《白蛇教団》の追跡者:1
盗賊集団こと、《白蛇教団》の手先の視点。
グロ描写ありなので注意。
時系列的には、9話と14話の中間の話です。
「どうする。このまま帰還しては粛清されるぞ」
同士の一人、ナンバー10が恐れを含ませて言った。
もっともだ。
我々は、《白蛇の教団》から放たれた追跡者だ。我らの使命は、エミル王女とその護衛たる騎士フェリスを追跡し、殺害すること。
元より追跡者として育てられた我らに名前など要らない。番号で十分だ。
結晶岩の背中を預けるナンバー9は、淡々と答えた。
「ヴァラド国には結界が張られている。ここで仕留めなければならん」
分かっているはずだ、と視線を送る。仕事が出来ない追跡者に用は無い。
ナンバー8が《遠視》を発動させ、言った。
「だが、ナイトメアの変種はどうする。あれは厄介だぞ」
王女とフェリスはそれほど問題ではない。厄介なのは、王女に付き従っているナイトメアの変種だ。
なぜ、どうしてナイトメアが味方する。スキルを使って強制的に従わせたのか?
事前調査ではそのようなスキルを王女とフェリスは習得していなかったはずだ。もしや、魔物を従えるスキルを隠し持っていたのか。
「計算が狂ったな」
ナンバー10が呟く。
確かに、それは認めざるを得ないだろう。
「最後の手段を使うしかあるまい」
「最後の手段だぁ? もう諦めようぜ。何日追ってると思ってんだよ。ああ?」
異議を唱えたこいつ――ナンバー11という番号だ――は、最近教団に入ったばかりの新人だ。
元は盗賊だったが、忠誠心が無いのが難だ。
やはり、所詮は盗賊か。
元盗賊の言葉は無視して、古株の我らだけで事を運ぶしかあるまい。
私は、《託宣》を発動させた。
「白蛇神・第一使徒《恐怖》よ、知恵を貸したまえ。どうか、我らに力を与えたまえ」
『――・――・――・――・――』
要求に、魂が震えた。
「答えが返ってきた」
「なんと仰っていた?」
「魂を要求された」
同士の一部に動揺が走った。
「なにぃ!? 魂を差し出せだぁ!?」
ナンバー11が喚く。
このような者にも知識は必要だ。
最低限の知識だけでも教えておいてやろう。
「《恐怖》に魂を捧げれば、死した後も、その者は生きた骸となりて敵を追うと言う。
例え肉削がれ、骨が砕け散ろうとも、亡霊となりて……」
「ふ、ふざけるな!」
ナンバー11の怒声が響き渡った。
「冗談じゃねぇっ! やってられっか! 俺は抜ける!」
ナンバー11はナイフを抜き放った。
短気な奴だ。それでも《白蛇教団》の信徒か。
「第二使徒の教えを忘れたか……」
辺りが静まり返った。
私は右手を挙げる――この教団に裏切り者など存在しない。それを証明するために。
「――復唱せよ! 此れは第二使徒《裏切り》の教えなり!
裏切りには、裏切りを以て報復せよ!」
宣言を皮切りに、合奏が始まる。
「裏切りには!」
「ひぃ、ひぃぃ!」
同士は裏切り者の肉を削ぎ、血を洗う。
「「裏切りには!」」
「ぐあっ、がっ!」
同士は裏切り者の臓器を奪い、骨を切る。
「「「「裏切りには!」」」
「あがっ……!」
裏切り者も、遂には道具に成り果てる。
これを以て、最後通牒とする。
「「「「裏切りを以て報復せよ!」」」」
「………………」
裏切り者はいない。そうとも、我らが教団に裏切り者などいない。
「これより白蛇神の魔方陣を敷く」
今し方、入手したばかりの新鮮な人間の臓器と骨を並べ、血を以て魔方陣を描く。
同士全員の魂を《恐怖》に捧げる。
魔方陣の付近の空間が歪み、闇が溢れ出た。
ず、ず、ずず……と音を立てて、白に染まった巨手が現れる。
この世に顕現した巨手がゆっくりと空間を握り、同士全員の魂を掌握する。
ふっ……と体の中から何かが抜けていくような感覚があった。
魂を握った巨手が闇へと還っていく。
溢れる闇は霧散し、後には白き槍が残された。
魔方陣の中央に突き立った槍に手をかけ、私は声高に告げる。
「――見よ! 第一使徒《恐怖》様より神託を受けたぞ!」
皆、理解している。
それでも、この興奮を言葉にせずにはいられない。
私は、第一使徒《恐怖》様より承った白き槍を掲げた。
「六竜神が一柱、地竜神――《グラムグレイズ》の骨だ!」
骨だ。
骨だ。
骨だ。
その身を大地と化した神の――骨だ。
「――地竜神の骨よ! 地脈を乱し、結晶大山脈の生態系を破壊せよ!」
全ては、寄る辺のない我らを拾ってくれた教団のために。




