表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第三章:魔王の日常
174/240

0-3:魔王の日記(元パーティメンバーにボコボコにされる魔王)

六竜歴1560年1月1日(後半):

「昨夜、セイルはオールス国の斥候に殺されかけたわ。

 あんたはその時、何をしていたの?」

「そばを食べていた」

「は?」

「そばだよ、そば! 年越しそばだよ! 美味しいだろ、年越しそば」

「そういう話をしているんじゃないのよッ!

 いい!? 昨夜ッ! オールス国のエルフどもがッ! 【華桜国】に潜入してッ! 古代兵器アーティファクトを設置していったのよ! 私たちはあいつらと鉢合わせして、殺し合う羽目になった!

 先生は重傷を負った! あんたは何やってたのよ!」

「えぇー? それってオールス国側の国境侵犯じゃないのぉー?」

 イリシャはいきなり僕に殴りかかってきました。

 僕は1キロメートルぐらいブッ飛ばされ、国境付近の山に激突しました。

 近頃は戦闘をしていなかったせいでしょう。僕の反応は鈍っていました。

 僕は埃まみれになったコートを手で払うと、大声で叫びました。

「いきなり殴ってくるなイリシャぁぁぁぁ!!」

「あんたにはがっかりよ」

 気づいた瞬間にはイリシャが目の前に立っていました。

 【竜機フレースヴェルグ】は次元移動能力を備えています。今のイリシャは時間と空間と世界の隔たりを無視して移動できるのです。

 今年で11才になったであろうイリシャは、冷たい目で僕を見下ろしました。

「魔王になった癖に……まだオールス国を滅ぼしてないなんて、がっかりよ。本当にね」

「魔王だからと言って他の種族を勝手に滅ぼしちゃダメなんですぅーうごぉー!?」

 途中で殴られたのでうごぉーとかいう言葉が入りましたが、無視して下さい。

「魔王のあんたがエルフを皆殺しにしなくて、誰がやるのよ! バカじゃないの!?」

 僕はボコボコに殴られ、余波で山もボコボコに削られていきました。環境破壊は良くありません。

「答えなさいよ! どうしてエルフを皆殺しにしないの!?」

「そんなの決まってるだろ。

 ――エミルちゃんの情操教育に悪い!」

 イリシャは鼻で笑うと、僕を山ごと吹き飛ばしました。

「あんたってホントに親バカね。エミルの実の親でも無い癖に」

 僕は吹き飛ばされながらも【リフレッシュヒール】を発動させ、山を修復しました。どうも最近は不調なようで、修復した山が変な形になってしまいましたが、気にしないことにしました。

 僕は竜の翼を生やすと、空中で体勢を整えて防御に意識を集中させました。

「お前だってそうだろ。お前の親はとうの昔に亡くなっていて、お前自身は翼人族のセイルに育てられたんだ。

 当のお前が()()を言うのか?」

 イリシャは舌打ちしました。

「あんた、本気で殺すわよ」

「お前……ひょっとして反抗期か何かか?」

「殺す!!」

 イリシャは【人工聖水剣アルケミックホーリーソード】を虚空から引き抜きました。次の瞬間、爆弾が僕に降ってきました。

 何が起きたのかよく分かりませんが、多分、瞬時に【バトルランダム合成】を行い、爆弾を作って投げてきたのでしょう。

 むむぅ、これは良くないですね。

 子供の反抗期というのはこういう感じなのかな、と思いながら僕は爆弾の直撃を受けました。

 青空を背景に1メガトン級の盛大な爆発が起きました。爆発音に驚いたジャイアントバードたちが一斉に森から飛び立っていきます。

 僕は無事でした。人工冥界【ニヴルヘイム】を現実空間に展開して世界を隔絶させたため、爆発のエネルギーが全て遮断されたのです。

 代わりに、僕のお腹が減りました。

「何をやってるんだ。腹が減ったじゃないか。

 こんなことやってないで、パイナップルでも食べようZE!!」

「そんなこと知ったこっちゃないわよ!

