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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第三章:魔王の日常
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オーク兵視点:魔王【ベルゼブブ】との遭遇

オーク兵視点(一人称)の話です。


「恐竜は魔法を使えないぞー! ウラァァァァ、突撃だぁぁぁぁ!!」


 先輩オーク兵が鬨の声を上げ、槍を掲げてエルフ軍団に突撃します。


「魔法を使えないならこっちのもんッス! フェリス師匠直伝スキル――」

「なに!? フェリス教官のスキルを使えるのか!?」


 密かにフェリス教官を口説こうとしていたオーク兵たちが反応します。


 私も女なんですけどね……。まあそれはいいです。


 魔王カーン様より賜った【ミスリルスピア】を媒体として、私はスキルを発動しました。


「――というのは嘘ッス! 【緑樹浸波斬りょくじゅしんはざん】ー!!」


「うぎゃああああああ!?」


 緑色の闘気が斬撃と化してエルフの軍勢を襲い、大量の花粉を撒き散らします。


 エルフたちは止まらぬ涙とくしゃみに襲われ、狂乱していきます。


「ごっほごっほ、なんだこれは! 涙が止まらぬ!」

「毒か!? 毒だな!」


 いいえ。花粉です。


 フェリス教官の特訓を受ける最中に習得した、地属性のスキルなのです。


「やるじゃないか、後輩!」

「おッスおッス!!」


 魔法と物理の複合範囲攻撃スキルは便利です。フェリス教官と出会えて良かった――心の底からそう思いました。




 ピコン。




 おや? 何やら頭の中に響く声が。




『進化の風が吹きました。【オーク】から【オークド・ドライアド】に進化します』



 !


 こ、これはっ!


 噂に聞く【進化】です! 私は光の繭に包まれ、【オークド・ドライアド】に進化しました!


「お、おおッ!? 進化したッス!」


 胸とお尻がふくよかになり、お腹がスレンダーになりました。

 胸が平らだったことがコンプレックスだったので、これは中々に劇的な変化です。



「こ、後輩! お前、進化したのか!?」

「はいッス! 行くッスよ、先輩!!」


 目を丸くする先輩オーク兵の前に立ち、私は【ミスリルスピア】に意識を集中させました。


 私の体から伸びた蔦が【ミスリルスピア】に絡みつき、以前とは比べ物にならない魔力が通います。


 これならやれます。

 私は襲い来る恐竜の爪をミスリルスピアで払いのけると、再びスキルを発動しました。


「【緑樹浸波斬りょくじゅしんはざん】ーッ!!」


 緑の衝撃が前方一帯を襲いました。


 効果は抜群です。進化したお陰でスキルの威力も上がったのか、さっきよりも大量のエルフを仕留めることに成功しました。


 巫女スライムがせっせと異次元にエルフを収納していく中、私は上機嫌に笑顔を振り撒きました。


「この調子で押せ押せガンガン行けッスー!!」






「――調子に乗るなよ、オークめがッ!」






「ヒエッ!?」



 貴族です。


 空を飛ぶ恐竜に乗って、貴族のエルフが現れたのです。


 金細工が施された豪奢な服に身を包み、筋骨隆々とした貴族エルフは叫びます。


「俺の名はネーロ・キャピレ! 貴様らを食らい尽くす貴族だッ!」

「貴族だとッ!?」


 先輩オーク兵が警戒を露わにします。


「まずいッ! 奴に近寄るな、後輩! ()()()()()()()ぞッ!!」

「エッ!?」


 記憶を奪われる?

 それはどういう……?


 ネーロと名乗るエルフは拳を天高く掲げました。


 何やら陽炎のようなものがネーロの背後で揺らめきます。



「俺と同化しろ、【ベルゼブブ】!

 ――奴らを食らい尽くせ!!」



 次の瞬間、衝撃が私たちを襲いました。



 ――黒い波。そうとしか形容しようのない何かが、空間を貪っていくのです。



 私たちは抗う余裕もなく、黒い波に呑み込まれました。



 黒い波が私の意識を食らっていきます。

 ああ、どんどん意識が遠ざかっていきます。


 薄れゆく意識の中、最後に私が目にしたものは、魔王――。


「――【ベルゼブブ】……」


 伝承の彼方に消え去ったと聞く、古き蝿の魔王。


 ネーロというエルフを依り代にして、【ベルゼブブ】が顕現したのです――。


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