27/? 大胆すぎるチャート変更
前回までのあらすじ。第1回『ドキドキ☆絶対に内心焦ってると見抜かれちゃいけないRTA』始まるよ!
「正直に言います。今まではちょっと手を抜いてました。心のどこかで舐めてました。どうせクリアできるのは俺だけだろうって。でも、ここからは一切の油断なく本気で行こうと思います。仲間、もとい家来になってくれた君のためにも」
「はあ!? アンタ、こんだけのことをしでかしといて、まだ手加減してたって言うのかよ!?」
「はい。ですがここからは本気の走りをします。俺の家来になったのですから、俺の命令には絶対服従してくれますよね? 土壇場でやっぱ嫌、なんて言われたらとても困るので、もしそうなりそうな時は君を切り捨てなければならなくなるのですが。というか、その可能性が1%でもあるならば、今ここで切り捨てることも考えなければなりませんが」
「言わない言わない! 俺、アンタの言うことに全部従う! 夢のため!」
そんなに怯えなくても。それだけ本気になった俺が怖かったのだろうか。
「大変結構です。では、改めてよーいスタートといきましょうか」
まずは7階のボスを倒す前に、8階攻略のための下準備をする予定でしたが……やめました。ここからは純粋にスピード勝負です。チャオ・チェンのパーティーとの競争になるなら、一切の無駄は省かねばなりません。
「それじゃ行きましょうか。それと、これからはタイム短縮のため俺のことはシと呼んでください。君のことはエと呼びます」
「なんで!?」
「ショウト、エメラリエと呼び合う時間が惜しいからです。シ、エ。ね? コッチの方が早いでしょ?」
「ま、待ってくれシ様! どこ行くんだ!」
「様も要りません。シで。二度同じことを言わせないように。それから、俺の行動に疑問を持たない。脳死で絶対服従する。嫌ですか? やっぱりクビですか? 追放しないとダメですかね?」
「い、嫌じゃねえです!」
「よろしい。それでは7階のボスを倒しに行きましょう。今後全ての戦闘は俺独りでやります。君は戦闘が始まったら離れてください。特にボス戦には絶対参加しないように。この決まりを破ったら殺します。本気で殺します」
「だ、大丈夫なのかよ! 7階のボスは、俺らが7か月かけてもまだ攻略の糸口も掴めねえような強敵なんだぞ!?」
「問題ありません。あ、ボス部屋に着きましたね。君は扉の外で待っててください。何度も言いますが、入ってきたら殺します」
7階のボスであるラブラブ♡熱愛チョコスライムは2体同時に出現し片方は物理無効、片方は魔法無効でという厄介な性質を持っている上に、片方を倒してももう片方が生きてると即座にHP満タンで無限復活するという厄介な仕様になっている。じゃあ2体を同時撃破すればいいんだよね、と思うだろうが、それは罠だ。2体のHPを同時に0にすると、今度は合体して超ラブラブ♡大熱愛チョコスライムになって襲いかかってくる。これはもう超強化なんてレベルじゃない。なんせ『無敵』だからね。ありとあらゆるいかなる攻撃が一切通じなくなる、ある意味裏ボスよりも可愛いキャンディちゃんよりも理不尽な存在。そんな相手をどうやって倒せばいいのかというと……何もしない。
そう、実はこのボス、開幕挨拶代わりに放ってくる強力な全体攻撃『ラブラブサンダー』と反撃以外の攻撃行動は一切してこない。定期的に味方全体を火傷状態にする特殊行動『熱々チョコ津波』を使ってくるが、ダメージは0で本当にただ火傷状態になるだけのためさほど脅威でもなく。そのためこちらから攻撃しなければ実に無害な存在なのである。戦闘が始まってもなんの攻撃もせず防御しながらしばらく放置していると、プレイヤーそっちのけでイチャイチャし始めるのだ。そのためこちらはひたすら防御、防御、火傷を回復、防御、防御、火傷を回復。すると好きなだけイチャイチャして満足したバカップルは、ボスメダルを置いてどこかへ去っていく。文字通りのラブ&ピースなボスなのだった。うん、酷いね。まさか7階まで来て『ボスに攻撃(ダメージの伴わない行動も含む。つまりこちらから何も)しちゃダメ』とか、気付かなきゃ永遠に詰まるよ!
「勝ちました。さ、8階へ行きましょう」
「ちょっと待て! ちょおっと待てえええ! 嘘だろ!? こんなアッサリ!? 俺らの7か月の苦労はなんだったんだよ!?」
絶叫し、ガックリと膝から崩れ落ちる裏切りトカゲ。無理もない。ゲームだとダメージ0だから脅威でもなんでもなかったけど、現実になると途端に全身大火傷不可避の凶悪かつ強烈なグツグツ煮え滾る熱々のチョコ津波攻撃をひたすら避け続けながら、何もせずに待ちに徹する、というのは原作ゲーム以上に難しかったのだろう。加えてボス戦から安全に逃走できるアイテムの数が限られている以上、そう何度も何度も気楽に挑めるわけではない。限られた試行回数の中で、取れる選択肢は限られているのだから。
「行かないの?」
「行きます! 行きますから置いてかねえでください!」




