↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/42

12/? マイクロビキニ部発足?

「……どうぞ。お通りください」


「そんな恐い顔しないでくださいよ。街で行方不明になった人間も、塔の中で行方不明になった冒険者もいないでしょ?」


「……虎王と手を組んだそうですね。あの犯罪王と」


「冤罪で石を投げられ、誰も助けてくれない俺に手を差し伸べてくれた唯一の恩人ですよ? 噂に踊らされるバカな偽善者しかいないこの街で、一番優しくて本当に親切なのはあの人なんじゃないですかね実は。ああ、別に彼に生贄の調達を頼んだりはしていません。塔への出入りは国王軍の皆さんが厳重に管理してますもんね?」


「……さっさと行きなさい!」


 人殺しのデストレ野郎、などといういわれのない偏見と濡れ衣が広まって以来、俺に向けられる視線は非常に険しいものとなった。加えて、犯罪王などと呼ばれる虎王の傘下に入った扱いされたのも相俟って、完全にクロ扱いされている。別段オリビエに睨まれようが嫌われようが構わないけどね。黒騎士(デストレーサー)だけを入場禁止にする法律は今のところない。彼女らが俺のRTAを邪魔をすることはできない。


「でもなんか懐かしいな、この感覚」


 前世、小中学生時代、俺は女子から露骨に汚物扱いされていた。ほら、顔がね。思い出すなあ。席替えの時に俺の隣になった女の子のあの顔。どうして人間ってのは自分の顔を棚に上げて、他人の顔を笑い者にできるんだろう。


「まま、切り換えてこ?」


 塔の入り口にある転送装置の前で2階ボスメダルを使い、2階ボス部屋の先の階段まで一気にワープする。デザーの塔3階は海エリアだ。なんで塔の中に日差しの降り注ぐ青空と潮風の吹く青い海が広がっているのかは考えないものとする!


 幸い今の俺は虎王の協力を取り付けられたため、本来ゲームであればこの時点じゃチートでも使わない限り手に入らない強力な武器防具を買い揃えることができた。さすがは闇市の犯罪王。いいもん取り扱ってるう!


 一番は武器、『ブラッディムーンブレイド』。略してBMB。略す必要もないか。攻撃した時敵から与えたダメージの70%を吸収する恐るべき魔剣だ。それから毒・眠り・麻痺といった厄介な状態異常を防いでくれるソロプレイの強い味方、『安心安全リング』。これの上位互換であり火傷や凍結、石化、魅了なども防いでくれる『絶対安心安全リング』も早めに入手したいところだが、7階まで行かないと手に入らないのよね。


 7階まで、RTAなら40分ぐらいで行けるのに。実際にはこの世界に転生してそろそろ10日ほど経つ。先は長いなあ。なお一番恐ろしい即死だけはデストレーサーのジョブ特性で無効となるため気にしなくてよい。


「ウフフフ! アハハハハ! ほーら、捕まえてごらんなさーい!」


「ギシャアアア!」


 装備に余裕ができたお陰で、俺は今ちょっとした実験をしている。というのも3階のFOEである徘徊者、空中を泳ぐ巨大なサメ、『エアロシャーク』からは水属性の攻撃と火傷の状態異常を無効化し、装備していると戦闘開始時に敵からの先制攻撃も発生しなくなる優秀な頭用防具、『サメちゃん帽子』が稀に手に入るのだが、ドロップ率が結構低い。低いのだが、実はある方法でドロップ率100%になる裏技がある。


 それが3階の宝箱から稀に出現する女性専用の体用防具、『セクシービキニ』を装備したキャラがスタメンにいると、サメちゃん帽子のドロップ率が100%になるというものだ。これはデストレ単騎のようなバグ技ではなく、製作者の遊び心によるちょっとした隠し要素であると攻略wikiに書いてあった。


 ただひとつ問題があって、このセクシービキニ、女性専用装備だから男である(ショウト)は装備できないんだよね。ゲームであれば。そう、ゲームであれば。


「……虚しい。嬉しいけど、何か大切なものを失った気分」


 この世界はフリーゲームを下敷きにした異世界であって、ゲームそのものではない。よって、男である俺が女物のセクシービキニを着ることだってできてしまう。できてしまったんだよなあ。で、結果がこれ。運よくセクシービキニを入手してしまった俺は、女性用のマイクロビキニを着てデザーの塔3階を走り回った。


 俺の手元には遊園地などで売っていそうな可愛らしい、サメのヌイグルミがついたお帽子が2個。エアロシャークを2匹倒した結果、2回とも手に入ったのである。俺は可愛い帽子を手に、ガックリと砂浜に膝をついて項垂れる。製作者の遊び心はこの世界でも有効だった。それを確かめた俺は、男として大切な何かを失った。


「……この悲しみは3階のボスにぶつけよう!。でもその前に、金策のお時間です」


 金策。それはRTAの腕の見せどころ。女性キャラを仲間にしてセクシービキニを装備させ、3階のFOEを狩りまくってサメちゃん帽子を集めて売り飛ばすというのはRTAのみならず通常プレイでもよく使われるテクニックだ。


 ただしランダムポップする宝箱からしか入手できないため運の要素が強く、何度も何度も2階と3階を行ったり来たりして出るまで粘り強く頑張る、ということができないRTAでは採用されないことが多い。逆に本走中に運よく入手できた場合は急遽サメ狩りを行う程度には、有効な金策手段でもある。


 なお余談だがこのセクシービキニ、防御力も魔法防御力も0な上、属性防御も状態異常耐性も何もない本当にただのゴミ防具なのだが、装備すると女性キャラクターのドット絵が水着姿に代わるという特典がある。ぶっ壊れの最強防具じゃなくて本当によかった。さもなくば俺は、これを着たまま塔を登らねばならなくなるところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。