4話:初めてのスキル
『スキル《自動翻訳》を獲得しました』
うおっ!? なんか頭の中にメッセージっぽいのが響いたぞ!?
ますますRPGっぽいな! 思っただけでスキル獲得できるのは別の意味でスゲーけど!
まあ、あれだ。僕は必死こいてアサシンっぽい盗賊集団の話に耳(あるのか?)を傾けた。
「【ブラックメア】か!?」
おっし、翻訳成功。
盗賊Aの質問っぽい発言に盗賊Bが答えたよー。
「いや、違う!」
盗賊Bがナイフを構え、ごくりと喉を鳴らす。
「……【ナイトメア】! 気をつけろ、奴は厄介なスキルを持っている!」
へー。このお馬さん、【ナイトメア】って種族なんだ。
確か、『アルティメットオンライン』にも同じ種族がいたなー。あっちは魔法とか使えたっけ。へへへ、テイマーやってた頃の血が騒ぐぜ。
それはそれとして、状況は『最悪』から『普通』になった。
「背後から失礼する!」
「ぐはっ!」
潔い言葉と共に女騎士さんがストレートに盗賊Cに斬りかかった。ギャグみたいな言葉を発して、盗賊C、死亡。
盗賊集団からしてみれば、前方はナイトメア(と僕という棺桶と子供ちゃん)、後方は女騎士。完全に挟み撃ち(?)だぜ!
よしよし、状況は良くなっている!
あとはチートスキルを見つけて発動すれば勝利さ! ふふん、間違いない!
おっ、黒いお馬さんが今度は僕の近くに寄ってきたよ。
あ、僕を守ってくれるんだね。なんていい子なんだ……。
などと無邪気に感動した次の瞬間! 黒いお馬さん、僕を蹴りつけたーーーー!
いや、なして!? なして僕に蹴りを食らわすの!?
棺桶がミシミシ言ってるよ!? 正直言うと、壊れる! いやホントやめて、何度も蹴らないで! 壊れるぅぅぅ!
う、うう。これは、あれか。もしかしてこのお馬さん、見境なく攻撃するタイプなのか!?
有り得る! 知能が高い獣は自分のテリトリーを荒らされると暴れると聞くし、そうに違いない!
ちっくしょー、一瞬とは言えこの馬を信頼した僕が馬鹿だった!
女騎士&子供ちゃんVS盗賊集団VS黒い馬、ついでに僕! まさに三つ巴(?)だ! 絶体絶命すぎるだろ、僕!
しかし僕も黙ってやられるわけにはいかない! これだけ時間を稼いでくれたんだ、僕はスキルを使うぞ!
そう。僕は黒いお馬さんが暴れて時間を稼いでくれている間に、僕自身のスキルを発見していたのだ!
スキルウィンドウに表示されているスキルは、さっき獲得した【自動翻訳】を除いて、ただ一つ――
【存在同化】。これだけ。
存在同化? 何だ、このスキル。如何にもヤバげなネーミングだぞ。デメリット満載感ハンパない。使うと寿命が縮んだり魂がゴリッと削られる的なヤバさしかねぇ!
いや、今は何でもいい! とにかくこの窮地を切り抜けるんだ!
行くぞ、黒いお馬さん!
――【存在同化】、発動!
●ステータス
本名:佐藤孝一
LV:1
種族:不明
職業:無職
スキル:存在同化、自動翻訳