 魔王だったら、さっさとオールス国のエルフどもを殺せ! 皆殺しにしろ!!」

 こわっっっ。

 僕はドン引きしました。恐る恐るイリシャに聞いてみます。

「そうまでしてオールス国を滅ぼしたがるのは何なんですかねー。復讐ですかねー?」

「復讐は趣味よ。これは趣味と仕事を兼ねた作業なの。

 私は影の騎士として、任務を果たしているのよ」

「あー……」

 はい、ここで回想シーン入ります。



▼ 回想シーン ▼


 僕が魔王になってから数日経った頃の話です。

 セイル先生の手紙を読んだ僕は、シロガネ大臣を問い質しました。

『イリシャを勝手に影の騎士とやらにしたそうだな。なぜ相談しなかった?』

『誠に申し訳ありません。私なりに国を憂えてのことです』

『子供に国を守らせる理由にはならない。僕が最強の王なんだから、僕が国を守ればいい。

 大臣がやったことは復讐を煽る行為だ』

『王の身は1つしかありませぬ。国を守る騎士が必要です』

『だからと言って、子供を騎士にさせるのは問題があるだろう』

『恐れながら、若者に「ただ息を吸って生きろ」と命令するのも酷ではないでしょうか』

『生きている実感を与えたいと言うのか? だったら勇者になって僕を倒せばいいのに』

『あの娘がカーン様を倒しても納得はしますまい。あの娘の矛先はオールス国のエルフです。

 オールス国のエルフ全員に復讐しなければ、あの娘の魂は救われませぬ』

『復讐か』

 復讐は面倒です。復讐を果たしても果たさなくても、その人の人生には暗い影が落ちます。

 でもさー、わざわざ復讐しなくてもよくなーい? 普通に生きればいいじゃーん? と考えた僕は、法律の改変を決めました。

『じゃあ、接近禁止令を出せるように裁判所を設置してー、魔王の役職も1つ増やすかー』

『は?』

 魔王の役職が1つ増えました。

 イリシャ用の魔王の座です。

 あとはイリシャを勧誘して、魔王に就任すればOKです。

『大臣には責任を取って貰うんでよろしくー。

 イリシャの活動を支援して、イリシャの人生を全力で肯定せよー』

『承知しました』


 ▲ 回想シーン終わり ▲



 というようなやりとりがあったのでした。

 僕は僕で、イリシャと出会った頃を思い出し、彼女の説得を試みます。

「しかし、何もエルフを虐殺することは無いだろ。

 お前の目的は、オールス国の……えーっと、何だっけ。貴族か何かを超えるんじゃなかったのか?」

「貴族を超えても意味が無いわ。オールス国のエルフを全員滅ぼさないとダメなのよ。いいえ、滅ぼすだけじゃダメ。消さないとダメなのよ」

「えぇ~? 消すのぉ~?

 別に消してもいいんだけどさ~、消すんだったら明確な根拠とか証拠が欲しいなぁ~」

 イリシャは溜息をつきました。

「――この世界のエルフはエルフであって、エルフじゃない。

 私はこの体に進化してから、色々な場所を巡ってきたわ。

 そうして、知ったのよ。ウラグルーンのエルフは、【マシーナ】の操り人形だってね」

「【マシーナ】って何だよ」

「演劇世界【マシーナ】よ。あんた、世界の移動は出来るの?」

「やったことがないから分からん」

「私は出来るわ。つまり、あんたは私の下。いい? 私の言葉をよく聞きなさい。

 ウラグルーンの純粋なエルフは実は【始原歴】で全員死亡していて、永劫回帰しているの」

「……???? 言っていることがさっぱりわからんのだがー」

()()()()()()()のよ! あいつらエルフどもは同じ演劇を何度も何度も繰り返しているの!

 題材は、異世界人シェイクスピアが書き上げた物語【ロミオとジュリエット】!

