幕間:ミゼルローン:1
ミゼルローン視点です。
時系列的には、第一章と第二章の間の話です。
カーン・オケと言ったか。
奴の臭いには、二種類の臭いが混じっている。
一つは死臭。物理的な死臭ではない。奴の魂には《既に死亡した》という記述が刻まれている。
一つは、既に《慈悲》を受けた臭いだ。
この世界で慈悲の執行が許されるのは、今生で未だ慈悲を受けていない者だけだ。
だが、奴の場合は……
既に慈悲を受けた者であれば、二度と慈悲は受けられぬ。
奴はそれを理解しているのか? その選択が、どれほどまでに残酷な末路を用意させ得るのか、真に理解しているのか?
奴は戦って死ぬ。慈悲を与えられずに、死ぬ。
そしてその魂は、輪廻に還ることが無い。
転生できないのだ。この世界で唯一、奴だけは。
――探りを入れる必要があるか。
スキルウィンドウなるものを表示。
スキル《神帝の観察》、発動。
ピコン。
『《神帝の観察》を発動します』
……。
相変わらず、この奇妙な音とシステムメッセージには興が削がれる。
フラスフィンの奴め。《世界記述》の構造を勝手に変更しおって。今度会ったら真意を問い質してやるわ。
『対象を選択して下さい』
対象?
そんなもの、決まっておるわ。カーン・オケだ。
さて、次だ。
4体の亡霊が湧いておるな。
この亡霊どもか。結晶迷宮の生態系を破壊したのは。
……この亡霊ども、魂が少しばかり奇妙な構造になっておるな。
世界記述内存在に対する未知の抵抗性と干渉性を持っておるだと? しかも存在構造の一部は解析不可能と来た。
世の中には、面倒な構造を考えた奴もいるものだな。
うむ。
人間形態に変化せねば干渉波長が合わんな。
《慈悲》では死者に干渉できん。
これも我の力不足故か。
《神帝の観察》だけでも付けて、泳がせるとしようぞ。
ミゼルローンは青の少女の姿に変化すると、監視のための魔法を発動させた。
第二章に続きます。




