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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
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71話:血とミーム

それなりにグロテスクな描写が含まれるかもしれません。



 新約聖書にイナゴが出てくるのは、何ページ目だっただろうか。


 記憶が欠落していく。地球にいた頃の記憶が少しずつ消えていってしまい、上手く思い出せない。


 まあ、いいか。アバドンだろうが何だろうが、とにかく消し飛ばしてしまえば問題は無い。


 【射手座の光雨(サジット・レイン)】。


 光速を超えて放たれる矢は時空を越える。


 それは時間と世界の境界を越えて現れる超光速の自動追尾兵器群であり、その真髄は、時代を越えた狙撃だ。


 敵対者が何度時間を越えようが、何億何兆もの個体が時間遡行先をずらして遡行しようが、射手座の光はそれら全てを貫く。


 掲げた星剣【射手座サジタリウス】から天に光が放たれる。闇の彼方に発射された光はタキオンと混ざって時間を超越する雨と化し、機械のイナゴどもを全ての時間遡行先にて貫通・消滅させた。



 グレアムは、嗤っていた。

 光が降り注ぐ青空にて、地球人の成れの果てが、高らかに笑い声を上げていた。



「ハーッハッハ! 【元素外殻エレメント・シェル】を通じてデータは拠点に送っている! 地球が消滅しようがしまいがもう関係ねぇ! 俺の仕事は完遂だ!

 ――【黒蛇ニーズヘッグ】! 一足お先に俺は現世から離脱するぜ! お前さんたちも一緒に道連れだ!」


 生体AR機能に意識を集中させ、グレアムをスキャニングする。


 グレアムの体内から高エネルギー反応が検出された。あいつは、強烈な波長を放つ赤色の闘気を纏っていた。


「自爆する気か」


 そうはさせない。変神。人工冥界マスタールート最終形態ファイナルフォーム、部分的顕現。


 黄金の光に包まれた僕は、体内に宿す人工冥界を現世に解放した。


「お前と心中するつもりはない。――【ニヴルヘイム】」


 魂である量子を意図的に拡散させることで、世界と自我の混在化を引き起こす。


 一時的かつ限定的な量子観測効果が発揮され、現実が改変された。



 ()()()()()()()()



 具現化した人工冥界は周囲一帯を凍てついた都市に書き換え、グレアムの魂を捉えた。


「!? 動けねぇっ!」


 グレアムの表情に、初めて動揺らしい動揺が走った。



 冥界の都市は、氷の剣だった。



 氷の剣が積み重なって出来た都市。僕の魂に刻まれた情報世界に閉じ込められたグレアムは、抗議の声を上げた。


「おいおい、こいつぁどんな手品だ! 自爆を封じるなんてよぉ……こいつも新手のスキルなのか? ええ、【黒蛇ニーズヘッグ】よ!」

「スキルじゃない。ワールドだ」


 【ニヴルヘイム】は僕が体内に宿す人工冥界だ。


 規模こそ小さいが、これは紛れもなく世界そのものだ。この世界に捉えられた場合、レベルとスキルとステータスとアイテムの()()()()()()()()()


 どんなにレベルが高かろうが、どんなにスキルを持っていようが、どんなにステータスが高かろうが、どんなにアイテムを持っていようが、この一言で終わる。




 ワールドが ちがいます ▼





 人工冥界【ニヴルヘイム】に捉えられたグレアムは、強制的に相転移させられた。


 1メガトン相当のエネルギーが人工冥界【ニヴルヘイム】に吸収され、僕の糧となる。


 自爆を阻止された挙句に冥界の住民――すなわち死者と化したグレアムは、「けっ」と悪態をついた。


「最後の最後でトチるとはな! もういい、さっさと引導を渡してくれや!

