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15/? 開け上級職への道

「済みませーん。転職したいんですけどー」


「ああ、アンタか。ようやく黒騎士(デストレーサー)辞める気になったかい」


「いえ。逆ですよ逆。ボチボチ上級職に昇格したいなって」


 ほぼ出禁状態となったデザトリオンの街だが、唯一闇市以外で俺が使える施設が残っている。それが冒険者ギルドだ。人生に疲れた顔と眼鏡がトレードマークの転職お姉さんのイリノイは、俺の顔を見るなりなんとも言えない複雑そうな顔した。


 俺の計算では3階のボスを撃破した時点でレベルが30以上、デストレーサーのジョブレベルが5以上になり、上級職への昇格条件を満たしている筈だ。サメ狩りのせいで多少多めに経験値を得てはいるだろうが、足りないことはないだろう。


「確かに。転職の水晶はアンタの上級職への昇格を許可してるみたいだね。でも、本当にいいのか? ただでさえデストレ野郎、なんて言われて迫害されてんのに、上級職なんかになったらもっと酷い目に遭わされるかもだぜ?」


「よかったー! ご親切にご忠告ありがとうございます。でも、今は虎王さんの後ろ盾があるんで大丈夫ですよ、たぶん!」


「……そういう事は大声で言うもんじゃない。この街の冒険者や冒険者ギルドの職員の中にも、龍王派の人間は結構いるんだ。勿論、虎王派の人間もいるけどね」


「あ、そうですよね。すみません。俺、そういうの疎くて。そういやイリノイさんは確か龍王派ですよね? それなのに俺のこと嫌わずにいてくれてありがとうございます!」


「……上級職になる前に叩き出されたいか?」


「すみません、昇格してからでお願いします!」


 そんなわけで、俺はめでたく黒騎士(デストレーサー)から上級職である邪黒騎士(デストレーサーII)になる事ができた。めでたいね! なおデストレからデストレIIになってもデストレバグは健在なので、実は下級職のままの方が強い、みたいな本末転倒な出来事にはならずに済んでホっとした。


「あの、信じてもらえないかもしれませんけど、俺、本当に誰も犠牲になんかしてないんですよ? そもそも、誰がデストレ野郎の仲間になってくれるっていうんですか」


「ああ、そうだろうね。アタシもそう思うよ。でもそれは、アタシが冒険者ギルドの職員で色んなジョブの事情に精通しているからだ。何も知らない世間の人間からすりゃ、アンタが何を言ったところで聞く耳持たない奴が大半だろうさ。だからもし、アンタが本気で今のまま塔を登りきることを目指すってんなら、注意するんだね。魔物よりも、人間にだ。あまり大きな声じゃ言えないが」


「……」


「なんだいその顔は」


「いえ、感動しちゃって。デストレーサーになってから色んな人に嫌われましたけど、優しくしてくれたのは虎王さんだけでしたから、まさかイリノイさんからも優しくしてもらえるだなんて夢にも思わなくて。女の人に優しくされるとそれだけで好きになっちゃいそうだなんて、気持ち悪いですよね。ごめんなさい」


「おやめ。アタシは面倒事は御免だよ」


「俺、頑張ります! ありがとうございました!」


「だから、大きな声出すなっつーの」


 念願の上級職にもなれて本当によかった。もしイリノイさんがオリビエばりのバカ女だったらきっと、上級職への昇格すら邪魔されたかもしれない。彼女がまともな人で本当によかった、とルンルン気分で冒険者ギルドを出たのだが。


「おい!」


「はい?」


 いきなり冒険者らしき男たちに囲まれた。


「調子乗ってんじゃねえぞ! この人殺しが!」


 おっと、いきなりの顔面パンチ。からの腹パンという息もつかせぬ連続コンボ。だが2階ボスの蜂蜜熊さんの痛恨の攻撃に比べりゃ痛くも痒くもない。むしろ俺を殴った男の方が痛そうだ。そりゃそうだよ。レベル30を越えた今の俺の防御力はバグ技で2.5倍、ほぼレベル75相当だもん。レベル75って言ったらあのチャオ・チェンより上なんだよ? 硬いに決まってる。


「やめません? 冒険者同士の街中での私闘はご法度ですよね?」


「うるせえ! テメエなんかに冒険者を名乗る資格はねえ!」


「スカしてんじゃねえぞオラ!」


 あーあ、俺知ーらない。

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