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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第三章:魔王の日常
180/240

3話:世界を破壊される魔王


 僕が放った【覇王竜斬波】は――



 アリシアさんに吸収されてしまった。



 どういう理屈かは分からない。ズバーッと斬波を放ったら、アリシアさんがピカーンと光って斬波が分解され、吸収されてしまいましたとさ。



 うん。わかんない。何が起きたのかさっぱりわかんない!


 

 ロミオンが深紅の剣を地面(注:希少金属ミスリルで舗装された頑丈な地面です)に突き刺して言いました。


「【詩詠魔法しえいまほう】を見るのは初めてかい?」

「ああ、初めてだね」

「じゃあ、ちょっと説明しておこうか。詩詠魔法はね――」

「魔王、覚悟ー!」


 おーっと、アリシアさんが空気を読まずに盾を構えて突っ込んできたー!


 そうです。勇者アリシアは盾と鎧と剣というオーソドックスな装備構成なのです。今時の勇者は盾で殴るらしい。実際、盾で殴られると痛いよね。


 ガコン、と思いっきり音を立てて強打されました。

 あれれー、おかしいなー。ハラペコ式ルールなのに痛みを感じるし、HPも減ってるぞー。ナンデダロウネー?


「すまない、決闘領域まで吸収してしまったようだ」

「フフフ、そういうわけだカーン! アリシアは決闘のルールをも吸収するッ!」


 意味わかんねーよコンチクショー! ロミオンもミゼルローン様も説明下手か!!


『フォノン天魔族は体内にフォノン操作器官を備えているため、音声を通じてフォノンを操作できます』


 おっ、絶妙なタイミングでフラスフィンさんが説明してくれたぞ。


『フォノン操作器官は、元素を超振動させることが可能な器官です。決闘領域は元素超振動エレメント・フォノンによって維持されており、決闘領域に作用するルールもまた、元素超振動エレメント・フォノンによって制御されています。

 しかし、フォノン操作器官を持つ者は元素超振動エレメント・フォノンに対して絶対的とも言える操作権限を有しており、決闘領域を発生させている金属球体の振動を吸収・増幅して放出することが――』

『ごめん、概要だけ言って!』


 解説を聞いている内に、アリシアさんの周囲が黄金色に輝き始めた!


 経験論から言ってこれはヤバイ! 黄金の輝きは敵対者に死をもたらす色だ!!


『勇者アリシアは、全てのエネルギーを吸収します。

 彼女と決闘をしても、決闘という現象自体を吸収されてしまいます』





 う


 そ


 だ


 ろ


 





 僕は素直にそう思いました。


「魔王は殺す。ころす……ころす!」


 おーっと、アリシアさんの瞳が赤色に輝いて、周囲に瞬く黄金の輝きが光線になって発射されましたー。無数の光線が発射された先にいるのは、当然、僕でーす。


 うーん。トンデモ現象のオンパレードすぎて、もう何でもアリだな。まあ、人のことは言えないが。


 スキル【思考超加速】、オン。

 一応、光線って光の速度なんだよね。呑気に実況していたら光線で打ち抜かれて死ぬので、思考を超加速させて光の速度に対応します。


 僕は勇者光線(仮称。後でかっこいい名前をつける予定)を左腕の棺桶こと【ヘルヘイム外殻】でガードすると、背中に竜翼を生やし、地を蹴って空に飛び立ちました。


「こっちだ勇者! 付いて来い!」


 なぜ空に飛んだかって? そりゃあ、改装したばかりの王城を破壊されたくないからだよ。国民の血税を無駄にするのは忍びないのです。


 というか、決闘という現象が吸収されちゃった時点で、『周囲への被害を防ぐ』という決闘の仕組みも喪失しているので、地上戦をしても被害が出るだけなんだよねー。


 てなわけで、最早もはや決闘の体を成してない無差別破壊はお空でどうぞ! カモーン勇者!


「まおう、ころす!」


 台詞がひらがなになってるが、大丈夫なのか? まあどうでもいいけど。


 発動しているんだかしていないんだかよく分からない【詩詠魔法】によって、勇者光線がお空に発射される!!


 しかし! 【思考超加速】状態の僕には光の速度もそんなに早くないZE!

 さよなら、勇者光線。横に移動してしまえば、光線が命中することは物理的に有り得ないのだHAHAHA。



 ところが!



 勇者光線は光の速度を維持しながら()()()()


 嘘だろ……と僕は驚愕した。


 物理法則を完全に無視した動きを目撃した僕は、あまりのショックに思考が飛びそうになった。


 しかし、現実は非情である。


 アリシアさんが決闘領域とハラペコ式ルールを吸収してしまったので、ダメージは空腹度に変換されない。攻撃を受けたら痛いし、HPを超過したダメージを受けたら死亡する状況である。


 すなわち! 未知の現象を引き起こすような勇者などを相手にしていたら、命が幾つあっても足りないのだ!!


「逃げるが勝ち、逃げるが勝ちよ!」


 竜翼を必死に羽ばたかせて曲がるビームを避ける魔王。しかし勇者アリシアは勇者光線に乗って、立派な剣を掲げる! ゲシュタルト崩壊を起こしたかのような酷い文章が続いているが、実際に起きた現象なのでしょうがない!! 考えるな、感じるんだ!!


「【概念剣イデアソード】――」


 勇者アリシアの剣に黄金の光が収束する!


 ――ピシッ!


 うぐっ。なんだ今のは! 僕の中で何かが割れたような感覚がしたぞ!

