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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第一章:棺桶転生
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2話:棺桶と女騎士と娘


 佐藤孝一、38歳。無職。

 ただ今絶賛、棺桶中。

 ええ、棺桶です。




 やばいっすー。ナニコレ状態。



 僕の体、棺桶じゃん。

 安楽死装置そのまんまの姿じゃん。


 え? なにこれ? マジでワケワカメなんですけど!


 辺り一面キラッキラの鏡! 自分は棺桶! しかも身動き取れない!



 あー、自分の状態が分かればなー。


 とか思ってたら、なんか視界に《メニュー》とかいうウィンドウが表示された。


 ご丁寧にも《メニュー》のウィンドウは半透過型だ。これを表示させたまま周囲の景色を思う存分堪能できるって寸法よ。



 って、それは別にどうでもええねん! 開け、メニュー! 僕はこのワケワカメ状態から脱出したいのだ!



 カチッと音を立ててメニュー画面が開いた。


 お、開いた。メニュー、開いたぞ!


 メニューの一番上の項目には《ステータス》とかいう文字が燦然と輝いている。


 あ、うん。これはあれか。RPGか何かか。

 懐かしいなー。昔、《アルティメットオンライン》とかやったっけ。


 って、今は感傷に浸ってる場合じゃないっつーの!

 ステータス確認! 僕のステータスよ、開け!


 カチッ。

 はい、ステータス画面が開きましたー。

 おっかなびっくりで悪いけど僕のステータス、覗くよー?




LVレベル:1

 種族:不明

 職業:無職】




 はい?


 ホワイ?


 不明って何やねん! ステータス開いた意味なくね!?

 しかも無職かよ! 異世界でまで無職になりたくないわ!



 ハァハァ。いかんいかん。あまりにもツッコミどころが多くて、つい関西弁が混ざってしまう。関東人だけど関西弁って便利だよね。


 っていうか、これ、明らかにあれだよね。


 ネットで噂の異世界転生モノ。

 転生先は棺桶でした。



 棺桶デビューおめでとう、僕。

 ハッピーバースディ、僕。



 ――って、楽観的になれる場合じゃねぇぇぇぇぇ!

 何なの!? 何なのよここは!?


 辺り一面鏡だらけ! 洞窟っぽいから、ファンタジーか!? ファンタジー世界なのか!?



 ひっひっふー。ひっひっふー。落ち着け、落ち着くんだ、僕。

 焦ってもしょうがない。、ここは冷静に状況を確認して整理するんだ。


 状況をかくに……




 ドカーン!




 ――って、言ってる傍からコレかい!



 まるでギャグだな! ドカーンとかいう爆発音、今時ありえねーよ!

 つーか今ので鏡の洞窟(の一部)が爆発したよ! もうメタクソに爆発したよ!

 哀れ、砕け散る鏡の破片! 明日は我が身か!



 とりあえず、あれだ。鏡の洞窟の左側が魔法っぽいもので爆破されたぽい。

 浮遊する鏡の破片を纏って、2人の人間が走ってきた。


 1人は女性。18歳から20歳ぐらい? 年齢はそのぐらいかな。腰まで届くような銀髪が印象的な美しい女の人だ。結婚詐欺に遭ったばかりの僕からしてもスゲー輝いてると思うぐらいの結構な(というかアイドルばりに)美人さんだ。

 とりあえず装備品チェックー。典型的な中世ファンタジーっぽい甲冑とマントを装着してらっしゃる。お約束として剣(多分ショートソード)も持ってるねー。


 もう1人は……んー、性別が分からない。ヘンテコな仮面被ってるから顔が分からないし、髪型はショートだ。

 髪の毛の色は、ブロンドかな? 白いお肌だし、西洋人っぽい雰囲気はあるなー。

 身長は低い。多分、小学校低学年ぐらいなんじゃないかな? 肩で息してるし、かなり幼い子のようだ。

 ただなー。装備品がなー。ザ・たびびとのふくって感じの庶民系ファッションなんだよなー。大丈夫か、その装備で。



 そんな2人を追って、壁の穴の向こう側からヘンテコな連中が出てきた。

 盗賊か何かかな? 全員、顔に黒い布被っててナイフみたいなもん持ってる。服も黒ずくめで、真っ黒々ー。

 つーかコレ、アサシンじゃね? 昔やってたゲーム《ラストファンタジー》では見たことあるけど、実物は初めて見るわ!


