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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
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76話(T2E):魔王就任


「これで余も晴れて国王引退だな。

 ま、何かあったら呼んでくれ」


 おや。この流れはフレンド申請コースだな。


 だが、今の僕は世界記述のサポートを受けられない。


 メニューを開く機能やフレンド管理機能は、世界記述のサポートがあって初めて成立する機能だ。

 なので、僕は脳内に電子回路と演算機構を具現化して、強引にメニュー画面とフレンド機能を作成した。



 しかし、ここで異変発生! 僕は【思考超加速】をオンにした!



 メニュー画面のレイアウトって、どうすれば見やすく出来るんだ?



 僕は悩んだ。とても悩んだ。メニュー画面のレイアウトにとてもとても悩んだ。



 地球の『アルティメットオンライン』風のレイアウトで行くか?

 それともソシャゲ風のレイアウトで行くか?

 いや、ここは思い切って『ラストファンタジー』風のレイアウトにするべきか?



 悩む! 僕は主観時間にして1時間ほど悩んだ挙句、原点回帰し、『アルティメットオンライン』風のレイアウトに決めた。


 良し。レイアウトは決まった。

 あとは、BGMか。BGMが無いとどうも物足りないので、BGM再生機能を脳内に作成した。



 世界記述との互換性も確保、と。

 世界記述との互換性を確保すると通信速度が低下するらしいけど、まあいいか。



 良し良し。メニュー画面の構築は完了した。


 王の城っぽいBGMを脳内に流しながら、僕は【思考超加速】をオフにした。


 シュトルムからのフレンド申請が届いた。『YES』を選択し、シュトルムをフレンドリストに加える。


 シュトルムはバッと身を翻した。


「さて、余の仕事は終わりだな」

「どこに行くんだ?」

「野暮なことを聞くな。修行だ!」


 うおっ、修行と来ましたか。


「修行って」

「うむ。修行は良い」


 イリシャが唖然とする中、フェリスが深く頷く。イリシャは修行嫌い、フェリスは修行好き、と。


 てなわけで、シュトルムはさっさと王城から去っていった。


「えーと」

 

 つーかこれ、国王を追い出した形になるんじゃない?


 などと思っていたら、コルバットがフォローを入れてくれた。


「ヴァラド国は実力主義社会デス。貴方が罪悪感を覚える必要はないデス」

「へー、そうなんだ」


 アメリカみたいな国だなー。


 妙なところで感心する僕に、シュトルムからwisが届いた。


『よう、新しい魔王。ちょっと表に来てみな。面白いことになってるぞ』


 面白いこと? 何のこっちゃ。


「表に行ってみよう」

「ああ、恒例のアレね」

「アレだな」

「うむ……アレか」

「アレ?」


 イリシャとセイル先生とフェリスさんの言葉にエミルちゃんが疑問を抱く。


 ああ、これはアレだな。


 僕も何となく察しが付いた。


 AaE限使の能力を発動。


 星剣の止め具よ、コートの背に具現化せよ。星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】を背中に装着せよ。

 黒のガントレットよ、両腕に具現化せよ。

 黒のグリーブよ、両足に具現化せよ。

 黒の胸当てよ、胸に具現化せよ。



 王として国民の前に出るのだから、これぐらいの礼装は必要だろう。

 地球の『アルティメットオンライン』のように、国王がうっかりプレイヤーの魔法で焼き殺されても困るので、グリーブには火属性耐性を付けておいた。



 僕たちは回廊を抜けると、王城の入り口に出た。



 国民が王城の前に詰め掛けていた。



 見渡す限り、魔族、魔族、魔族。

 ゴブリンやオークやサキュバスやサイクロプスやガーゴイルたちがこっちを見ている。

 僕はフードを脱いだ。


純粋人間族ピュアヒューマン?」

純粋人間族ピュアヒューマン

純粋人間族ピュアヒューマンだ」


 僕の姿を見て、民衆が呟く。


 無理も無い。今の僕は純粋人間族ピュアヒューマンと同じ外見なのだから。


「諸君。僕の名はカーン。国王シュトルムとの決闘において勝利した、新しい王だ」


 民衆がざわめいた。


「六竜神殿支部神官長コルバットの名において宣言します!

 ヴァラド国の新国王は、カーン・オケ! に! 決定しましたデス!」



「新国王?」

純粋人間族ピュアヒューマンが新しい国王なのか」

純粋人間族ピュアヒューマンが王になるとは、こりゃまた前代未聞だな」


 いやー、僕は純粋人間族ピュアヒューマンじゃないんですけどねー。


 僕は、こほんと咳払いした。


「そんなわけで、今から僕がこの国の王だ。

 就任記念として、手始めに、ヴァラド国を解体する!」




「「えーっ!?」」




 どよめく民衆を前にして、僕は演説を打った。


侵略者エイリアンたちの手により、ヴァラド国は被害を被った!

 見よ! この有様を!」


 ヴァラド王の象徴である王城は、ぼろぼろになっていた。

 僕は身振り手振りを交え、必死に語る。


「リレイン国もまた例外ではない!

