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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第三章:魔王の日常
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ヴェルデ視点:オーディンの後継者に願うこと

オールス国の王、ヴェルデ・ドゥーロ視点の話です。


 魔王ヴェルデ・ドゥーロの脳裏に煌めいたのは、黄金の連なりだった。


 黄金の輝きが見せるは、確定性の高い未来。

 オールス国の玉座に座すヴェルデは流れ込んできた未来の姿を見た。


「槍……ルーン。大地の……原初の巨人……ユミルの……。

 ……グングニル……」


 グングニル。神々の黄昏(ラグナロク)に消えたはずの槍。


 なぜ今になってグングニルが蘇る?


 因果関係を調べようにも、マシーナの糸に操られた己が身に自由は無い。身食らう蛇(ウロボロス)との戦いの果てに得たものは、生前に有した思考能力の断片と、微かな声を発するための自由だけだった。


 ――認めよう。

 エルフは既に身食らう蛇(ウロボロス)に敗北した種族。異世界に負けた者たちに自由は無い。

 今や大半のエルフたちは操られているという自覚すら抱かず、破壊と略奪と殺戮を繰り返している。


 生来のエルフが抱えた理念から遠くかけ離れた思考と行動の強制――それを数千年にも渡って見つめ続けなければならなかったヴェルデの魂は、いつしか、強烈な錯覚を抱くに至った。



 それ即ち、世界とは牢獄なり。

 我々は、牢獄に住まう囚人なり。



 錯覚は確信へ、確信は現実へ。

 ヴェルデの魂を構成する量子情報は身食らう蛇(ウロボロス)が仕掛けた糸を通じて、オールス国の地下深くに埋まった【世界の種子】を汚染した。新たなる世界の核となる結晶体は暗く染まり、ヴェルデの魂に呼応した世界【スヴァルトアールヴヘイム】を創り出す。


「ヘル……。ニーズヘッグ……。フェンリル……。魂の……受容体。

 始祖開拓者オーディンの……後継者……」


 未来の中に垣間見た姿。棺を持ちし者。


 未だ現れぬ者なれど、ヴェルデはオーディンを継ぐ者の出現を夢想する。


 果たして、オーディンの後継者は希望を託すに値するのか。


「オーディンの後継者よ……我らを殺すが良い。我らを消すが良い。

 再び……神々の黄昏(ラグナロク)を起こすが良い……。

 全てを……全てを燃やせ……」


 ヴェルデは骨と皮だけとなった身で、救済の希望に縋る。


「我らは……牢獄から解放せし者を……求む……」




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