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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第三章:魔王の日常
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10話:貪欲の黒剣を抜く魔王


 元ゲーマーとしての直感が告げる。


 まずい。こいつは()()()()の敵だ。


「てめぇ、いいスキル持ってるなぁ!

 ――まだまだ行くぜぇ! 食らえ、ベルゼブブ!!」


 ベルゼブブが再び杖を掲げる瞬間を狙い、僕はスキル【思考超加速】をオンに切り替えた。



 ピコン。


『エラー。ワールド【歪曲の天地】内の構造を参照しましたが、スキル【思考超加速】並びにSPとMPの存在を確認できませんでした。

 ワールド【歪曲の天地】内では、スキル【思考超加速】を発動できません』



 ああ……まあ、そうなるよね。世界ワールドが違うんだからしょうがない。


 だったらこれでどうだ!


 AaE限使の想像具現化機能を起動! 異世界AaEの力よ、SPの代わりに僕の量子情報を食らえ!!



 ピコン。


『異世界AaEの侵食を確認』



 おっ、伸びてきた伸びてきた。僕を通じて、異世界AaEの根っこが伸びてきたのを感じる。


 異世界って本当に魂が好きだよね。そーれ、僕の魂を食ってもっと伸びろー。



 ピコン。


『ワールド効果、相殺成功。想像具現化成功。

 スキルを疑似発動します』



 やったぜ! 超強引にスキルが疑似発動し、主観的な時間の流れがスローになる。


 限りなく遅延化した時間の中で、ベルゼブブは動きを止めた。隙を見計らって僕はシステムメニューを開き、スキルウィンドウをチェックする。


 ……むぅ。本当だ。スキルが幾つか消えている。


 【炎破】も【素材発見LV2】も【潜伏LV1】も消えている。これらのスキルはかなり初期に習得したものなだけに、若干ショックではあった。


『敵が有するスキル【暴食LV10】の効果です。

 【暴食LV10】の効果により、記憶を奪取されます』

「記憶を奪取されたら、スキルを奪われるってこと?」

『肯定。スキルもまた記憶の一つの形態です』


 記憶の奪取か。スキルも記憶の一部なので、奪取できると。

 地球の漫画『ヨヨの奇妙な冒険・第六部』に出てくるホワイトサーペントみたいな能力だな。


 フラスフィンさんの解説を胸の内で反芻する中、僕はシュトルムの言葉を思い出した。




 首都ゴルバンの王城で決闘した時、シュトルムはこう言った――。


『風の噂でな。最近になってスキルを略奪する者が現れたそうだ』

『スキルとは魂の一部だ。それを勝手に略奪されるのは魂を刈られるのと同じだ』





 なるほど。


 今なら分かる。こいつがスキル略奪者なんだな、シュトルム。





『気を付けて下さい。敵の攻撃の一つ一つに【暴食LV10】の効果とベルゼブブの権能が宿っています。

 【ニヴルヘイム】を展開して、適切に防御して下さい』


 遅延化した時間の中でフラスフィンさんが伝える。


 うん。それって、足元から降ってくる雷と雨粒を全て防がないとダメってことじゃん。


 うーん、どうしたものかな。この状況で魔軍の兵を放置しておくのもまずい。


 【存在同化領域アシミレートフィールド】を発動。指定対象は湖に浮かんでいるオーク兵全員だ。


 ワールド【歪曲の天地】に囚われたオーク兵には一時的に人工冥界【ニヴルヘイム】に退避して貰う。そうしないと、【暴食LV10】の効果でオーク兵のスキルを奪取されまくってしまう。もう手遅れかもだけど。


 さあ、久しぶりに広がれ! 冥界の門よ!!



