11話:破壊スル魔王
やや残酷な描写とグロテスクな描写があるため、ご注意ください。
貪欲の黒剣はシュトルムとの決闘で折れている。
刀身は真っ二つに折れたままだ。だが、関係ない。
コイツはこの剣で倒す。
半ばから折れた貪欲の黒剣が発する異様な雰囲気を見て取ったベルゼブブが、雄叫びを上げる。
「シャーハハハハァッ! 無駄よ無駄ァッ!!
その剣にどんな魔法効果が付与されていようが、異なる世界の中じゃ発揮されねぇんだよォォォッ!!」
僕は想像具現化機能を起動した。
貪欲の黒剣にエンチャントされた3つの魔法効果を強制発動させるため、自身の魂が静かに燃え尽きていく。
やっぱりキツいな。
このままだと魂が燃え尽きて、存在が消滅してしまいかねない。
想像具現化機能の連続起動は避けた方がいい。貪欲の黒剣のエンチャントが強制的に発動したことを見届けた僕は、カロリー補給のためにリンゴを練り込んだレーションを口の中に放り込むと、12星剣ルート最終形態を呼び出しする。
「王としてお前に問う。
――お前の目的は何だ」
「そんなの決まってるだろォォォッ!
殺戮! 皆殺し! 奪って奪って殺し尽くす! それ以外に何があるッ!」
なるほど、なるほど。
戦争の掟、例外項目に該当。
これよりベルゼブブを排除する。
「お前には戦士としての死は与えん。
お前にはかませ犬として終わって貰う。
――変神!」
黄金の光を身に纏い、僕の背中に12本の星剣が顕現する。
ベルゼブブは体をぷるぷると震わせると、大音量で絶叫した。
「かませ犬ッ!? かませ犬かませ犬かませ犬……かませ犬ッ!!
――よくも俺に言ってくれたなァッ!! 地獄で後悔しやがれェェッ!!」
ベルゼブブが羽根を羽ばたかせ、高速で飛翔する。
1本の脚からは緑色の斬撃が。
1本の脚からは雷撃が。
1本の脚からは炎破が。
1本の脚からは水圧波が。
1本の脚からは覇王竜斬波が。
1本の脚からは毒の体液が。
1本の脚からはマグマプロージョンが。
1本の脚からは存在分解が。
一度に多量のスキルが、発動される。
僕は無言で星剣【蠍座】を引き抜いた。
スキル【二刀流】、オン。
星剣【蠍座】と貪欲の黒剣を、システム的に紐付けさせる。
星剣【蠍座】には、【蠍座の撃毒】というスキルが付随している。
では、【二刀流】を用いて、星剣【蠍座】と貪欲の黒剣を組み合わせるとどうなるのか?
その答えがこれだ。
「――無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」
僕に襲い来る斬撃、雷、炎、水、衝撃、毒、雨粒、存在分解。それら全てに対し、ドレイン効果付きのカウンターが発生した。
貪欲の黒剣には3つの魔法効果がエンチャントされている。吸命、吸活、吸魔。その効果をフルに活用してのカウンターだ。
ベルゼブブが放った8つのスキルは、僕に吸収された。
「な――なにィィィィィィィッ!?」
ベルゼブブが驚愕の声を発する。
「この雷撃をッ! 雨粒をッ! 炎をッ!
