嫉妬する自称親友
書いていたら親友との会話が盛り上がってしまったので急遽話を変えました。
「一人にさせない先輩女子」は次話に投稿します。
よろしくお願いします。
優菜視点
「それ多分、秋野彩先輩だよ」
先輩に会った次の日の通学路、私は詠歌に付きまとわれ、しかたなく一緒に登校しながら、たわいもない会話に付き合っていた。
「金髪で綺麗な三年の先輩、うん、やっぱり秋野彩先輩で間違いないと思う」
どうせ話すならと思って、昨日の昼間にあった先輩の話をしてみたのだが、詠歌が思っていたよりも興味を持ったようで、正直少し戸惑っていた。
「へ、へえー、あの先輩そんななまえだったんだ。ていうか、なんで詠歌は先輩の名前知ってるの?ファンとか?」
「違う。有名なのよ、あの人。
金髪のハーフであの美貌、それに人当たりもいいと来たもんだから、学校では大人気の先輩だよ」
「ふーん」
私は昨日の昼間にあった先輩の顔を思い出してみる。
めちゃくちゃ綺麗で美しい顔だった。
髪は染めとるとしても、目も鼻も顔立ちも、あまりに日本人離れしていると思っていたら、やっぱりハーフだったらしい。
「私は、あの人苦手だな」
なんの気なしに私がそう言うと、詠歌は苦笑しながら「だろうね」と言った。
「ああいうグイグイ来るタイプの人って、優奈とは決定的に合わなそうだよ」
さすが詠歌、よくわかっている。
べつに秋野先輩が悪い訳では無い。
だけど、誰にでも分け隔てなく話しかけ、相手のパーソナルスペースに簡単に踏み込んでしまう。そういう人間と私は、残念なことに、とても相性が悪いのだ。
「悪いけど、もうあの人には関わりたくない」
私がそう言うと、詠歌はあははと笑った。
「あの人も、でしょ。私以外の人間と優菜が関わりたいと思ったとこ見たことないもん」
「別に貴女とも関わりたくないけどね」
「なにそれひどーい!」
「だって本当の事だし」
「尚更ひどい!」
詠歌は少しむくれっつらをするが、本気で怒っている様子はない。
私達はこうしてたわいも無いことを話しながら学校に向かう。一人でいることは好きだが、詠歌となら少しの間話すことは苦痛にならなかった。
お互いにお互いのスペースを侵さない、そんな二人の距離は少しだけ居心地が良かった。
「山里さん!」
そんないい気分の中、急に後ろから声をかけられる。
だが振り向きたくない。だって明らかに聞き覚えがある声だったし......しかもごく最近......具体的に言うと昨日辺り......
「おはようございます......秋野先輩......」
そこには、肩で息をしながら走ってくる秋野先輩がいた。
噂をすれば影がさすとは言うが、さすがに
これは酷くないかな......
「おはよう山里さん、名前知っててくれたんだね」
私の下まで走ってくると、先輩は嬉しそうにはにかみながら、挨拶を返してくれる。
その光景を見て私は少しの間、言葉を失っていた。
ただでさえ綺麗な秋野先輩なのに、走って来たせいか頬は上気し、しっとり汗ばんだ肌は、なんとも言えない美しさを表している。
そんな先輩が、息を切らして少し屈んでいる状態から、私を見上げている。
その姿はとても可愛いらしいことになっていて......
「いっいえ、私はそこの友達に教えて貰っただけなので......」
私は直視できず、言葉につまりながら目を逸らしてしまった。
昨日、あんなにイライラしていたのが嘘の様だ。
私の言葉を聞いて、秋野先輩が詠歌の方を向き、私もつられて詠歌の方を見る。
「うわっ!すっごい美人!」
詠歌は秋野先輩を見るなりそう言った。百合の詠歌なら、照れたり見惚れたりすると思っていたのだが、照れる様子もなく、秋野先輩に話しかけている。
「初めまして、秋野先輩。
優菜の親友の西原詠歌です。以後お見知り置きを。」
「よろしくね、西原さん」
二人はにこやかに挨拶をするとお互いに笑い合う。
だけど何故だろう、詠歌の方は何故か、まったく笑っている気がしない......
