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閑話 ホワイトタイガース・アイ

「だー!? また負けた!」


「オイオイ、弱すぎるだろお前」


 ここは虎王の経営するホワイトタイガース・カジノ。スロットマシン……はさすがにまだ発明されていないが、ポーカーにハイ&ロー、バカラ、ブラックジャック、ルーレットといった各種賭け事に加え、ダーツやビリヤードなども楽しめるエンタメ施設。


 そんなカジノでボロ負けしまくるショウトを前に、虎王は思わずといった様子で煙草の灰をポロリと落としてしまった。面白いを通り越して気の毒になるぐらいの連戦連敗だ。何をやらせても全然ダメ。どうせ今夜はもう寝るだけだから、とデザーの塔の攻略以外ロクに目もくれなかった男がカジノに顔を出したというので、面白半分に様子見に来たのだが、あまりの結果に苦笑いするよりない。


「言っとくが、イカサマなんぞ指示しちゃいねえからな?」


「分かってますよ。あなたが今の段階でそうさせる理由も意味もありませんし。俺、元からこういう賭け事には死ぬほど弱いんですよね。運が絡むと途端にダメで」


 Wピックアップとか絶対欲しい方が来ないだけでなく、特に欲しくないもう片方ばっかりが来るような星の下に生まれてきた、とよく分からない愚痴をこぼしながら、テーブル台に突っ伏した顔を上げるショウト。そのションボリ顔があんまりにもあんまりだったもんで、クク、と笑みがこぼれてしまう。


「チクショウ! 運ゲーなんか嫌いだあ!」


 ぼやきながらノロノロと席を立ち、フラフラとテーブルを後にする彼の後を気まぐれに追ってみると、サービスで幾らでも飲み放題のカクテルグラスを手に、誰でも自由に遊べるビリヤードゾーンの方へ。


「できるのか?」


「ええ、まあ。ド下手ですけど、下手の横好きになりに」


「それじゃあ、ひとつ勝負といこうじゃないか」


「念のため言っときますけど、何も賭けませんからね?」


「さすがにそこまで野暮じゃないさ」


 民族衣装の薄手の上着を脱ぎ、腹心の部下がそれを受け取る。袖まくりをした虎王がキューを手にする姿はとても画になっていた。


「知ってた!」


 勝負は一方的な虐殺で終わった。途中虎王が何度か手を抜いてやったのだが、そんな気遣いが何の役にも立たないぐらい、驚くほど彼は下手だった。奇跡的に1個だけボールを落とせたものの、それ以外は壊滅である。


「まあ、そう気を落とすな。夜は長いんだ」


「苦しむ時間が長引くだけじゃないですかヤダー!」


 カジノの本質はギャンブルよりも、紳士淑女の社交場である。勝った負けたで一喜一憂するのは本末転倒。そんなことも分からないお子様丸出しの悲鳴に、虎王はなんだか微笑ましい気持ちになった。随分世間を騒がせちゃいるが、その素顔はまだまだ世間知らずのただのガキ。


「まあまあ、そう言うな。折角の機会なんだ。大人の遊び方ってもんをひとつ伝授してやろう」


「うう! よろしくお願いします!」


 砂漠の夜は更けていく。

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