ゴーレム戦記
この世に、魔道甲冑と呼ばれるものがある。
現代では製作不可能な、古代の技術による遺物だ。
大きく分けると、騎士機が3種類、従機が2種類になる。
古代魔法王国以前にあったといわれる神代の時代に作られた”原型機”
古代魔法王国時代の初期に作られた”複製機”
古代魔法王国末期に作られた”復元機”
8~12メートルの搭乗型ゴーレム。
開放型操縦席の作業機。
4~6メートルの搭乗型ゴーレム。
大型の"従士機"、小型の"従兵機"
この5種類が確認されている。
オリジナルは、現在までに、12機が確認され現存するのは8機。うち2機は、所有者がいない。
所有者は"主人"と、ゴーレムに認められる必要があるためゴーレムが誰も認めないと所有も不可能だから。
6機のオリジナルは、それぞれ東の大国「オストライヒス」、西の大国「エスパラ」、中央の大国「ガラリア」、北の小国であるが交易により富が集まる「ブルタニア」、南東のかつての大国「コンスタン」、
かつての統一帝国であった「アウグスト」より譲渡された「教皇領」が保有する。
オリジナルは駆動繊維と呼ばれる筋肉で駆動し、遺跡から発掘されるものが唯一の入手手段である。
・教皇領の保有する"教皇機"、その他5か国が保有する"皇帝機"。
※操縦者は機体が選ぶため現時点での稼働機数は不明。
レプリカは、劣化コピー品である筋肉繊維と駆動液を組み合わせることで再現した劣化品。
・"将軍機"と呼ばれる。オリジナルほどではないが使用者を機体が選ぶため、非稼働機も多い。
コピーは、筋肉繊維すら製造できなくなった魔法王国が駆動液を機体に収納するため駆動袋を開発し筋肉繊維の代用としたバッタ物である。
・"指揮官機"と呼ばれ、使用者に高度な技量を要求する高級品と"騎士機"と呼ばれる性能のやや劣った普及品がある
※必要技量があれば操縦できるため、比較的稼働機が多い
ワーカーは、魔道甲冑の整備や工事用に開発されたとみられ数多く発掘されている。簡易型駆動袋と、廉価な駆動液で稼働するため現代技術での修理可能。
現在の技術ではかろうじて駆動液らしきものが製造できる程度であるため補修部品を含めすべてが遺跡からの発掘品を使用している。
ここは古代の鉱山跡か、人工的に掘りぬいたと思しき洞窟からワーカーが大量に発掘された。
かつてない台数に、大量に保管されたメンティナンスパーツ…
その噂を聞き、即座に王国軍が派遣され現在さらに発掘が進められている。
ワーカーといえども武器を持たせれば"従士機"や"従兵機"として戦力にできるからだ。
そしてそんな発掘現場では今日もまた…
「お~い!今度はそっちの甲蟲の羽を取ってくれる?」
搭乗席が剥き出しのワーカーでの生存率を高めようと簡易装甲を開発しようといろいろな素材を試す技術者の姿が。
普通に装甲をつければ、外が見えずかえって危ない。甲蟲の外骨格を加工すれば半透明であるため、周囲を見渡せるはずと…外骨格製のドーム型装甲の開発に勤しんでいる。
試作1号:自重に耐えられず崩壊
試作2号:強度を増した結果周囲が見えず自損事故を起こし封印
試作3号:フレーム付きにした結果良好な成績を出すも耐久性に劣る
「う~ん?問題は実用性と耐久性のバランスだね…」
強度だけなら竜革を使えばいいがあれは不透明だから周りが見えないし。
竜種の筋肉を取り出し駆動液で保護した新型の開発が行われているが問題点も多くいまだ発掘品が重要であることは間違いない。
武器は青銅の鋳造品か発掘品、遺跡の骨組みを削り出したものに限られている。鋳鉄だと強度が足りず鍛鉄はサイズ的に不可能なため古代技術で鍛造されている遺跡の骨組みを掘り出しひたすら削り出し加工しなければいけないので非常に手間がかかり一般に流通していない。
オリジナルの武器はいまだ未発掘なのか、そもそも作られていなかったのか、発掘済みだが用途不明で保管されているのかも不明な状態で、通常は鋳造した青銅剣がメインウエポンと扱われている。
オストライヒスとオストライヒス属領であるオスト語諸国との間にきな臭い空気が流れ、その東にある蛮族国家ルートが勢力拡大を狙いすきを窺っている状況なのでオスト語諸国と国境を接するここネードグラード王国も自衛の準備を急がせている。
発掘に直接かかわらない要員の徴兵が始まりワーカーの改造をしていたネロとパトラも徴兵されてしまった。
「眠いよ、パトラ・・・」