秋野先輩もその雰囲気を察したのか、若干笑顔を引き攣らせている。
「えっと、二人はいつも一緒に登校してるの?」
秋野先輩は仕切り直すように私に話しかけてくる。どうやら、詠歌の威嚇は無視すると決めたみたいだ。
「毎日じゃないですけど、たまに一緒に登校したりはしますよ、家近いので」
「そっか〜良かった。
昨日の山里さん見てたら、一人も友達がいないのかって心配してたんだよ」
「優菜は私の親友ですから、他に友達なんていらないんです!」
どうやら秋野先輩は、私のことを心配して
、話しかけてくれているようだが、詠歌に妨害されている。
今日の詠歌はなんか変だな。
「そ、そっか」
秋野先輩も詠歌の妨害に戸惑っているようで、どう話しかけるか考えているようだ。
だがそこで
「秋野さーん、今日日直だから急いだ方がいいよー」
と、前の方なら声がかかった。
「えっでも......」
秋野先輩は何か言いたげに私の方を見るが、私が
「行った方がいいですよ」
と言うと、頷き
「また後でね」
と言って前の方に走って行った。
「後でねって、会う約束なんてしてないんだけど......」
私は戸惑う様に呟いていると、隣で詠歌がむくれているのに気づいた。
「何で秋野先輩につっかかったりしたの?
詠歌らしくもない」
「別に〜、優菜が迷惑してるかなーって思っただけ」
「まあ、迷惑はしてたけど......」
詠歌は何故か私と目も合わせず、すたすたと前へ歩いていく。でも私が追いかけず、ゆっくり歩いていると、こちらをチラチラ見始め、そしてまたすたすたと、こちらに歩いて戻ってきた。
「何で追いかけてこないの?!」
そう言うと詠歌は涙目でこちらを睨んできて、文句を言ってくる。
「別に私は、詠歌と一緒に登校したい訳じゃないから、追いかける理由なんてないでしょ?」
そう言うと、私は詠歌の顔を覗き込む。
「それで?詠歌は私と一緒に登校したいの?したくないの?」
詠歌はそう言われて、少しムスッとしていたが、私と見つめ合っているとクスリと笑い、
「一緒にいく!」
と言った。
「優菜ってさ、一人で居たいって言うわりに、面倒見いいよね」
詠歌は私と歩きながらそんなことを言ってきた。
「何でそう思うの?」
私がそう聞き返すと、詠歌は
「苦手だって言った先輩の話に付き合ったり、文句を言いながらでも、私と一緒に学校に行ってくれたり、本当に一人が良いなら、断ってもいい事でしょ?」
と言い、私の顔を見て笑った。
「でもこれって面倒見が良いと言うか、お人好しだね」
そう言う詠歌の顔を見て私は少し考える。
確かに詠歌の言うとうり、本当に一人で居たいならもっと色々やり方はある。なら何故こんな事をするのか。
私の結論は意外と簡単にでた。
「いつまでも、小学生みたいな子供のままじゃいられないからね」
そうだ、どんなに足掻いたって一人では生きていけない、私は去年、それを思い知った。
それを聞いた詠歌は少しだけ驚いた表情をしたが、笑って私をからかいはじめる。
「子供じゃないって言うならさ、授業中に本読むのやめたら?」
「それはやだ!授業中に読まなきゃいつ読むって言うの?!」
「いや、休み時間に読みなよ!」
「休み時間も読む!」
「なんによそれ」
私と詠歌はお互いに笑い合う。そうだ、一人でいることはとても好きだが、きっとそれだけでは生きていけない。
それなら詠歌のような友達が一人ぐらいいてもいいよね。
私はそこまで考えた所でふと、疑問がおこる。
「ねえ詠歌、何でさっきは機嫌が悪かったの?」
そう言われると、詠歌の顔はみるみる赤くなって行き、口をぱくぱくさせる。
何この反応、そんなに理由が恥ずかしいことなのだろうか。
「それは優菜が......先輩に向かって、あまりに可愛い顔見せるから......」
詠歌が小声でごにょごにょと何か言っているけど、声が小さくて何も聞き取れない。
「何言ってるか聞こえない、もっと大きな声で」
それを聞くと詠歌はますます赤くなって行き、まるでトマトの様だ。
何でこんなに恥ずかしがるのだろう?
