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23/? ホワイトタイガースホテル

「頼む! 俺をアンタの仲間にしてくれ! 荷物持ちでもなんでもする!」


「え? (ソロじゃなくなるとデストレバグの効果が消えちゃうから)嫌ですけど」


「そこをなんとか! 頼む! この通りだ!」


「無理なもんは無理。ダメなもんはダメ。嫌なもんは嫌」


「……人が下手に出てりゃ付け上がりやがって! この人殺しのインチキクソ野郎が!」


「そのインチキ野郎の仲間になりたくて土下座までした奴がそれ言っちゃう?」


 最近、俺の仲間になりたがる奴が急増し始めた。酷い時は塔の前でこうやって出待ちしてることもあって、闇市に戻るための虎王さんちの馬車に乗り込むのも一苦労だ。こういう迷惑行為を禁止するために駐留している筈の国王軍は、当然のように助けてくれない。一体なんのための治安維持組織なんだか。


「なんとかなりませんかねえ。困るんですよ。いつまでもあんな調子で邪魔されると」


 虎王の根城であり資金源でもある、デザトリア王国最大のカジノ、ホワイトタイガースカジノ。それに併設された超豪華な砂漠のオアシス一のリゾートホテル、ホワイトタイガースホテル。宿屋に泊まれないためそこの一室を貸してもらっている俺は、虎王さんと食事をしながらグダグダと彼に愚痴っていた。


「簡単な話だ。お前に護衛をつけてやる。うちの連中をわんさか連れて塔を登るのは嫌って話だったが、塔の入り口までなら構わないだろう?」


「そうですね。パーティーを組むわけじゃないなら別に」


「それで? 攻略は順調か?」


「ええ。稼ぎも終わったんで、5階のボスを倒したらそのまま6階のボスもまとめて一気にやっつけて、そのまま7階まで駆け上がっちゃおうかと。でもそうすると黄金の夜明けに吹く風とカチ合っちゃうんですよね。ほら、現状一番進んでるのが彼女たちでしょう? 敵対するハメになったら、厄介だなあ」


「……お前の非常識極まりない暴れっぷりを見てると、つくづく自分が冒険者志望でなくてよかったと痛感するぜ。一度でもあの塔を登ることを夢見て挫折したことがある奴には、お前の存在そのものに耐えられんだろうからな」


「それってこの街の人間ほぼ全員じゃないですかヤダー!」


「それだけのとんでもない事を、お前はしてるのさ。この数十年間、数えきれんほどの人間が塔に挑んでは破れ、大勢が志半ばで挫折し、諦めたり、死んだりしていった。正直、この数十年は一体なんだったんだ? って滑稽になるぜ。お前を見てると。冒険者になりてえと思ったことなんざ一度もねえ俺でさえそうなんだ。当事者からすりゃ、嫉妬で気が狂っちまって当然だろう。俺の部下の中にも、お前への嫉妬で頭がおかしくなっちまった奴が何人もいる。抑え付けられなくなった奴を処分するのに苦労した」


「言っときますけど、俺は謝りませんからね? 俺は悪くないもん!」


「ああ、謝るな。お前は何も悪くねえ。ここまで来ちまったら、そのまま愚直に上だけ見上げてろ。足元は歯牙にもかけるな。露払いは俺がしてやる」


「あら意外な反応」


「誰よりも自由に、無慈悲に、残酷に。お前は好き勝手塔を登れ。それが俺の稼ぎに繋がる」


「分かりました。では、ありがたく。ほんと、あなたに出会えてよかったです、心から。あなたの後ろ盾がなければ、今頃俺はきっと嫉妬に狂った奴らに街を追放されていたでしょう。ありがとうございます、虎王さん」


「よせよせ。礼なんて言われ慣れてないんだ。尻尾がむず痒くなっちまうぜ」


 正直、気持ちは解らないでもない。俺もRTA走者として、デザーの塔は甘くない。の世界3位の記録保持者として、1位や2位の走者にはメチャクチャ嫉妬した。同じゲームを愛する仲間、切磋琢磨して競い合うライバルであるのは確かだが、それでもどれだけ頑張ってもふたりの記録を抜けないと、狂おしいほどの激情を感じたことだって一度や二度ではない。


『やめろ! 俺の記録を抜き去るんじゃねえ! やめろおおお!』


『畜生! なんだって俺は1位どころか2位の記録さえ越えられねえんだ! あいつらさえ! あいつらさえいなければ俺が世界1位だったのに!』


『なんで俺より遅い走者の方がチャンネル登録者数が多いんだよ! 声か!? 俺の声が気持ち悪いからダメなのか!? こうなったら機械音声だ! 機械音声さえ導入すれば、俺もチャンネル登録者3桁、いや4桁の有名実況者になれるかもしれん!』


 胸焼けしそうな嫉妬。狂おしいほどの羨望。世の理不尽を嘆く慟哭。それらは全部、RTA走者として俺が味わってきた紛れもないほんとの感情。たかがネットに転がってるフリーゲームのクリアタイムを1分1秒縮めるために、貴重な青春を捧げた大学生の本気の叫び。


 だからって街の連中のやったことを赦しはしないけどね。頭で考えてるだけならセーフだけで、実際に行動に移したらアウトよアウト。サクっとこのまま走りきって、未練がましい敗北者どもの未練を、まとめてバッサリ介錯してやりましょ。

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