 演劇世界【マシーナ】の影響を受けたせいで、エルフは死んでも演劇を繰り返す! 分かる!? 私の言葉の意味が!」

「うーん、なるほど。大体わかった。この世界のエルフは実はゾンビで、同じ歴史を無限ループしています。以上。OK?」

「あんたの言ってることこそよく分からないけど、ま、そういうことよ。

 エルフを真に救済するには、エルフを消さなければならない」

「ああ、そういうことね。大体わかった」

「私は演劇世界【マシーナ】に向かって調査を続行するわ。あんたはオールス国のエルフを皆殺しにして跡形も無く奴らを消すのよ。いいわね?」

「ハァ!? ちょ待っ、それじゃ僕の国がオールス国と戦争をおっ始めることに――って、おーい!?」

 イリシャは稲妻を閃かせて空間に穴を開け、他の世界に移動してしまいました。

 僕がイリシャを引き止めようとしても、時既に遅し。

 僕は、溜息をつきました。

「戦争になるよなぁ。なっちゃうよなぁ。

 嫌になっちゃうよ、まったく」

 僕は森に着地すると、群生するパイナップルをむしゃむしゃと食べました。

 うおー、酸っぱい。あまーい。付近のパイナップルを食べまくってようやく満腹になった僕は、フラスフィンさんに尋ねました。

『フラスフィンさん。あいつの言葉、聞いてた?』

肯定イエス

『どう思う?』

『彼女の言葉に偽りはありません。

 いささか私情が込められてはいましたが、ほぼ事実と見て間違いないでしょう。

 状況から判断しても、オールス国との戦争は避けられないかと』

『ですよねー』

 オールス国のエルフたちはしょっちゅう領土を侵犯しては冒険者たちと殺し合っています。当然、死者も出ています。

 冒険者たちがエルフたちに殺されても冒険を続行できているのは、僕が星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】に秘められたスキル【蘇生リバイブ】で生き返らせているためです。

 しかし、冒険者たちの死生観を弄くるのもそろそろ限界でしょう。あまりにもオールス国のエルフたちに冒険者たちが殺されているので、国民の不満は爆発寸前です。

 胃が痛くなる状況ですが、やるしかありません。

 騎士ルート最終形態ファイナルフォームに変神した僕は1秒で首都に帰還すると、オーク・ジェネラルの執務室に失礼しました。

「オーク・ジェネラルよ! これより我が国はオールス国と戦争を行う! 【魔軍】を率いて、オールス国を攻めよ!」

「お言葉ですが、陛下……」

 かっこつけて宣言する僕に返って来た言葉は、残酷なものでした。

「え? なに? 生命力が減りすぎて戦争できない? マジ?」

「六竜神に誓って、真です」

 2年前の騒乱の時に、【魔軍】のオーク兵たちは亡霊レイスに最大HPを削られすぎて、一般人以下にまで戦闘力が低下していたのです。

 僕は頭を抱えました。

「こうなったら【魔軍】を育成するしかない!

 指導役は――おおっと、適任者がいたぞ。

 フェリスさんだ! フェリス・ウェインを指名する!」

「承知しました、我らが魔王よ」

 こうして、【魔軍】の特訓が始まったのです!



六竜歴1560年1月3日~2月3日:

「腕立て伏せ1000回、素振り1000回だ! 早寝早起きを心掛け、よく食べるのだ!」

「イエス、マム!」

 フェリスさん指導の下、オーク兵たちの特訓が始まりました。



 オーク兵1万人の生命力が 100 上がった!

 オーク兵1万人の体力が 50 上がった!

 オーク兵1万人の筋力が 50 上がった!



 良し良し、この調子です。

 【魔軍】の育成はフェリスさんに任せ、僕は次の仕事に取り掛かりました。



●ステータス

 名前:カーン・オケ

 LV:system error(測定不能)

 性別:男性

 種族:AaE限使

 職業:魔王

 HP:system error(975)

 MP:system error(798)

 SP:system error(931)

 STR:system error(895)

 VIT:system error(821)

 DEX:system error(610)

 INT:system error(311)

 AGI:system error(829)

 LUK:system error(159)

 称号:古代兵器級、鉄壁の魔王

 装備:星剣【蛇遣い座】

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾、アダマンタイト装甲、アダマンタイトコア、外部記憶装置、量子演算回路、放熱板×3、機械細胞×99、電子信号爆弾、ボーンスピア・オブ・グラムグレイズなど

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、全属性耐性・強、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、覇王闘気、覇王竜斬波、多重並列発動、超成長、ノヴァ、フレア、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク×93、リスタルサーク・レッド×20、リスタルサーク・ブラック×10、リスタルサーク・イエロー×30、リスタルサーク・ピンク×5、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣、フェンリル

 人工冥界居住可能人数:165/一世界

 世界所持数:2(人工冥界ニヴルヘイム、量子世界ヘルヘイム)

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、フラスフィン




(しばらくは日記形式で話が進みます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