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30/? 闇市抗争イベント

「虎王を殺せえええ!」


「みんな! 今こそ立ち上がる時だ!」


「あのデストレ野郎ともども、血祭りに上げろ!」


「うおおおお! 龍王様ばんざあああい!」


 闇市抗争イベント。それはゲーム終盤で発生する大規模な戦い。龍王を仲間にするためには一連の闇市イベントを終わらせる必要があるのだが、この抗争はその集大成となる出来事だ。闇市で起こした暴動に乗じてホワイトタイガースカジノに乗り込み、悪の犯罪王である虎王を始末する。すると晴れて闇市は完全に龍王ファミリーの縄張りとなり、虎王ファミリーの残党は全員逃げ出し闇市には平和が戻るのだが。


 確かに原作ゲームにもあったイベントだよ? でもだからって、主人公である俺が一切龍王に関与してないのに勝手にイベント進めないでほしいんですけど!?


「困ったことになった。いや、遂にこの時が来たと言うべきか」


「まるでこうなることが分かってたような口ぶりですね?」


「少し頭を冷やしてから使えば誰だって分かるだろうよ」


「てことは、当然」


「ああ。対策だってとっくにしてあったさ」


 7階&8階ボスの連続討伐、エメラリエの裏切り、国王軍に9階まで行ったことがバレる、と色んな出来事があった激動の一日から一夜明けて。どうやら俺が9階に到達したことで、完全にデザトリオンの街の住民に火がついたらしい。朝一番でホワイトタイガースホテルとホワイトタイガースカジノを取り込み、暴徒と化した冒険者や住民たちが暴動を起こし始めたのだ。


「ぶち破れ!」


「全員殺せ!」


「ぶっ殺せ!」


「虎王派を皆殺しにしろ!」


「正義のために! 龍王様のために!」


 四方八方から物が飛んでくるわ、忍び返しの付いた鋭い鉄柵を乗り越えて乗り込んでくる奴がいるわ、カジノとホテルの固く閉ざされたシャッターがガンガン殴られ、このままぶち破られるのも時間の問題だろう。そうなれば暴徒が一斉に雪崩れ込んでくる。幾ら虎王自身との腹心の部下が強かろうが、多勢に無勢じゃ分が悪い。


「あーあ。濡れ衣だってのに、随分嫌われたもんだな俺も」


「俺も同じだよ。何かあればすぐ虎王のせい、だ。悪評は悪評を呼び、無責任な噂だけが独り歩きしていく。誰が吹聴したかも分からない憶測が、巡り巡って奴らの中じゃ真実になるのさ」


「嫌な話ですね。誰かが……俺が塔の10階に辿り着いたら、本格的に醜い足の引っ張り合いが始まるだろうとは思ってました。デザーの塔を世界で最初に踏破した人間には、それだけの名声が与えられる。当然、金だって大きく動くでしょう。それを利用したい、そのおこぼれに与りたい貴族、商人、ギルド関係者、冒険者は山積みですからね。ですが、まさかここまで民度が終わってるとは思いもしませんでしたけど」


「普通はな、優れた冒険者にはスポンサーやパトロンが付くもんだ。だがお前さんには全くそれがなかった。将来有望株を取り込むにしたって、味方殺しの烙印を押されたデストレーサーじゃ取り込んだ側が叩かれる。ちょうど今の俺みたいにな」


 ぼやきながら、虎王が煙草に火をつける。甘い煙と苦々しい表情。一晩明けてもまだメンタルが回復しきっていないのか、エメラリエは鬱屈とした表情、濁った瞳で項垂れた。ちなみに彼の寝返りについては昨夜のうちに虎王に説明してある。


「もし仮に、俺らが先に10階に到達してたら。こんなことにはならなかったのかな」


「だろうな。黄金の夜明けに吹く風は真っ当なA級冒険者パーティーだ。実力的にも経歴的にも、疑わしい要素はない。きっと、大手を振って歓迎されただろう。その後はありとあらゆる政治の道具にしようと企む輩が群がっただろうが」


「そうか。でも、そうはならなかったんだよな。そうはなれなかったんだ。だから、考えるだけ無駄だよな。俺は、間違ってないよな?」


「さあ。あなたの行いの正否については、後の歴史家たちが熱心に研究してくれるでしょう。もっとも、歴史に名が残れば、ですが。この調子だと、俺らがデザーの塔を制覇しても、歴史から抹消される可能性の方が高いかもしれません」


「不都合な事実は闇に葬り去られ、都合のいい真実だけが上塗りされるのは世の常だからな」


「そんな!? それじゃあ、俺は一体なんのためにアンタの家来になったんだよ!? なんのために仲間を裏切ってまで!」


「憐れな奴だ。ショウトとともに、お前の名前も知れ渡ったぞ。最低最悪の裏切り者、ってな。今更昔の仲間の元には戻れんだろうよ」


「でも、あのままあのパーティーにいても目の前で俺があなたの夢を悠々と踏み潰していくのを指をくわえて見ていることしかできなかったわけですから、結果として悪くない選択だったと思いますよ。名実ともに、とはいきませんが、実は取れるんですから」


 呆然自失となり、何かをブツブツ呟きながら膝に顔を埋めて泣き始める大柄な強面リザードマン。おじさんの人可哀想。彼にも新しい装備を与えてあげるべきだろうか。でも戦闘には参加させないし。でも鎧なしのインナー&アンダーアーマー姿じゃなあ。家来らしくはあるが。


「時間もあまりないんだ。これからの話をしようじゃないか。俺はこの街から手を引くつもりだが、お前はどうする?」

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