チャンポン
学校からバスに乗って最寄りの駅まで行き、そこから15分程度急行に乗り駅から5分程度行ったところに目的のショッピングモールはある。一緒にいる彼女は俺の妹であることを疑うレベルで彼女はかわいらしく、とても家族といるとは思えないほど俺は緊張していた。バスや電車の中でも妹は携帯を見るばかりで俺たちの間に会話はなく俺は電車やバスの広告を懐かしいと思いながら見ていた。そのまま特に会話はなく目的の駅に着いた。
駅前にあるだけあって人でにぎわっていた。平日にもかかわらず妹のようにまだ春休みで、残りの春休みを友達と遊んですごそうとする学生や晩御飯の食材を買いに来る主婦たちであふれていた。ショッピングモールは七階建てで一階から三階は服や雑貨を売っている店が多く、四階にはレストランなどのお食事処とゲームセンターがあり、五階に映画館があり五階の半分とそれより上はすべて駐車場になっている。
ショッピングモールについた俺たちは、昼食をとっていなかったので四階にあるフードコートで昼食をとることにした。遅めの昼食というのもあって思っていたより空いていた。とりあえず俺らは席を取り、妹は昼食を買い行くため席を立った。学校を出てからずっと妹と二人で緊張しっぱなしであったので、こうして一人になってみるとなぜかどっと疲労感が襲ってくる。ふと今日学校での出来事を思い返すと、いままで自分が大切にしていたものをすべてなくしたことを思い知らされる。そんなことを考えていると、妹がお盆にうどんとてんぷらをのせて帰ってきた。
「おにいちゃん、どうしたの?そんな思いつめたような顔して。入学式しかなかったんだから、そんな落ち込むようなことないでしょ。もしかして、彼女にでもふられた?まぁ、そんなわけないか。あんなに仲いいんだし。いつまでもそうしてないで早く買ってきなよ。」
ーいま、とんでもないことが聞こえた気がする。
これ以上頭の中がごちゃごちゃになると本気で脳が破裂しそうだったので、俺は考えることをやめてとりあえず昼食を買いに行くことにした。しかし、店先に並んでいる間も先ほどの妹の言葉が頭から離れなかった。今日一番の衝撃だ。それと同時にそれが芽衣であればと違うとわかっていてもそう思うほかになかった。すると後ろのおじさんに背中をコンコンとつつかれ、いま自分が列の先頭で購入する順番が回ってきたことに気付かされた。
ちゃんぽんを買い席に戻ると、妹はすでに食べ終わり携帯をいじっていた。そんな妹を横目に俺は食べ始めた。食べながらふと、妹が使っている携帯に貼ってあったプリクラをみるとユーミとリオと書いてあった。いま目の前にいる美少女らしき女の子のところにユーミと書いてあったのでおそらく、ゆうみという名前なのだろう。いくら会ってから一日しかたっていないとはいえ、名前すら知らないレベルでしかコミュニケーションをとっていなかったことにわずかながらに申し訳なくなった。またそのプリクラを見て誰かがプリクラ機のことを、プチ整形体験機と言っていたのを思い出しおもわず笑ってしまった。
ゆうみの目的は別館にある本屋らしいがついでなので雑貨屋さんも見ていくことにした。彼女はヘアアクセサリーに興味津々でいろいろなものを試しにつけてみている。
「ねえねえ、これ似合ってるかな?」
目の前に鏡があるのだからそれを見ればいいのに、なぜ聞いてくるのだろうと不思議になった。
「おう、めっちゃくちゃかわいいぞ。」
もともとの素材がいいのだからなにをつけても似合うにきまっている。こんなかわいい子が自分の妹だなんて、その事実だけがこの現状唯一の救いであるといっても過言ではない。その後、こんなやり取りを数回した後に彼女はいくつかのヘアアクセサリーを買った。
本屋につくと俺らは参考書のコーナーへ向かった。話を聞いているとどうも彼女は、今年から中学三年生になるようで高校受験に向けて勉強するための参考書を選ぶのを手伝ってほしいということだった。彼女はどうも文系科目の成績はいいが理系科目の成績が悪く、そのため理科や数学の参考書を買いにきたらしい。一年前(昨日までは三年前)の自分の受験勉強を思い出しながら、彼女と話し合いをし理科と数学の参考書を選び終えたところでついでに好きな本をそれぞれ見ることにした。
参考書のコーナーからライトノベルのコーナーまで向かってる途中に各コーナーの一押しの本をそれぞれ見ていると、ある一冊の本の前で足が止まった。タイトルは「この世界が仮想世界であるということの証明」。仮想世界に興味があった俺はその本を手に取り、パラパラと内容を見た。面白そうだったので買おうか悩んだが値段を見て買うのは断念した。本をもとの位置に置くとふと隣の本が目に入った。それは仮想世界ではなくパラレルワールドに関する内容の本だった。
ーパラレルワールドか…
その時、なにかが俺の中で引っかかった。
先日、トータルユニーク数が100を突破しました。いつも読んでくださる読者の皆様にはほんとに感謝の気持ちでいっぱいです。これからもよろしくお願いします。