「ネロったらまた機能もワーカーをいじってたの?」
徴兵された日から毎日続くこの会話に、上層部も『こいつらワーカーの整備や修理に使ったほうがいいんじゃねぇの?』という結論に達し、無事ワーカー部隊付に抜擢された二人は今日も整備という言い訳を使ってワーカーの装甲開発に勤しんでいる。
ワーカーのパイロットにしてもうまくいけば安全性が高まるとほぼ自由にさせている。すでに鋳造された青銅製の枠に竜革を張った盾が開発されている。剣に使えないような短い発掘された建材を加工し槍も作り上げた二人組に期待が高まっている。
発掘現場という特性から、発掘御調整が終わったワーカーがパイロット未定のままテントに収められているのでワーカーの補充を受けたい各地の騎士団が毎日のように受領のために来訪する駐機場で平気な顔で工作している二人組はこの部隊一の大物と評価を受け・・・蟲甲の装甲に期待の目を向ける騎士や従士たちは自分の利益になると二人を温かい目で放置している。
自国防衛を宣言したガラリアがネードグラード領に侵攻し西部を保証占領したことから、平和な雰囲気を満喫していた"鉱山跡"も緊迫した空気に入れ替わり、パトラとネロも未整備の発掘品の整備を優先しろと命じられ日々整備に追われだしたある日・・・
ついに東の森に敵影が現れた…騎士機が1機、従士機が5機、従兵機が12機。1個中隊が占領のため鉱山跡を目指す。
ネードグラード王国側は従士機が8機、従兵機が6機稼働状態にあるがもともと2個小隊しか派遣されておらず従士が2名、従兵が6名しか戦闘要員がいない。
急遽従士機に従兵を乗せ従士機8機が防衛のため陣を張った。
整備のため表に置かれていた従士機・従兵機や補修部品を鉱山跡の洞窟に運び込む残された地上要員たち
「ネロ、従兵機を動かせば楽になるんじゃないの?」
「おぉ~パトラって天才!スクワイアは僕が一番上手に動かせるんだ!」
スクワイアならぬ従兵機を作動させ二人が次々整備中の従士機・従兵機を洞窟に運び込んでいると地上要員を指揮していた駐留軍司令官が気が付き
「おい!徴兵、従兵機を動かせるんなら武器を取って前線に応援に行け!!」
前線の魔道甲冑部隊が敗北するとこの陣地は防御不可能になり全滅する。ならば武器を持てる者は全員前線に送ると自然に判断される。
雨よけの名目で作られた竜革の天蓋を慌てて装着し、盾と槍を装備した二人が前線に向かっていった。
「あと4人動かせるやつがいないのか?」
駐留軍指令は鉱山労働者から徴兵した地上要員たちに声をかけつつ、最初からなぜ徴兵に従兵機を操縦できるやつを探さなかったのかと自省していた。
「ネロ!」
とっさにパトラが、盾で騎士機の剣を受け止めたが所詮は従兵機。騎士機のパワーに押され接地面が大地に溝を刻みつけつつ後退していく。
パトラ機の陰から、ネロが槍を突き出し見事騎士機の操縦槽を貫いた。従士機が即座に撤退を命じ騎士機の手を取るが、盾を投げ捨てたパトラ機が槍を真っ向上段から従士機の操縦槽に振り下ろし副官も戦死。
統制を失ったオスト語諸国軍は持ち直したネードグラード軍の反撃を受け次々打ち取られていく…
オスト語諸国軍:18機参加
中隊長を含め戦死6名、負傷して捕虜になったのが3名、従士機・従兵機を失い逃げ去ったもの4名
18名中9名が戦死や捕虜4名が乗騎を失うという壊滅状態。
ネードグラード軍:8機+2機参加
正規軍から4名戦死、負傷者3名という事実上の全滅状態。
18機で侵攻し13機を失う壊滅状態になったため鉱山跡は戦争中も侵攻を受けることなく無事守られた。
ネロとパトラは従士に昇格しそのまま軍に…とはならず、戦時中もひたすらやりたい工作に明け暮れて終わる。開戦後まもなくワーカー用の装甲としてこのとき使われた天蓋が採用されネードグラード軍のワーカーの負傷率が大幅に改善、末期には半透明な完全装甲が完成し全軍に装備された。
ガラリアは鉱山跡戦争の勝利を確認後、保証占領を解除しないまま撤退する。
オスト語諸国はオストライヒスに敗北し莫大な賠償を支払う羽目になりネードグラードへの賠償を踏み倒そうとたくらむも、オストライヒスが代わりに賠償を支払いオスト語諸国への賠償に上乗せすることで決着した。
ワーカーに増加装甲を装着し主力機として使用する現在の軍事常識はネードグラードの鉱山跡が嚆矢。
聖刻・ターンAガンダムなどオーバーテクノロジーの発掘によるロボット物を目指しました。