 どうもこのアサシンっぽい盗賊、女騎士と子供を追いかけてるみたいだねー。

 いきなり戦闘おっ始めよった。女騎士が剣抜いて盗賊集団相手に立ち回ってらっしゃる。


 こえー。いきなり戦闘するの怖っ。戦闘民族か何か?

 てかさ。戦闘するのは構わないけど、段々僕の近くに移動してるの何なの? いやマジで。



 僕、棺桶だよ? 戦闘に巻き込まれたら絶対壊れるわ。死ぬわ。

 折角異世界に転生したのにソッコーで死ぬとかないわー。


 ふんぬ、動け僕の体。ここから逃げ出すのだ。



 無理でした。



 あー、うん、あれだ。ここは状況をよく観察しておくべきだな!

 子供ちゃんは女騎士の指示に従って移動してるみたいで、僕から見て右側の方角に向かってるっぽい。

 おー、なるほどなるほど。確かに右側の奥の壁には穴が空いてるわ。そこから通路が広がってるぽいわー。


 察するに、女騎士は子供ちゃんを逃がそうとしてるんだなぁ。この洞窟から脱出するには右に走れー、私はここで奴を食い止めるー的な?



 いや、いいんだけどさ。いいんだけど、盗賊っぽいアサシンは子供ちゃんを追いかけて右側に向かっておるよ?

 女騎士さんもそれに釣られて右側に移動してるよ?



 ――僕の目の前を通り過ぎるコースやんけ!



 やべー、戦闘に巻き込まれるわ。僕の体(棺桶)、剣で斬られても大丈夫なのか? イヤ無理、ぜってー無理。

 とりあえず子供ちゃんはさっさと逃げて下さい。


 と思ったら盗賊Aがなんか使ったぽい。盗賊Aの足元に黄色い魔方陣っぽいのが広がったと思ったら、衝撃波っぽいのがズバーッと床を走っていった。

 衝撃波は床をちょっと切り裂いて、子供ちゃんの行き先近くの壁にぶち当たりおった。


 哀れ、崩れる壁。通路に至る道が閉ざされちゃったやん。

 子供ちゃん、びっくりして泣く泣く引き返しちゃった。


 つーか、盗賊Aが使ったあれって、あれか? 《ラストファンタジー》とか《魔王クエスト》でよく見かけた、魔法か何かか?

 女騎士に盗賊っぽいアサシンに魔法。あ、こりゃ間違いない。中世ファンタジー系異世界だ。確定だコレ。



 などと思っていたら、子供ちゃん、僕の近くに走ってきよった。

 棺桶(僕)の陰に隠れてやり過ごすつもりらしい。



 酷なこと言うけどさ、無理じゃね? 盗賊集団に君の動き、読まれてるよ? マジで。



 子供ちゃん、僕の裏で体育座りしちゃったよ。棺桶(僕)に背中預けると、指組んで祈り事はじめちゃったよ。

 いや、祈りたいのはこっちやねん。気持ちは分かるけどさ、ホラ、僕って動けないただのオブジェクトなんで。助け求められても無理なんですぅぅぅ!



 盗賊集団がこっちに向かってきたー!

 子供ちゃん、祈ってるだけー! 女騎士さん、盗賊集団を追って走り出した! でも間に合わねーーー!


 やばいっすー。誰かタスケテ。

 盗賊集団の足元に黄色い魔方陣がめちゃんこ広がったよ? 魔法撃つ気満々だよ? 僕(棺桶)ごと子供ちゃんを吹っ飛ばす気満々だよ?



 僕の内心、汗ダラダラ。

 どうしましょ、これ。どうするんでしょーね、マジで。



 などと思っても意味ナッシング。

 この状況、どう考えても僕が戦わないとダメでしょ。そうだ、戦うんだ、僕よ!



 うん。

 てかさ。

 マジで根本的なトコ、言ってもいい?



 棺桶って、戦えんの?


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