ビショウジョ
ーパラレルワールドまたの名を平行世界
それはあってほしいと願うものがあり、なければと願うものはないそんな世界。
しかしそこはあるべきものがなく、ないはずのものがあるそんな世界。
これはそんな世界に行った一人の少年の話…
「はい。あ~~~~~ん。」
学校の屋上で青い空の下に二人っきり。周りには昼食を食べに来ているカップルがいくつか。この学校では屋上で男女で食べるという行為は、その二人が愛し合っていると公言するにも等しい。そんな中箸でつかんだお弁当の卵焼きをこちらに差し出してくる美少女は、誰が何と言おう俺の妹だ。俺らは、昔から周囲にブラコン・シスコンなどと冷やかされるレベルに仲が良かった。それは高校生になった今でも変わらない。俺はその卵焼きを口を大きく開けて迎え入れた。するとすぐに口の中いっぱいに卵焼きの甘さが広がった。
「おいしい?はじめて作ったんだけど…」
顔を赤くし少し不安そうに話す彼女に、俺はもう心を奪われていた。
「めちゃくちゃおいしいよぉ~!また作ってね。」
高校生にもなって妹にここまでべったり甘えている兄など、世界中探しても俺だけであろう。
「うん。もちろん、おにいちゃんに喜んでもらえるならなんでもするよ!」
キーンコーンカーンコーン
学校中に昼休みの終了と同時に、四限目の授業の開始を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「授業に遅れちゃう。早く行こ、おにいちゃん。」
彼女はお弁当をかたずけ少しでも早く授業に行こうとするが、それと裏腹に俺は
「えぇぇ、いやだぁ。もうちょっと一緒にいたい。」
まるでおもちゃ売り場で親におもちゃをねだる子供のように、駄々をこねる俺を見て彼女は耳元でそっと
「今日もちゃんとがんばったらご褒美を上げるから、がんばろ♡」
とささやき、頬にそっと唇をあてた。
「はい、私は神に誓って真面目に今日の残りの学校生活を送ります!」
相変わらず自分が単純なやつだと思うが、妹がこんなにかわいいのだ。それも仕方ないだろう。教室に戻ると授業は始まっていたが、クラスのやつらは俺を見るな否や”今日も夫婦で仲良くお昼ごはんですか”などと言い冷やかしてくるが、もう慣れたものだ。それどころか最近ではそれすらも心地よくなってきた。
-なんて妄想を一人で描いて…
「あぁぁぁぁ、妹が欲しい、妹が欲しい、妹が欲しい、妹が欲しい、妹が欲しい、あぁぁぁぁ~」
ここに妹の欲しさに頭がおかしくなった俺が一人。
俺の名前は立嶋朝陽18歳。どこにでもいるような、次の始業式から高校三年生になる平凡な高校生。
「こんな人通りが多いところで頭のねじを飛ばすなよ。俺まで変なやつだと思われるだろ。」
こいつは光泉隆二、高校入学してからの親友だ。
今日は新入生たちの入学式があるため、関係のない2.3年生は学校は休みだ。
少し寒さを感じるのは気温のせいではなく、平日の昼間に商店街のど真ん中で妹欲しさに震える俺に向けられる冷ややかな視線のせいだろう。
「それに、お前には可愛い彼女がいるんだから妹なんていなくてもいいじゃないか。おれも彼女ほしいなぁ~」
そう、何を隠そう俺には可愛い彼女がいる。それも、いつも明るく笑顔が絶えない俺の自慢だ。付き合い始めてまだ一週間程度しかたっておらず、コンビニの肉まんより俺たちの仲はほかほかだ。しかしそれはそれ、これはこれだ。
「ん?おまえ、いま妹”なんて”って言ったのか?〇すぞ、彼女がいるからって妹はいいとか、なんだ頭おかしいのか?お前の脳みそは、カニみそか?妹がいるやつは一生、独身・童貞で死ね!それが世のため、いや俺のためだ。」
はたから見れば、頭がおかしいのは完全に俺のほうだ。隆二はこれにも慣れたようで右から左へときれいに受け流していく。
それは置いとくとしてなぜ俺らが休日に二人で商店街に来ているのかといえば、部活の後輩から抹茶オーレがおいしいと評判の喫茶店を教えてもらったので、そこに行くためだ。
「地図的にはここらへんじゃないのか?」
携帯の地図を見ていた目線を上げるとそこが目的の喫茶店だということはすぐに分かった。
一昔前のようなたたずまいに抹茶オーレと書かれた看板を見てここが目的の場所だと確信する。
カラァンカラァン
扉を開けると、来店を示す鈴の音が店内に響いた。実際にレトロな雰囲気の喫茶店というものに初めて来る俺は、憧れていたのもあって心を躍らせていた。
カウンター席に座りそれぞれ抹茶オーレと鉄板焼きドライカレーを頼んだ。
店主が料理を始めるとにおいが店内に充満し、そのにおいだけでおいしいのは確信できた。
料理を待っている間、店主と話していたせいか料理が出てくるのはあっという間だった。
想像通り、いやそれ以上にここの店の料理は美味しかった。
「ここの料理うまいな、今度彼女でも連れてきてやれよ。」
「そーだな。是非ともここの料理はあいつに食べて欲しいな。」
食べ終えてからこんな話をグダグダとしていると外は暗くなり空は大きな悲鳴を上げ泣き始めた。
「あれ、今日は天気予報でも雨は降らないって言ってたのになぁ。」
「まぁ、天気予報だって絶対じゃないしこんなこともあるさ。」
雨がこれ以上強くなるのはいやだったので、すぐ帰ることにした。
お会計を済ましている間にも雨はどんどん強くなっていき、店を出る時には土砂降りになっていた。
雷もだいぶ近いところに落ちているらしく、とても大きな音が喫茶店近辺に鳴り響いていた。
おれは運よく折り畳みの傘を持っていたのでよかったが、隆二は持ってないらしく先に走って最寄りの駅で待っているということにした。俺はゆっくりと駅に向かった。
この時俺は、ここからだれもが耳を疑うような体験をすると想像もしていなかった。
音楽を聴きながら普通に歩いていると鼓膜が破れるような音がし、視界が消えた。
■■■
重い瞼をゆっくりと開く。見慣れた白い天井に照明、そして体にフィットし寝心地がいいソファ。どうやらここは俺の家らしい。さっきまで外にいて土砂降りの雨に打たれていたのにどういうことだろうか。
そっと体を起こして周りを見回す。そこはどう見ても見慣れた俺の家だった。ただ一点を除いては
「あっ!目が覚めたんだねおにいちゃん!」
だ、だれだおまえ!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。初めて、小説を書いているのでつたない文章だと思いますが皆さんと一緒に成長していきたいと思いますので、いいとこ悪いとこ是非コメントよろしくお願いします。
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