 この世界は死んだら転生できるんだろ? 何度でも蘇って、お前さんに泥を舐めさせてやるよ!」


 まだ勘違いしているようだ。

 僕は青空に連なる氷の剣の上に乗り、グレアムに歩み寄った。


「心配するな。お前の魂は転生させない」


 僕は【無限加速宇宙アクセルコスモス】を右手に発生させた。


 光を発する球体状宇宙を見たグレアムは、自分の運命を悟り、唇の端を歪めた。


「くっ、くく……。なるほどなぁ。

 俺は、ここでもお前さんに負けたってぇことか」

「僕がお前に勝ったことがあったか?」

「あったさ! 適性検査の時にな!」


 適性検査。


 僕の頭の中で、幼い頃の記憶が蘇った。



 まだ僕たちが若かった頃、テラ・コンダクトで全実験体の適性検査が実施された。



 適性検査に参加して優勝すれば、何でも願い事が叶う。


 僕はその言葉を鵜呑みにして、適性検査に参加した。


 適性検査で優勝して、父親から認知されない母親を正式に認知させるのだと、息巻いていた。



 僕は、適性検査のゲーム部門で優勝した。

 代わりに、他の部門では負けまくった。総合部門では見事なまでの最下位だった。



 あの適性検査をきっかけとして、テラ・コンダクトの実験体はそれぞれの適性に合った職種へと羽ばたいていった。


 それは同時に、実験体同士の間で天才と凡人を分かつ儀式でもあった。最下位だった僕は日本に送られ、なんやかんやあって今に至る。


 僕は、グレアムに尋ねた。


「適性検査の時の敗北をまだ根に持っていたのか」

「お前さんは失敗作だったからな。成功作の俺が失敗作に負けたら昇進に響くんだよ。わかるよな? 傭兵市場における俺の値段が下がるんだ」

「『色々ありましたが、今日を機に過去を水で流しましょう』ってわけにはいかないか」

「当たり前だ。俺の値段に傷が付く」


 傭兵は、仕事を確実に実行できないと価値が下がる。

 雇用価格の低下は生死に直結する。誰だって犬死にはしたくないので、自身の価値は上げていかなければならない。


 全ては金のため。僕は尋ねた。


「そこまで自分の価格にこだわって、結局、お前は何をしたかったんだ?」


 グレアムは盛大に笑った。


「――女と金に決まってんだろ! 父親の後を継いで、各地で紛争を引き起こし、武器と食料を売る!

 引退したら、そうさな、スイスかオーストラリア辺りに引っ越して、子供たちに俺の後を継がせる。これが一番の安泰()()()のさ」


 僕は溜息をついた。


「血こそ全て――血縁至上主義か」

「血とミーム。どちらがこの世界に自分という存在の痕跡を残せるのか。俺は血を選んだ。お前さんはどうだ?」


 転生してからの僕は生殖能力を失った。


 とどのつまり、血を残すことが出来なくなったのだ。


 必然、ミームを残すという選択肢しか僕には取れない。


「僕は、この世界に血を残せない。

 僕は、この世界にミームを残すかもしれない」



「そうだろう? 血縁至上主義とミーム至上主義とでは、考え方が違いすぎる。和解など不可能なのさ。

 殺し合う、絶滅するまで戦い合う。これが俺たちとお前さんの運命だ」


 僕は【無限加速宇宙アクセルコスモス】をグレアムの眼前に近づけた。


「命乞いはしないのか?」

「俺の経歴に傷を付けたくないんでな。最後は傭兵らしく散りたいのさ」

「最後に言い残すことは?」


 グレアムは、ニィッと笑った。


「――あばよ、【黒蛇ニーズヘッグ】!」



 僕は【無限加速宇宙アクセルコスモス】をグレアムの顔面に叩きつけ、文字通りの意味で彼をこの世から消滅させた。




そろそろ第二章が終了します。




●ステータス

 名前:カーン・オケ

 本名:system error(佐藤孝一?)

 LV:system error(測定不能)

 性別:男性

 種族:AaE限使

 職業:system error(無職?)

 HP:system error(692?)

 MP:system error(267?)

 SP:system error(572?)

 STR:system error(602?)

 VIT:system error(498?)

 DEX:system error(185?)

 INT:system error(125?)

 AGI:system error(356?)

 LUK:system error(112?)

 称号:system error(古代兵器級?)

 装備:星剣【蛇遣い座】

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾など

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース

 人工冥界居住可能人数:8/一世界

 世界所持数:1

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン



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