 ピコン。


『4999人のオークの同化に成功しました。オークド・ドライアドの同化に成功しました』



 ふう。【存在同化領域アシミレートフィールド】でなんとか自国の兵を回収できたぞ。


 なんだか色々なスキルを獲得してしまったが、これはオーク兵たちに返さないといけないものなので、使わない方が無難だろう。


 しかし、うん。そろそろ異世界AaEに魂を食わせるのもキツくなってきましたよ。


 今の僕はAaE限使の機能で強引にスキルを疑似発動させているわけですが、ベルゼブブのワールド【歪曲の天地】にはSPやMPの概念が無かったりする。

 なので、スキル強制発動の代償として魂を食らわせているわけですが、これがとにかくキツい。自分の中の大切な何かが静かに燃え尽きていく感じがする。


 【思考超加速】、オフ。


 時の流れが正常化した直後、ベルゼブブがチンピラじみた口調で挑発してきた。


「どうしたどうしたぁ! こんなものか、てめぇら魔軍の力は! それでも魔王かぁ!?」


 うるさい! 好きで魔王やってるわけじゃないんだよ!!


 つーかコイツ、僕が魔王だってことを知ってるのか。情報収集能力が高いってことは、それなりに高い地位にいる奴なんだろう。


 ここでふと思い出す! イリシャがエルフの貴族がどうのこうのと言っていたことを!


 もしかして、こいつがエルフの貴族なのか? 見えねー。どう見てもエルフじゃなくて悪魔にしか見えないんですが……まあいいか。


「おらぁッ! こいつに耐えてみせなッ!」


 ベルゼブブが掲げた杖より小さな稲妻が迸る。


 【サンダーストーム】か? いや、違う。


 このスキルには見覚えがある。


 【存在分解】。


 セイル先生が持っていたユニークスキルだ。


 それを、あろうことか。


 こいつが、使いやがった。


 ベルゼブブが杖から稲妻を発射する。


 僕はブーストして回避する。


 僕を穿つはずだった稲妻は、代わりに黒湖を貫き、蒸発させた。


 存在を分解する力に触れたためか、黒湖の様子が激変する。


 消滅した分の質量を取り戻すために黒湖が渦巻き、しかし、質量を取り戻せないがために、渦は加速して台風と化し、暴風をもたらした。


 雨と雷と雹を含んだ嵐が僕の足元を襲う。


 台風の直撃を受ける僕に、ベルゼブブが悪趣味に笑ってみせた。


「便利だろォ? 翼人族の野郎から奪ったスキルなんだがな――すこぶる使い勝手がいいッ!」



 なるほど、なるほど。

 セイル先生をバラバラに引き裂いたのはコイツだったのか。



「ククッ、翼人族の野郎には勿体ないスキルだ! これぞ俺のためのスキル!

 クハハッ、お前も分解されてッ! くたばりなッ!!」



 予定変更だ。

 コイツは倒す。



 僕は、貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)を引き抜いた。





●ステータス

 名前:カーン・オケ

 LV:system error(測定不能)

 性別:男子

 年齢:3才

 種族:AaE限使

 職業:魔王

 HP:system error(975)

 MP:system error(798)

 SP:system error(931)

 STR:system error(895)

 VIT:system error(821)

 DEX:system error(610)

 INT:system error(311)

 AGI:system error(829)

 LUK:system error(159)

 称号:古代兵器級、鉄壁の魔王、冥王

 装備:星剣【蛇遣い座】、ヘルヘイム外殻、空飛ぶ要塞

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾、機械細胞×90、電子信号爆弾、ボーンスピア・オブ・グラムグレイズなど

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、全属性耐性・強、味見、傲慢LV2、同化存在解放、リフレッシュヒール、サンダーシールド、サンダーストーム、剣化、竜の飛翔、受け流しLV10、二刀流、闘気制御、自己電気制御、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、多重並列発動、超成長、ノヴァ、フレア、AaE開花進化、オーク兵が持っているスキルなど)

 人工冥界:リスタルサーク×93、リスタルサーク・レッド×20、リスタルサーク・ブラック×10、リスタルサーク・イエロー×30、リスタルサーク・ピンク×5、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣、フェンリル、4999人のオーク、オークド・ドライアド

 人工冥界居住可能人数:165(+5000)/一世界

 世界所持数:2(人工冥界ニヴルヘイム、量子世界ヘルヘイム)

 搭載機能:技能情報・閲覧/読込、技能・疑似発動

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、フラスフィン

 損傷状態:騎士ルート喪失、アイドルルート喪失、ニヴルヘイム損壊、暴食LV10のスキル奪取効果により幾つかのスキルを喪失

 誓約:仕事を終えるまで光堕ちしない



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