エピローグ
ゴブレットを無力化してから一時間が経過した。
収容所の人間から定時連絡がないことを不審に思い、治安維持隊が大挙しておしかけてきた。
縛られた看守総勢二五名。治安維持隊によって一人ずつ縄を解かれた。
「囚人は一○○人近くいるんだぞ! 外の警備は何をしていた! 早く警報を鳴らせ!」
サイレンの音がけたたましく鳴り響く。
「まだそんな時間は経ってねぇ!」「そんな遠くには行けてないはずだ!」
囚人たちに苦渋を舐めさせられた看守たちは憤っていた。
見つけたらすぐさま殺してやろう、という殺気に満ち溢れている。
「ゴブレット所長。囚人たち全員を取り逃がしたとなれば責任問題ですぞ」
「……ええ、承知しています。草の根を分けてでも彼らを探します」
前代未聞の大脱走。所長のゴブレットのみならず、ここの看守全員の首がかかっている。
全員が血眼になっていた。————だが、焦りや怒りは人の注意力を鈍らせる。
「ゴブレット所長。あなたを含め看守全員を総動員して捜索に向かいますよ」
「そうですね、ただ収容所内の捜索は——」
「そんなの我々、治安維持隊で確認済みですよ! あなた方のような無能とは違って、こちらは優秀ですからな。とっくに建物内など捜索済みですよ!」
「…………失礼いたしました。すぐに捜索隊を整備します」
ここまで言われたしまったら看守側も引き下がれない。
どんなことをしても脱走した囚人を捕まえる、そのことだけに躍起になっていた。
それから数十分ほどで捜索隊は整備され、三桁規模の看守・治安維持隊は四方八方へと繰り出していった。収容所に静寂が訪れる。人一人いなくなり寂寥としている。
「いや、まぁ俺たちがいるんだけどな」
「やりましたね! ケータさん」
透明化を解除したオイラーが心底嬉しそうな顔で話しかけてくる。
それに続いて、透明化をして控えていた一○○名の囚人たちも同じように能力を解除した。
つい先程まで何もなかった空間には大量の囚人の姿が。
「よし、あいつらが戻ってくる可能性もある。急いで支度をしよう」
「了解だ。現金、衣食、移動の足がないか確認してくる」
「盗みは心苦しいですが、私も医務室から薬などを持ってきますね」
ゼインとエルシィが積極的に動き出す。それに他の囚人たちもぞろぞろと後に続いた。
「さて、オイラー。俺たちも支度をしようか」
「ケータさん、ひとつ質問いいですか?」
「ん、なんだ」
「透明化能力があるなら、別に隠れてなくてもよかったんじゃないっすか?」
「あー、それには四つ理由がある」
ゴブレットを無力化し、看守棟にいた看守たちが縛られているのを確認してから、俺たちはすぐにこの収容所を出るという選択を取らなかった。
俺のコピペ能力で囚人たちにクレットの透明化能力を貼り付け、そのまま全員でじっとしていることを選んだ。
その理由は————
・脱出前に最低限の準備がしたかった
・看守や治安維持隊の動きを確認したかった
・後から収容所を出ることで撹乱につながる
「なるほど。ちなみに最後の一つって……?」
「それは非常にシンプル。どうせなら、最後は正面から堂々と出たいだろ」
「なんですかそれ」
オイラーは呆れている。我ながらそう思う。
まぁ、それが左右田慶太という人間なのだから仕様がない。
「こんな俺だけど、これからもよろしく頼むぜ」
ってなわけで、俺たちの冒険はこれからだ ←なんか打ち切りっぽいけど(笑)




