サンカク
その日の委員会は委員長の選出と軽い自己紹介で終わった。
遅れて部活に行った後、いつの通り茉奈と帰った。
「まさか委員会で朝陽と一緒になるなんてねぇ。やっぱ、楽そうだから?」
「まぁ、そんなところだな。」
茉奈とこうして歩いて帰り始めて一週間になるが、俺の部活が終わるのがいつも6時をまわるので今日まで、帰りに同じ学校の生徒とこの道でばったり会ったことは無い。しかし、今日は違った。
歩いていると急に角からすごいスピードで何かが俺にぶつかった。
「ひゃぁ」
瞬間的にそれが人であることは分かった。また声からして女の子だろう。
彼女は軽く吹き飛ばされその場にしりもちをついた。
ーーあぁ、なんか身に覚えのあるシチュエーションだ。いやな、嫌な予感がする。
誰しも経験したことがあるだろう。いい予感は大体外れるのに悪い予感だけなぜか当たるというやつだ。例えば今回みたいに…
自分が誰かを確認しようと目線をそちらに持っていくより先に
「大丈夫ですか。って芽衣じゃん!」
やはりやな予感は的中した。好きな女の子に他の女子と一緒にいるとこを見られるなんて最悪だ。こんなこと死んでも言えないが…
「うん、大丈夫だよ。あ、っごめんなさい。またぶつかってしまって。」
「いや、問題ないよ。芽衣こそ怪我はない?」
「え、あっはい!」
そう言って彼女は僕の差し出した手につかまり起き上がった。
彼女は途中まで帰る道が一緒なので途中まで一緒に帰ることになった。
まず、口を開いたのは芽衣だった。
「いきなりだけど茉奈ちゃんと、えーとごめんね、名前わかんないけど君は付き合ってるの?」
「朝陽でいいよ。う、うん。まぁそんなところだな。」
「へ~、きみがねぇー。」
そう言って彼女はじっとこっちを見てくる。今なら空気をたくさん入れた破裂寸前の風船の気持ちがよくわかりそうなほど、ドキドキが止まらなかった。
「茉奈ちゃんからお話は伺ってますぅ。優しくて気が利いて男らしいだの毎日言ってるんですよ。」
そんな話をしていると後ろから携帯電話の着信音が聞こえた。それは茉奈の携帯からだった。
「ごめん、ちょっと席外す。」
そう言うので俺たちは目の前にあった公園に入り、ベンチに座った。
「朝陽君。正直、茉奈ちゃんと付き合うのしんどくないの?」
あまりに唐突の質問で戸惑っていると
「いやあの子我が強いし日頃から友達とかに対してもあたり強いしどうなのかなって。」
「もうだいぶ慣れたよ。それにあいつ、あう言う風に見えても意外にいいやつだしな。」
「そっかぁ、ほんとにすきなんだね。安心した。」
ちょうどその時に電話を終えた茉奈が俺たちのところに来た。そのまま、俺たちは帰路についた。
芽衣は途中まで一緒だったがそれから道が違ったので別れた。二人になると急に茉奈がわき腹のあたりをつねってきた。
「痛い!何するんだよ。」
「ふん、何ってこっちが言いたいよ。」
「なんでそんなに拗ねてんだよ。」
「あんなに芽衣にデレデレしちゃってさ、手まで出しちゃって。」
そう言い忘れていたが彼女(茉奈)は超がつくほどすぐにやきもちを焼く。少しくらいの焼きもちなら、かわいいものだが彼女のそれは少し度を越えているのではないかと思う。帰りに少し女の人を見ただけで、すぐ怒り出す。めんどくさいの極みだがすぐになれるだろうと、諦めている。
「ごめんね。謝るから機嫌直して。」
そう言って彼女の頭を撫でてやる。彼女はどんなに機嫌が悪くても頭を撫でてやると機嫌を直す。
そんなやり取りをしながら歩いているとすぐに駅までついたので、それぞれの帰路についた。
家に帰るとちょうど、優実とお母さんが晩御飯を食べていた。
「ただいま。」
「おかえり、あんたが遅いから先食べてるわよ。」
「うん、荷物置いてくる。」
とは言っても俺が部屋に行って、リビングに戻ってくる頃には二人とも食べ終わっていて俺は一人、テレビを見ながらご飯を食べていた。
テレビを見ると恋愛ドラマがやっていた。主人公が好きな女の子がいるのにもかかわらず、ほかの女の子と付き合うといったドラマだ。
このドラマは前の世界でも放送されていて大ブレイク。『三角関係』が流行語大賞にノミネートされるほどだった。俺は見たことないが。
ぼんやりとみていただけだが、なんとなく今の自分と重なる気がした。
飯を食べ終えて風呂も入って、いつも通りゲームでもするかと思って部屋に入ると優実はいたがゲームの準備はしてなっかた。よく優実を見ると、寝息を立ててすやすやと寝ていた。床に寝たままもかわいそうだったので、自分のベットの上にあげ自分は本を読んでいた。しかし、後ろから聞こえてくる気持ちよさそうな寝息にドキドキして本に集中できなかった。
かわいい妹が後ろで無防備に寝ているのだ。少しは意識してしまうだろう。
ー落ち着け俺、落ち着け俺。
呪文のようにひたすら唱え続けた。しかし、それでは埒が明かないのでベランダに椅子を出し、落ち着かせようと静かに星を眺めた。
気づけば寝ていた。