29話:実践は大事だなーという話
リスタルサーク2本でイリシャの突きを受け流す。
ギュイーンと鳴るBGMがやかましいが、とにかく受け流すしかない。
とすとすーシャキーン とすとすーシャキーン とすとすーシャキーン。
ピコン。
『攻撃回避に成功。《受け流しLV4》の熟練度が30増加しました』
9回分の突きを食らって3回受け流しに成功した。受け流せなかった6回分の突きはそのまま満腹度へのダメージに変換され、僕は空腹になっていく。
これが本気の殺し合いだったら、僕はとっくに死んでいただろう。ハラペコ式とかいう決闘ルールで助かった。
流石にスタミナが切れてきたのだろう。突きを繰り出すイリシャは息を荒くするも、にやりと嗤った。
「ふん、やるじゃない! 二刀流で《受け流し》なんて生意気ね!」
「二刀流か。《二盾流》を思い出すな」
そう語る紳士はいつの間にか温泉に浸かっていた。
何だよ、二盾流って。盾を2枚装備して戦うのか。どうやって戦うんだ? というか二刀流って二盾流と比較されるのか?
気になる話ではあったが、今は詮索する時ではない。
うーむ。イリシャが綺麗に突きを撃ってくる。
タイミングを見て攻撃してたいところだが、イリシャの猛烈な突きの連打のせいで全く余裕が無い。攻撃のこの字も撃てないではないか。
しかし、攻撃攻撃と考えていてふと疑問に思ったが、攻撃行動とは何なのだろうか。
敵に攻撃するとは何なのか。何を以て攻撃と判断されるのか。何も無い空間にパンチしたらそれは攻撃と判定されるのか? 意識して敵を攻撃したら攻撃扱いされるのか? 無意識の内に攻撃したら攻撃扱いされないのか? 一体誰が、如何なる物差しを以て、攻撃を攻撃として判断すると言うのか。
改めて考えてみると、攻撃という行動が宇宙の話並に壮大なスケールの話に思えてくる。普段何気なく行動している行為にこんな深い意味が隠されているとは、驚くより他ない。
うーむ、好奇心がむくむくと育ってきてしまった。
決闘中は死なないし、試してみるか。何も無い空間に斬撃だ!
空振りだった。
イリシャが「何やってんのコイツ」みたいな視線で僕を見ていた。
何も無い空間を斬っても攻撃としては判定されないようだ。だったら無意識の内に攻撃するという案はどうだ。
おりゃああああ! 秘技・温泉の湯を敵にかける作戦!!
尻尾を使って温泉の湯を飛ばす! 突きを繰り出すイリシャに、ばしゃばしゃーと降り注ぐお湯!
イリシャは「げっ」と声を漏らした。
「ちょっっっ、それは反則じゃないの!? 制服が濡れちゃうじゃない!」
そうだろう、そうだろう。服が濡れたら乾かさなければならない! これぞ復讐だ!!
恐ろしく低次元な争いにシフトしてしまった気がしたが、僕は生後2日目だ。問題は無い。
イリシャは突きを一旦中断すると、後方に跳躍してお湯をかわす。まあ、そうなるだろうなという感じだ。重要なのはそこではない。
今のお湯攻撃は、攻撃としては判定されなかった。攻撃として判定されていたら、攻撃キャンセラによってキャンセルされる。つまり、『僕以外の物体がイリシャにぶつかる』という点に関しては、攻撃キャンセラ効果の範囲外なのだ。
こうして見ると、無敵の攻撃キャンセラ効果にも意外と穴があることが分かる。やはり実践は重要だ。
だったらコイツが使えるではないか! 《同化存在解放》!! 発動だ!!
僕はリスタルサーク2本を投擲すると同時に《同化存在解放》し、僕という存在から切り離した。魂の一部がコリコリッと外されるような感覚に襲われ、リスタルサーク2本がイリシャに襲いかかる!
そうとも。《同化存在解放》を使った後のリスタルサークは僕の物ではない。自然に帰り、野生の魔物となるのだ!
いけぇーっ、リスタルサーク! 驚愕しているイリシャに空腹ダメージを与えろーっ!
「くっ!?」
言いたいことは分かる。『こいつ、なんで攻撃キャンセラが効かないのよ!』と言いたげな表情で、イリシャがニューウェーバーを振るってリスタルサーク1本を弾く。残りの1本はイリシャの左肩に直撃し、赤い線を表示させた。
やったぞ! 空腹ダメージを与えた!
連続突きでスタミナを消耗し切った状態でまともに野生の魔物と戦えるか? 戦えまい! これがテイマーの戦い方だ! 少し邪道だが気にするな!
おっと、野生化したリスタルサークが暴れ出した。今度は羽根をパタパタ動かして僕に向かって突っ込んでくるではないか!
うんうん、それもまた野生の本能だね。
《存在同化領域》、発動!
《存在同化》の効果が完全な球体を描いて周囲に広がる。イリシャを同化するために使ったのではない。リスタルサーク2本を再度同化するために使ったのだ。
《存在同化領域》を《発想》した時点で、敵味方識別効果を付けておいて良かった。今回の《存在同化領域》はイリシャを味方として指定、リスタルサーク2本を敵として指定することで発動している。イリシャを敵として指定していたら、攻撃キャンセラ効果で《存在同化領域》はキャンセルされていただろう。今までの行動で攻撃キャンセラ効果に穴があることは分かっていたので、やはり実践は大事だと実感させられた。
《存在同化領域》の境界面がリスタルサーク2本と接触し、光を霧散させて僕に吸収される。
こうしてリスタルサーク2本はブーメランの如く無事に回収され、再び僕と同化したのだった。
イリシャは体勢を立て直し、再び突きを繰り出そうとする。
イリシャ。そこから反撃しようとしても、もう遅いぞ。
ピコン。
『残り時間0秒。錬金騎士詩文最終形態を顕現します』
最終形態、顕現だ!
●ステータス(本来)
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:1
種族:人工闇竜・幼生体
職業:無職
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神、巨乳美女を警戒する、古代兵器級
隠し称号:神帝から観察されている
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV4、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、ゲーマー魂覚醒LV2(NEW!)、未来集約
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク
存在ストック上限:2/8
パーティ:フェリスのパーティに所属
隠し効果付与:神帝の観察
スキル 発想値
『《スキル交換》 50/100』
『《スキル譲渡》 50/100』
『《???》 ???/100』
『《無限???》 25/100』