私がさらに答えを求めると、「なんでもないから!」と言ってそっぽを向いてしまった。
それでも詠歌は、さっきのように先に歩こうとはせず、私の歩幅に合わせて歩いて行く。
「変な詠歌」
そう言って私達はまた、学校にも向かって歩きだした。
詠歌視点
私は優菜の事が大好きだ。
それが恋と呼ばれる物なのか、それともただの友情なのか、私にもどちらか分からないけど、とにかく優菜が好きという気持ちだけは誰にも負けなかった。
それ故に去年はとても悲しかった。
去年、私と優菜が一緒に通っていた高校から、私は一人転校することになってしまった。親の転勤なんて言う、よくある話だ。
私は随分反抗したと思う。
「私だけここに置いていってよ!あなた達の都合に私を巻き込まないで!」
なんて無茶なことも言った。
でも、私がいくら反抗した所で、ただの高校一年の女子ではどうすることも出来ず、結局この学校に転校することになってしまった。
この新しい学校には直ぐに馴染めた。元々いた学校がかなり個性的な学校だったので、むしろこの学校の方が馴染めた程だ。
けど、いくら友達が出来ても、楽しいことがあっても、優菜のいない世界に私は色を見いだすことが出来なかった。
だけど奇跡がおきた。
高校二年の春、優菜も私と同じ学校に転校してきてくれたのだ。
最初は私を追いかけて来てくれたのかとも思ったが、全くの偶然らしい。
だが偶然ならもっと凄い。
世界にいくつもある学校から、私のいる学校に転校してきてくれたのだ。
もう奇跡としか言い様がない。
それからと言うもの、私は優菜ことをもっと好きになった。
もっと傍に居たい、もっと触れていたい、もっと私を知って欲しい......
けど優菜は一人でいることを好み、自分という人間に深く関わる人間が嫌いだ。
だから私は、自分の思いを胸の奥に閉まっておく。
少しでも長く優奈の隣にいるために......
「優菜ー、一緒に登校しよー!」
私は通学路を一人歩く優菜に声をかける、今日も優菜は可愛いな〜
だが優菜は私を一瞥すると、
「やだ」
とだけ言って私をおいてどんどん前に歩いて行った。
だがこんな事で諦める私ではない、優菜と一緒にいれば、こんな事日常茶飯事だ。
「そんなこと言わずに〜、一緒にいこ〜」
私はそう言って優菜の手を後ろから握って、抱きつく。
その瞬間、少しだけ恥ずかしくなって、顔が赤くなるが、優奈には気付かれなかったようだ。よかったよかった。
「はぁー、わかったよ、一緒に行こう」
優菜は大きなため息をつきながらだが、一緒に行くことを了解してくれる。
なんだかんだ言って、優奈はとても優しいのだ。
私は抱きついた手を離し、優菜の横に並んで登校し始める。
少し名残惜しかったが、ふざけてやっているだけなら兎も角、友達同士でずっと抱きついたままと言う訳にもいかなかったからだ。
でも、優菜の体の感触が残っているので、私は幸せだった。
「随分と幸せそうだね?」
「そう見えるかな?」
「そりゃあ、そんなニコニコしてたらね」
私はますますニコニコ笑う。こうやって優菜とおしゃべりが楽しくてしかたなかった。
「そう言えば昨日、変な先輩あったよ」
「変な先輩?」
「なんか金髪で、凄く綺麗な人なんだけど、凄いグイグイきて困った」
私は思わず、優菜の顔をしげしげと見てしまった。
私の知っている優菜と言う人物は、他人にまったく興味がなくて、余程のことが無いと顔すら覚えて貰えない。
そんな優菜が、自ら他人の話をするなんて、私は少し嬉しいような、嬉しくないような気持ちになった。
私は顔覚えて貰うまで、一週間もかかったのに......
