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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
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75話:勇者も魔王も救うよ


 ――受け止めた。


 僕は僕に課した約束通り、【覇王竜斬波】を受け止めてみせた。


 HPゲージは……ああ、そういえば今の僕は世界記述を外れているんだった。僕のHPゲージとMPゲージとSPゲージは、視界に表示されていない。


 だが、生きている。全身傷だらけだが、まだ動ける。



 耐えたぞ、シュトルム。


 今度はこっちの番だ。



 ――【覇王闘気】、発動。



 決着を付けよう。



「覇王――」



 僕は星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】に【覇王闘気】を集中させた。


 シュトルムの技なら知っている。今、この身で味わったばかりだ。


「そのスキルは――」


 シュトルムの声音に明確な驚愕が浮かんだ。


 模倣でいい。

 模倣から全てが生まれる。


 底の無い模倣の中に落とし込んでなお、浮かび上がってくるのが、自分という存在だ。


「――竜斬波!」


 全力全開。これが僕の闘気だ。



 シュトルムが【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】を盾代わりする――。



 僕が放った【覇王竜斬波】は、【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】を刀身の真っ直中からへし折った。


「――ぐっ!」


 騎士にとって剣は自分の分身だ。

 覇王竜斬波の直撃を受けたシュトルムは、潔く宣言した。



「余の、負けだ」




「勝った……のか?」

「勝ったよ! カーン様が勝ったんだよ!」


 フェリスさんが目をぱちくりとさせる中、エミルちゃんがはしゃぐ。


「あの一瞬でスキルをラーニングしたか」

「へぇ、カーンってスキルラーニングするタイプの種族だったのね」


 セイル先生とイリシャが互いに感想を言い合う。


 なるほど、スキルラーニングか。地球の『ラストファンタジー』に出てくる『青魔法使い』みたいだな。『ものまね使い』も混じっている気がする。


 僕は息を切らせて、シュトルムに歩み寄った。

 シュトルムは折れた愛剣をじっと眺めていた。


「すまなかった、【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】。

 余が不甲斐ないばかりに、貴様を折らせてしまった」


 ……愛着がある剣だったんだな。


 シュトルムは眼前に佇む僕の姿を認めると、その場で跪いた。

 両手で折れた剣を拾い上げ、僕に差し出す。


 多分、これは彼なりのけじめなのだろう。僕は剣に手を伸ばす前に、彼に尋ねた。


「本当にいいのか?」

「剣は、それを振るうに相応しい持ち主に渡るべきだ。余ではこいつを活かし切れなかった。ただそれだけの話よな。

 ――華桜国の鍛冶屋、ガイン・ガームに会え。あいつなら折れた【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】を直せる」

「分かった」


 僕はスキル【存在同化領域アシミレートフィールド】を発動し、【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】に触れた。

 【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】が細かい光の粒となり、僕の体内に存在する人工冥界に吸収される。


「うっ」


 【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】を人工冥界に収納した瞬間、【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】に刻まれた情報が僕の脳内に駆け巡った。


 【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】は、ガインが打った剣であり、エンザルクの祝福を受けた剣でもある。


 ガイン・ガーム。【古き救済(オールドメサイア)】のメンバー。種族はオーガ。現在は華桜国で刀鍛冶をしている。

 エンザルク。火竜神。この世界に文明をもたらした神。地球の情報が収められたアーカイブから文明情報を解凍した存在。


 【貪欲の黒剣(ニーグルムエフシオ)】を人工冥界に収納した途端、それらの情報が一気に開示された。


 どういう理屈かは定かではないが、作り手の情報を読み取れてしまったのだ。


 これは同化の影響なのだろうか? 混乱する僕をよそに、コルバットが決闘の勝敗を告げる。

 

