17/? ときめきメモリー
「職業だけで人を差別する。なんの根拠もない勝手な思い込みだけを理由に、ありもしない正義を振りかざして、悪質な迫害と私刑を正当化する。実に悲しいね。これがこの国の民意って奴か? なあ、ご立派な国王軍のお偉いさんよ」
「どの口がそれを! 虎王! あなたの悪事の証拠は既に掴んでいます! なんの罪もない? 笑わせないで! あなたたちの横暴のせいで、この街の人々がどれだけの苦しみと泣き寝入りを余儀なくされてきたか!」
「なら、何故俺を逮捕しない?」
「……それは!」
「止められてるんだろ? 手を出すな、って。命令だもんな。軍人なら、上から与えられた命令には無条件で従わねえと。ああ、実に悲しいね。ご立派な正義。金で買える正義。その正義の真偽さえも、自分の頭じゃ判断できねえのによ」
「貴様あ!」
「上官殿!」
激昂したオリビエを、国王軍の兵士たちが止める。
「来な、小僧」
「あ、はい」
この状況で虎王と一緒に去るのは完全にアレだけど、でも行かないという選択肢はないのよ。そうなったら本当におしまいだもん。こうなったら一蓮托生よ。事ここに至って、虎王の後ろ盾なしでデザーの塔を攻略するのは無理ゲーになった。であれば、『しょうがない』。寄らば大樹の陰。こんな形で俺の人生最後のリアルRTAが打ち切られるぐらいなら、俺は虎王にすり寄って媚び売ってでもRTAにしがみついてやる!
「あの! 助けてくれてありがとうございました! 本当に! 虎王さんが来てくれなかったらどうなってたか! 想像したくもないです!」
「構わん。連中のやり口が、あまりにも不愉快だっただけだ」
虎王メダルに刻印されているものと同じ、虎の顔がペイントされた馬車に揺られながら、俺は虎王さんに深々と頭を下げる。今回ばかりはマジで危なかった。彼の助けがなかったら詰んでいたかもしれない。
「このお礼は必ず!」
「だったら、塔を登れ。あのバカどもを打ちのめすには、それが一番だろうよ」
「それはもう! 言われるまでもなく! あの塔の天辺に、誰よりも早く特大の白旗突き立ててやりますから楽しみにしててください!」
「ああ、ソイツはなんとも。笑える話じゃねえか、なあ小僧?」
彼は煙草に火をつける。
「こっから先、連中は泡食ってお前の攻略を邪魔しにかかるだろうぜ。よりにもよってデストレ野郎なんかにってな。嫌われ者の黒騎士が、前人未到の伝説の塔の天辺に一番乗り。そんなことになったら大笑いだ」
「あ、俺さっき転職して邪黒騎士(デストレーサーII)になったんですよ! 遂に上級職です! これでますます嫌われますね!」
「クク! クハハハハハ! ソイツはいい! ああ。実に滑稽で、実に愉快だ! お前に目をかけたのは、間違いじゃあなかった!」
闇市の半分を支配する、悪の白虎の犯罪王は、ガシっと俺の肩に腕を回し、ニイっと獰猛で、そして、とても楽しそうな笑みを浮かべる。
「おい小僧、頑張れよ。俺のため、お前のために」
「言われるまでもなく、頑張ります!」
「よし! 景気付けに昼飯でも奢ってやろう」
「いいんですか? ゴチになります!」