 フラスフィンさんが【精神会話】を通じて警句を発した!


『警告。アリシアが【概念剣イデアソード】を発動したことにより、並行世界が1つ消費されました。騎士ルート最終形態ファイナルフォームに変神できなくなりました』

『えっっっ?』


 耳を疑うような言葉に続いて、目を疑うような光景が続く。


「――【古き怒り(グラム)】っ!」



 グラム。古ノルド語で『怒り』を意味する剣。

 北欧神話において英雄シグルドが手にした剣であり、魔竜ファフニールを殺したともうたわれる、まあいわゆる伝説系の武器なわけです。



 などと解説している場合ではない!

 勇者アリシアは黄金に輝くピカピカエネルギービームなソードを振り下ろしてくる! この技だけは絶対に受けてはならぬと僕の本能が告げている!!



 人工冥界【ニヴルヘイム】展開! 防御だ!! 防御するんです!!



 数多に生まれた氷の剣が円を描くようにして重なり合い、広がり、増殖し、侵食し、現実を食らって拡散していく。



 増殖する深蒼の剣が、宮殿を描いて現れる。

 世界にして絶対不可侵たる人工冥界【ニヴルヘイム】が、現世に降臨する。




 【ニヴルヘイム】と【概念剣イデアソード古き怒り(グラム)】。

 絶対防御の盾と絶対切断の剣が激突した直後――



 脳裏に黄金の煌めきが迸り、僕の魂に明確な意識の奔流が流れ込んできた。





 それは、安息を拒絶する意識だった。





 戦って戦って戦い続ける。

 利用されてでも戦い続ける。

 世界を守るために戦い続ける。

 そのためなら死をも恐れない。

 死そのものを殺してでも世界を守り続ける。

 


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 僕は、この一瞬で理解した。


 アリシアは、()()()()


 その意志は黄金色に輝いており、うっかり触れた僕の意識を焼き切りそうなほどに鮮烈で、眩しかった。

 そしてそれは、僕がかつて捨てた光でもあった。



 幼い頃の純粋さを光と言うのであれば、確かに彼女にはまだその輝きがあるのだろう。

 彼女と戦ってると、十代の頃まで若返った気分になる。夢を追い求めて邁進した頃の純粋さを想起させてしまう。


 フラスフィンさんが僕の魂に介入して告げる。


『落ち着いて下さい。それは脳神経の発火がもたらす現象です。同化現象が見せる魂の形です』

『そうか。でも、実物を見てしまうと、心を揺さぶられるものがあるよ』

『それが夢や幻の類だとしても?』

『この輝きはその手の類だね。間違いない』


 黄金の光が連なる領域の中で、僕は溜息をついた。


「永遠の純粋性か。憧れはするが――」


 僕の視界に、並行世界で生きる僕自身の姿が見えた。

 光に焦がれるあまりアリシアに負け、彼女に手を差し出される並行世界が見えた。

 手を差し伸ばされ、光の側に引き上げられる世界が見えた。




 なるほど。

 そういうことか。



 アリシアルートに行った並行世界の僕の心境が理解できた。

 アリシアの純粋性に惹かれて敗北すると、アリシアルートに入るように出来ているのだろう。


 だが、今の僕はそれを肯定できはしない。

 なぜなら――


「――生憎と、僕にはまだこの世界で果たすべき仕事が山ほど残っている。仕事を終えるまでは、光に墜ちることは許されないんだ」


 永遠に純粋な子供のままでいるのも悪くはない。だが、僕は『客』だ。いつまでも天国に入り浸っているわけにはいかない。


 いいことを教えてあげるよ、アリシア。


 現実という世界に招かれた『客』はね、自身が持つ知識と経験と技術と寿命とその他諸々――つまり、命そのものを差し出して歴史を発展させていくようにできているんだ。

 何億人もの人間が命を差し出してようやく得られる今の歴史こそを、僕は肯定したい。


 よって、僕は天国行きを否定する。

 代わりに、他の誰かを天国に連れていくといい。



 僕が明確にアリシアを拒絶した直後、意識は現実へと引き戻された。

 


 ――現実というのは大概の場合、破壊に満ちている。



 黄金の輝きを発する光剣が、世界を覆い尽くす冥界の氷剣を砕いていく。



 人工冥界は――

 【ニヴルヘイム】は、()()()()()()()



●ステータス

 名前:カーン・オケ

 LV:system error(測定不能)

 性別:男子

 年齢:3才

 種族:AaE限使

 職業:魔王

 HP:system error(975)

 MP:system error(798)

 SP:system error(931)

 STR:system error(895)

 VIT:system error(821)

 DEX:system error(610)

 INT:system error(311)

 AGI:system error(829)

 LUK:system error(159)

 称号:古代兵器級、鉄壁の魔王

 装備:星剣【蛇遣い座】、ヘルヘイム外殻

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾、機械細胞×90、電子信号爆弾、ボーンスピア・オブ・グラムグレイズなど

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、全属性耐性・強、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、覇王闘気、覇王竜斬波、多重並列発動、超成長、ノヴァ、フレア、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク×93、リスタルサーク・レッド×20、リスタルサーク・ブラック×10、リスタルサーク・イエロー×30、リスタルサーク・ピンク×5、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣、フェンリル

 人工冥界居住可能人数:165/一世界

 世界所持数:2(人工冥界ニヴルヘイム、量子世界ヘルヘイム)

 搭載機能:技能情報・閲覧/読込、技能・疑似発動

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、フラスフィン

 損傷状態:騎士ルート喪失、ニヴルヘイム損壊


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