3:無い胸は無いのだ。
イリシャ視点の話です。
「「「ヒャーーーーハッハッハ!」」」
冒険者ギルドは大爆笑に包まれた。
「聞いたかァ!? レベル9だとよッ!」
「生徒の方がレベルが上なのかよ!」
「そんなんだから生徒が1人しかいないんじゃねぇか!?」
「《鑑定》で見てやろうぜ!」
「ついでに《情報公開》してやろうぜ!」
小太りの冒険者が視線をセイルに集中させる。
すると、セイルの背中に生える翼がピクリと動いた。
能力を《鑑定》されているのだろう。
欠伸を噛み締めるイリシャの傍らで、再び小太りの冒険者が叫んだ。
「ク、クククッ! こいつは笑えるぜ――《情報公開》ッ!」
《情報公開》スキルが発動し、セイルの能力の一部が公開される。
『名前:セイル・ラザム
LV:9
性別:男性
種族:翼人族
職業:教師
生命力:55
魔力:88
活力:77
筋力:66
技量:88
敏捷性:99
運:1
装備:モノクル、黒いコート、白いシャツ、赤いネクタイ、黒いジャケット、ズボン、ベルト、革靴
スキル:素材発見LV10、素材採取LV10、合成LV10、ランダム合成LV10、分解LV10、戦闘時装備、鷹の飛翔、異次元収納LV10、風属性耐性、秘匿
称号:《秘匿》により公開されません』
ブハーッ!
小太りの冒険者の取り巻きが酒を吹き出した。
「ホントにレベル9だぜ!」
「有り得ねー! 推奨レベル50のクエに挑むんだぜ!? 常識ってモンがねェのかよォォォォッ!!」
ギャハハハハ――――――。
イリシャは、下品な笑い声を一蹴した。
「――レベルが低くても、スキルと装備と知恵でどうにでもなるわ!」
不快に響く笑い声は、ピタリと止んだ。
イリシャは自身の髪を指で払い、告げる。
「あと必要なのは、そうね。勇気かしら?」
小太りの冒険者はプッと笑った。
「無い胸張っても意味ないぜ、嬢ちゃん!」
「それは余計なお世話よッ!」
イリシャは激昂した。
無い胸は無いのだ。ぺったんこなのは仕方ないのだ。
「まあまあ、いいじゃないですか。共同クエストは参加者が多ければ多いほどいいんです。そうでしょう?」
柔和な笑顔を見せる青年が目配せする。
どうやらこの青年も、共同クエストの参加者のようだ。
「お嬢さん。君は錬金術学校の生徒なんですかね?」
「ええ。私は《錬金術師》よ。それが何か?」
「錬金術師は便利な道具を使えるのでしょう?」
「《解毒ポーション》があるわ」
「――皆、聞きましたね?」
青年はパンッと手を打った。
周囲の注目が青年に集まる。
「今回の討伐対象は《ポイズンウルフ》、毒持ちの敵です。
この子は《解毒ポーション》を持っています」
小太りの冒険者から下卑た笑みが消えた。ムッとした表情で青年に視線を向ける。
「この子たちには補助に徹して貰いましょう。
――さあ、そろそろ共同クエストが始まる時間です。参りましょう!」
青年の視線につられて壁時計を見やると、確かに針は午後1時を指している。
共同クエスト《ポイズンウルフの大群の退治》の開始時間は午後2時だ。
共同クエストは複数のパーティが参加する形式のクエストとなっているため、この時間帯に準備しておないと間に合わないだろう。
小太りの冒険者は、どことなく納得していない表情でセイルに吐き捨てた。
「ケッ! 《解毒ポーション》を持ってる嬢ちゃんはともかくとして、てめェは足は引っ張るなよ!!」
●ステータス
名前:セイル・ラザム
LV:9
性別:男性
種族:翼人族
職業:教師
生命力:55
魔力:88
活力:77
筋力:88
敏捷性:99
運:1
装備:モノクル、黒いコート、白いシャツ、赤いネクタイ、黒いジャケット、ズボン、ベルト、革靴
スキル:素材発見LV10、素材採取LV10、合成LV10、ランダム合成LV10、分解LV10、戦闘時装備、鷹の飛翔、異次元収納LV10、風属性耐性、秘匿
称号:《秘匿》により公開されません