「決闘終了! カーンの勝利デス!」


 これで無事に決闘は終了というわけだ。結果は、僕の勝ち。


 ふぅ。さすがに疲れた。

 肉体のみならず精神的な疲弊もあって、僕はその場にへたり込んだ。シュトルムも疲労のあまり、床に突っ伏す。


 こうしていると、何だか青春物語みたいだ。


 王城の天井にはぽっかりと穴が空いて、青空が垣間見えている。


 ああ、綺麗だ。青い空は、大好きだ。


「そういえば、さっきの質問だけど」


 余韻に浸りながら、僕はシュトルムに尋ねた。


「さっき、僕に言ったよな。貴様に勇者を救えるのかって」

「ああ、言ったとも」

「その答えを言う前に、シュトルムの意見を聞きたい。

 ()()とは何なんだ?」



「我々は人間ではあるが、元を正せば、魔族だ。

 この世界に住まう者は皆、魔族の血を引いている」



「僕も魔族なのか?」

「そうだ。貴様もまた魔族の一員だ」


 僕もまた魔族。

 僕は、この世界で生きることを肯定されたように思えた。


「この世界で王になるということは、魔王になるということだ。

 魔王が暴虐を働くようであれば、勇者が魔王を討つ。

 魔王とは独裁者であり、勇者とは魔王に対する抑止力だ」

「魔族を統べる独裁者か」

「人間の定義など、純粋人間族ピュアヒューマンが勝手に決めたこと。

 余は魔族の王たらんとした。

 人間など下らん、生物皆、魔族であり、魔族として振る舞うべきだと」


 基本的には、この世界では書類仕事は純粋人間族ピュアヒューマンの担当だ。しかも純粋人間族ピュアヒューマンは絶滅危惧種指定されているので、その仕事には誰にも文句を付けられない。


 よって、純粋人間族ピュアヒューマンは勝手に「あれは人間、これも人間」と定義していき、最終的には魔族全員を『人間』として定義してしまったのだ。


 誰がどの程度の魔族として記憶と誇りを持つのかは、僕にも分からない。

 だけど、ちゃんとした魔族の記憶と誇りを持つ者からしてみれば、純粋人間族ピュアヒューマンという存在や、『魔族も人間である』というある種乱暴な定義は、目障り極まりないものだったのだろうと推測できた。


「……しかし、アリシアは純粋人間族ピュアヒューマンでありながらも、眩しく輝いていた」


 あ、うん。


 それって、あれじゃん。

 魔王が勇者に恋したってことじゃん。


 大体わかった。

 シュトルムの苦悩の原因が。


「余は人間などという定義を壊し、生物を魔族として定義し直すつもりだった。

 余の計画は頓挫した。他ならぬ純粋人間族ピュアヒューマンに惹かれてしまったのだからな」

「何に惹かれたんだ」

「圧倒的なパワーさ。声で元素を震わせ、神にすら影響力を及ぼす。

 余は惚れたのだよ。劣等種族たる純粋人間族ピュアヒューマンが神をも圧倒する姿に」


 まあ、今の純粋人間族ピュアヒューマンはフォノン天魔族だからしょうがないね。

 暗示を打ち破って覚醒したフォノン天魔族は、神殺しの才を帯びた種族だ。神とて手に負えるかどうか怪しい。


「あれだけの力の持ち主が埋もれてしまうとは、惜しいものだ。

 そう思ったのが運の尽きだったのかもしれん」


 気持ちは分からないでもない。

 シュトルムは言葉を続ける。


「結果、余は純粋人間族ピュアヒューマンに対してぬるい政策を打ち、構造の改革もできなかった。

 シロガネは気づいておったのだろう? 余の情けなさに」


「はい。勇者に恋い焦がれた魔王では正しい政治は出来ない。そう感じました」


「この通りさ。魔族の世界に人間など要らぬ。本来だったら純粋人間族ピュアヒューマンは世界の外に追放処分してもおかしくはない存在だ。

 しかし、余はアリシアを知り、それを実行できなくなった。

 純粋人間族ピュアヒューマンの中から現れたアリシアという突然変異体には、それほどの影響力があった」


 魔王とは因果なものだ。

 勇者に恋したらまともに政治も出来なくなる。



 だったら、こうしようじゃないか。



「僕が救うのは勇者だけじゃない」

「貴様、まさか……」


 僕はニヤリと笑った。



「勇者も魔王も、まとめて僕が救う。安心しろ」



 シュトルムは、ふっと笑った。


「正真正銘、余の負けだな」






●ステータス

 名前:カーン・オケ

 本名:system error(佐藤孝一?)

 LV:system error(測定不能)

 性別:男性

 種族:AaE限使

 職業:system error(無職?)

 HP:system error(692?)

 MP:system error(267?)

 SP:system error(572?)

 STR:system error(602?)

 VIT:system error(498?)

 DEX:system error(185?)

 INT:system error(125?)

 AGI:system error(356?)

 LUK:system error(112?)

 称号:system error(古代兵器級?)

 装備:星剣【蛇遣い座】

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾など

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、覇王闘気、覇王竜斬波、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース、貪欲の黒剣(NEW!)

 人工冥界居住可能人数:9/一世界

 世界所持数:1

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン


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