「私の顔に何かついてる?」
「う、うんん、別に何も無いよ」
私は優菜から顔を背け、意識を外らすために優菜の言っていた先輩について考えて見ることにした。
金髪で綺麗で、グイグイ来る先輩。幸いなことに直ぐに思いあたる人がいた。
「それ多分、秋野彩先輩だよ」
優菜は驚いて私の顔を見る。
どうやら直ぐに名前が分かるなんて思って無かった見たいだ。
「金髪で綺麗な三年の先輩、うん、やっぱり秋野彩先輩で間違いないと思う」
「へ、へえー、あの先輩そんななまえだったんだ。ていうか、なんで詠歌は先輩の名前知ってるの?ファンとか?」
優菜は少し戸惑いながらも関心を持っているようだが、それをおくびにも出さず私に質問を投げかけてきた。
「違う。有名なのよ、あの人。
金髪のハーフであの美貌、それに人当たりもいいと来たもんだから、学校では大人気の先輩だよ」
付け加えれば私の入っている美術部の部長でもある人だ。
だが先輩はおそらく、私の事なんて覚えてすらいない。先輩はいつも美術部の中心で見事な絵を描き続け、私はいつも端でお遊びで絵を描き続けているからだ。
「ふーん」
優菜は興味が無さそうに返事をするが、何かを思い出すような表情をしている。きっと彩先輩の事を思い出しているのだろう。
何となく私はなんとなく嫌な気持ちになる。
今一緒にいるのは私なのに......
それから私は、優菜と少しの間先輩について話していた。
どうやら優菜は彩先輩のことが苦手なようだ。
それを知った時、私は少しだけ安心した。
だけど、そんな楽しい時間は直ぐに終わりを迎えた。
「山里さん!」
後ろから彩先輩の声が聞こえた。部活中何度も聞いた耳ざわりのいい優しい声。
だが今だけはその声がまるで、悪魔の声のように聞こえた。
「おはようございます......秋野先輩......」
優菜は心底ウンザリしたような声で後ろを向くのだが。
「おはよう山里さん、名前知っててくれたんだね」
そう言って肩で息をする彩先輩を見た瞬間顔を真っ赤に染めた。
「いっいえ、私はそこの友達に教えて貰っただけなので......」
優菜はまともに喋る事もできないようで、私に話を降ってきた。
私は心に棘が刺さった様な錯覚におちいる。
やめてよ、そんな顔しないでよ......
そんな中、彩先輩は優菜に指された私に向かって振り向いて来る。
「うわっ!すっごい美人!」
私は自分の心をだます様に、声を張り上げて大声を出す。
そして、彩先輩に精一杯の威圧をこめて挨拶した。
「初めまして、秋野先輩。
優菜の親友の西原詠歌です。以後お見知り置きを。」
「よろしくね、西原さん」
だが彩先輩は私の威圧に一瞬顔を引き攣らせるが、直ぐに気を取り直して優菜に話しかけていた。
それからは、私は優菜と彩先輩の話に入って行く事ができなかった。無理やり話に入って邪魔しようともしたが、上手くいかない。
なんだかすごくモヤモヤして、悲しい気持ちになった。
これって嫉妬してるのかな......
それからしばらくして、彩先輩は日直の仕事があるらしく、先に学校に行ってしまった。
それから私は少しだけ拗ねて、優菜を困らせて見たりしたけど、優菜はいつもと変わりなく私と接してくれた。
何で機嫌が悪かったかきかれた時は、流石に嫉妬とは言えず困ったが、それでも概ねいつも通りの楽しい会話だった。
私はこんな日々がずっと続けば良いと思っている。
たとえそれが、けして叶わない願いだとしても......
書き始めたばかりなので、誤字脱字があったり、拙い文章ですので、読みにくかったらごめんなさい。
ここが悪い、こうしたら良くなるんじゃないか、などの意見も貰えると嬉しいです。
次話は14日に投稿します。