っただろう。


 時限式の起爆装置をセットしてあらかじめ安全なところまで秘密の地下通路を通って退避していた俺たちは、皆が大混乱&大パニックに陥るのを待って行動を始めた。虎王とその腹心の部下たちは別の街へ逃走。俺とエメラリエはフード付きのマントを羽織り、変装してデザーの塔へ。いやあ爽快だったね。手を出したら終わりだからとずっと我慢してきたストレスが、特大の花火と一緒にパーっと吹き飛んだんだからさ。


「それってただの責任転嫁ですよね。俺を外道呼ばわりしながら、俺が悪事を働いた証拠は何ひとつ掴んでいない。当然です。だって俺は、本当に何も悪いことしてませんから。本当にただ、独りぼっちで寂しく塔を登っただけ」


「全てを承知の上で言います。死んでください。あなたにあの塔は登らせない。王も、それをお望みです。あなたの悪評は洗いざらい全て伝えました。あなたのような人間にデザーの塔の初めての登頂者になられると、大勢の人間が困るんです」


 50を超える王国軍人たちが、一斉にこちらに弓を向けてくる。なるほど塔に近付く前に殺したいなら有効な手だ。


「撃てえ!」


 空から降り注ぐ矢の雨。俺とエメラリエの処刑を一目見ようと、押しかけた暴徒、野次馬どもがワっと歓声を上げる。まったくもって度し難い。理解に苦しむ。俺はただ、大好きなフリーゲームのRTAをやりたかっただけなのに。一体どうしてこんなことになってしまったんだろうなあ?

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