 ここにおわすのは誰であろう、エミル王女だ!」

「!?」


 子供を政治に利用するようで気分は良くないが、こうでもしないと状況は良くならない。

 僕は語る最中にwisをフェリスさんに送った。


『フェリスさん。ちょっとエミルちゃんに触りたいのだが、よろしいか?』

『? 何をするつもりだ?』

『ちょっと記憶を……ごにょごにょごにょ』

『うむ、なるほど。そういうことなら問題ないだろう』


 良し、フェリスさんの許可が出たぞ。

 次はエミルちゃんにwisだ。


『エミル。今から君の記憶を――リレイン国で出来た出来事の一部を皆に話したい。

 僕の手を握ってくれないだろうか』

『うん……?』


 エミルちゃんは首を傾げてちょっと考えた後、こう言った。


『うん、分かった。カーン様なら、何があっても、きっと大丈夫だよね』

『ありがとう』


 ううー、すまない! 子供を政治に利用する情けない大人ですまない! 恩に着る!


 僕はそっとエミルちゃんの手に触れた。



 さあ、仕事の時間だ。

 AaE限使よ、お前の力を見せてみろ! エミルちゃんの記憶を読み取れ! サイコメトリーだ! 



 出来ました。

 サイコメトリー、出来ました。



 行くぞ!

 僕は目からレーザーを照射して、サイコメトリーで読み取ったエミルちゃんの記憶を空間に投影した。



「うわっ!」

「うわー、リレイン国が火の海になってる」

「ひどいなー」


 辺り一面火に包まれたリレイン国の惨状を目の当たりにして、民衆が同情を露わにする。


『エミルちゃん、見たくないなら見なくても大丈夫なんだよ』

『大丈夫。カーン様と一緒なら、大丈夫だよ』


 エミルちゃんが僕のコートをきゅっと握る。


 やれやれ。子供にこんな思いをさせるとは。僕は本当に、センスが無い。


 僕はリレイン国の惨状を材料にして、民衆を納得させる演説を打つ。


「リレイン国は滅んだ!

 しかし、ヴァラド国とリレイン国に被害を与えた侵略者エイリアンは僕が消滅させた!

 侵略者エイリアンを退けたことにより、諸君らは究極の搾取が可能になった! すなわち、『平和』を謳歌できるのである!」


 平和というのは絶対的なものではなく、相対的なものだと僕は考えている。


 平和とは他国や他世界の脅威を退けて初めて獲得できる究極の贅沢であり、無慈悲な現世に対して行える最高の搾取の形態である。


 平和に慣れ切った国民にとっては、つまるところはいつも通りなわけで、案の定、ヴァラド国の国民はいまいちそれを理解できていないようだった。


 それ自体は別にいい。水面下で活動する汚れ役に対する世間の評価なんてそんなもんだ。


「諸君! 今やこの世界は復興を必要としている! それも、早急なる復興が必要だ!

 そこで、僕は宣言したい!」




「この流れはまずいな」

「離脱しましょ」

「最後の【妖精の翼】だ。また素材を集めないとならんな」


 セイル先生とイリシャが言い合い、システムメッセージが視界に表示された。



 ピコン。


『セイルとイリシャがパーティから離脱しました』



 ん? あれ? 


 ちらっと後ろを見ると、セイル先生とイリシャはどこかに転移ワープしてしまった。



 ちょっ、なに!? なんであの2人は離脱したの!?


 フラスフィンさんが僕の疑問に答えてくれた。


『色々と前提条件が崩れましたからね。私の計画も台無しです』


 あー……まあ、色々と前提条件が崩れてしまったからね。しょうがないね。

 セイル先生やイリシャには、必要に応じてフレンドリストからメッセージを送ろう。それでもダメだったら、伝書鳩でも使うしかない。


『心配に思う必要はありません。進化の風は誰にでも吹きます。

 いずれ、イリシャも在るべき姿となるでしょう。いずれ……』


 いずれ、か。

 その日が来るまで、成長を見届けるとしよう。



 今は国民と向き合う時間だ。

 僕は状況を実感できていない民衆を奮起させるため、切り札を切ることにした。


「今ここに世界は平和となった! しかし、世界は復興を必要としている!

 世界規模の復興を行うため、カーン・オケの名において、ここに【リレイン・ヴァラド連合国】を建国する!

 復興の証として――」


 僕はパフォーマンスとして星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】を抜き放ち、切っ先を青空に向けた。



 さあ、動け。

 長らく封印されていた制度の復活だ。



 世界よ、動け。




「――【勇者制度】と【魔王制度】を復活させる!」





 ――民衆は、歓喜に沸き立った。



これにて第二章終了です。



●ステータス

 名前:カーン・オケ

 本名:system error(佐藤孝一?)

 LV:system error(測定不能)

 性別:男性

 種族:AaE限使

 職業:魔王(NEW!)

 HP:system error(692?)

 MP:system error(267?)

 SP:system error(572?)

 STR:system error(602?)

 VIT:system error(498?)

 DEX:system error(185?)

 INT:system error(125?)

 AGI:system error(356?)

 LUK:system error(112?)

 称号:system error(古代兵器級?)

 装備:星剣【蛇遣い座】

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾など

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、覇王闘気、覇王竜斬波、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣

 人工冥界居住可能人数:9/一世界

 世界所持数:1

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、フラスフィン


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