1:錬金星剣
第二章の前振りに当たる話です。多分。
イリシャ・フィームはツインテールである。
エルフなのに、赤毛で、ツインテールである。
ついでに言うと、女の子である。
そして、ヴァラド国の錬金術学校に通っている。
担任のセイル・ラザムは、異次元から剣を引っ張ってきた。
「イリシャ。《錬金星剣(れんきん星けん)》という物は知っているか」
イリシャは純粋に興味を抱いた。
「《錬金星剣》? 初めて聞くわ。今までの人生でそんな物は見たこともなければ聞いたこともない。
何なの? 《錬金星剣》っていうのは」
「実際に見た方が早いだろう」
セイルは《錬金星剣》の柄を握ると、切っ先を何も無い空間へと向けた。
《錬金星剣》の切っ先を使い、空間をぐるぐると回す。
ぐるぐる、ぐるぐると。
回し続ける。
すると、何も無かったはずの空間が虹色に染まっていった。
虹色! 虹色だ! イリシャは興奮した。
「――錬金術ができるのね?」
「そうだ」
セイルは異次元から《オーイナ草》と《蒸留水》を引っ張り出すと、虹色に染まった空間に、それらを放り投げた。
再び、《錬金星剣》の切っ先で空間を回す。
ぐるぐる、ぐるぐる。
ポン!
虹色の空間から、《ライフポーション》が出てきた。
「《錬金星剣》を使えば、《錬金釜》を使わなくても合成が出来る。
――ただし」
「何よ」
「《錬金釜》ほど細かな調整は出来ない。普通に《合成》するだけなら錬金釜を使った方がマシだ」
「なんだ。期待して損したわ」
セイルは《錬金星剣》を異次元にしまった。
《錬金星剣》の切っ先に反応していた虹が解け、元の空間に戻る。
セイルは、錬金術初等部3年の教科書を異次元から取り出した。
そして、軽く溜息をついた。
「生徒が増えればいいのだがな」
「何しろ、セイル教室の生徒はたった1名だし」
「全くだ」
騎士の精霊である《シュトルム》が国王になってからと言うもの、騎士学校に入る国民が急増した。
反対に、錬金術学校や魔法学校に入る国民は減少した。
錬金術学校セイル教室の生徒は、今や1名である。
「大きな転機でも来ればいいのだがな」
セイルは、錬金術の基礎知識たる《元素》について語り始めた。