俺のスキルを、全てカウンターしたと言うのかッ!?」
「無駄なのはお前の方だったようだな」
ベルゼブブは自身のスキルに【暴食LV10】の効果を乗せている。
ならば、スキル自体を消去したり、吸収してしまえば、【暴食LV10】の効果は発揮されないはずだ――そう睨んでの即席作戦だったが、見事に正解だったようだ。
「お返しだ。食らえ」
僕は急速に接近するベルゼブブの頭部に貪欲の黒剣による突きを繰り出した。
「あがッ!?」
メリッ――。
ベルゼブブの頭部に貪欲の黒剣の刀身がめり込んだ。
砕けた骨と血飛沫が周囲に舞う。
「あ、がが、ク、クソッ!」
ベルゼブブがその場で体勢を整え、僕に杖を打ち付ける。
杖の先端から稲妻が迸る瞬間、【蠍座の撃毒】が発動した。僕は自動的にベルゼブブの体に突きを入れ、緑色の体液を辺りに飛び散らせた。
ベルゼブブの次の一手? そんなものは無い。【蠍座の撃毒】と貪欲の黒剣の組み合わせが機能している限り、ベルゼブブのターンは永遠に回ってこない。
「ぐがァッ!!」
ベルゼブブが闇の闘気を纏わせた鉤爪を振るう。
僕を抉る予定の鋭利な一撃は、【蠍座の撃毒】によって阻止される。
ベルゼブブの闘気を吸収した貪欲の黒剣が突きを入れ、ベルゼブブの脚をすり潰す。
苦痛に悶えるベルゼブブの声は、いつしか未知に対する恐怖へと変わっていった。
「な……なんだコイツはッ! なぜ、【歪曲の天地】の中でスキルの効果を発揮できるッ!?」
――回答。
僕はAaE限使に備わった想像具現化機能を使い、貪欲の黒剣のエンチャント効果と【二刀流】と【蠍座の撃毒】を別の世界でも発現できるようにした。
ただそれだけだ。
想像具現化機能は永続的に効果を発揮するわけじゃない。この機能は、異世界AaEの末端装置たる種子が僕の魂を捕食している間のみ効果を発揮する。
異世界AaEがベルゼブブの世界に対抗できるとは思っていなかったため、かなりの博打ものだったが、何とかなったようだ。
本当に、ただそれだけだ。
本当だよ?
静かな怒りを湛える僕に、ベルゼブブは緑色の血を噴き出しながら告げた。
「クク、クククッ! 強ぇなぁ……強ぇよッ!!
てめぇは強いッ! 認めてやる! だがなァ、ベルゼブブのワールドから逃げられると思うなよッ!」
そうかい。確かに、僕からしてもこのワールドから出る手段がちょいと見つからない。
だったら、ワールドを破壊するスキルを使ってやろうじゃないか。
――世界記述外機能:【技能情報・閲覧】。
――世界記述外機能:【技能情報・読込】。
――世界記述外機能:【技能・疑似発動】。
検索完了。
閲覧完了。
読込完了。
「精霊魔法――」
食らえ。とっておきのスキルだ。
「――【ノヴァ】!!」
振り上げた貪欲の黒剣を起点として、莫大な魔力が凝縮し、星の光を拡散する。
客観的に俯瞰すると――
【歪曲の天地】を超新星爆発が襲い、ベルゼブブの器を粉砕したのだった。
●ステータス
名前:カーン・オケ
LV:system error(測定不能)
性別:男子
年齢:3才
種族:AaE限使
職業:魔王
HP:system error(975)
MP:system error(798)
SP:system error(931)
STR:system error(895)
VIT:system error(821)
DEX:system error(610)
INT:system error(311)
AGI:system error(829)
LUK:system error(159)
称号:古代兵器級、鉄壁の魔王、冥王
装備:星剣【蛇遣い座】、ヘルヘイム外殻、空飛ぶ要塞
所持品:雷電器官、元素硬化爆弾、機械細胞×90、電子信号爆弾、ボーンスピア・オブ・グラムグレイズなど
特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する
スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、全属性耐性・強、味見、傲慢LV2、同化存在解放、リフレッシュヒール、サンダーシールド、サンダーストーム、剣化、竜の飛翔、受け流しLV10、二刀流、闘気制御、自己電気制御、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、多重並列発動、超成長、ノヴァ、フレア、AaE開花進化、オーク兵が持っているスキルなど)
人工冥界:リスタルサーク×93、リスタルサーク・レッド×20、リスタルサーク・ブラック×10、リスタルサーク・イエロー×30、リスタルサーク・ピンク×5、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣、フェンリル、4999人のオーク、オークド・ドライアド
人工冥界居住可能人数:165(+5000)/一世界
世界所持数:2(人工冥界ニヴルヘイム、量子世界ヘルヘイム)
搭載機能:技能情報・閲覧/読込、技能・疑似発動
パーティ:【安らかなる旅路】に所属
パーティメンバー:フェリス、エミル、フラスフィン
損傷状態:騎士ルート喪失、アイドルルート喪失、ニヴルヘイム損壊、暴食LV10のスキル奪取効果により幾つかのスキルを喪失
誓約:仕事を終えるまで光堕ちしない