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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
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66話:未来を過去にする


 再誕の恐怖をその身に宿して、僕はもう一度、この世界に生まれた。



『剣を取りなさい、カーン――』



 フラスフィンの声が聞こえる。



 地球人としての肉体を得た僕は、傍に突き立つ剣に手を伸ばした。



 星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】。



 純白の光を発しながら、僕は星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】を引き抜く。


 星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】を手にした瞬間、()()()の認識が合致した。


 ばらばらになっていたパズルのピースがぴったりと当てはまったような、そんな感覚が僕の魂を迸った。


 蛇遣い座のモチーフとなったアスクレピオスは、死者をも蘇らせる医神。その系譜を受け継ぐ星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】は、冥界の主が持つべき剣であり、()()()()()()()だったのだ。



 星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】は、本来あるべき主の元へと帰ってきた。



 それは、生まれてきたことを後悔する脆弱な命が、生を肯定してくれる力と出会った瞬間でもあった。



 僕は星剣【蛇遣い座(オフィウクス)】を振って白の光を払うと、現実世界に降り立った。



「ふぅ。肉体生成完了っと。

 ――って、体ちっさ!」


 僕は自分の体を見下ろして驚愕した。


 どうやら、キャラクターエディットシステムのバグの影響で少年期の体が形成されてしまったらしい。残念ながら、青年にもナイスミドルにもなれなかったようだ。

 どんなにサバを読んでも、精々が10代中盤、下手したら10代前半ぐらいの年齢だろう。完全に少年そのものだ。しかも肌がとても白い。虚弱体質っぽく見えるけど大丈夫だろうか? まあ、大丈夫だろう……多分。


「貴様、カーンか? 随分と見違えたぞ」


 ぼろぼろになった謁見の間で、シュトルムが息も絶え絶えといった体で告げる。


「僕は成長期なんだ。みんな、後は僕に任せてくれ」

「カーン殿、平気なのか……!?」

「平気だ。何の問題もない。そうだ、この剣を返しておくよ」


 フェリスさんの下まで歩き、【対魔殺戮剣デモンスレイヤー超絶限界加速式マキシマムフルスロットル】を返却する。


 うん、いいね。靴越しに床と絨毯の感触が伝わってくる。

 一歩(ある)く度に、地球人だった頃の感触を思い出していく。この調子で、地球人だった頃の感覚を思い出していこうじゃないか。


古代兵器アーティファクトというのはよくよく姿が変わるものだな」

「セイル先生こそ、変わりがなくて安心したよ」


 見た目少年のおっさんが年上の中年にタメ口を使うのは若干違和感があるシチュエーションだが、まあいいか。


 パーティメンバーのHPを管理するのは回復役の役目だ。

 冥界の主としての定めを受け入れた僕は、精霊魔法【リフレッシュヒール】を発動した。


 世界記述を超越した今の僕にはスキルの動作保証が無いので、全てでたらめだ。


 僕自身、今の僕の状態をよく分かっていないので、全ては想像に過ぎない。


 今の僕がスキルを発動すると、良くも悪くも効果がでたらめになる。


 回復魔法が攻撃魔法になるかもしれないし、攻撃魔法が回復魔法になるかもしれない。どういう仕組みで世界記述がスキルを管理しているのか分からない以上、どうしようもないのだ。


 なので、想像力で何とかした。


 今の僕の種族【AaE限使】は想像力に依存するらしいので、全てがでたらめになったスキルの不安定さを想像力で補った。


 【リフレッシュヒール】を発動した瞬間、パーティメンバー全員とシュトルムのHPゲージが瞬時に全回復した。

 本来の【リフレッシュヒール】にそこまでの効果は無いのだろうが、想像力で何とかした。とにかく想像力で何とかするのがAaE限使という種族なのだ。


 ちなみにAaE限使が魔法を使っても、何のエフェクトも出てこない。各種属性に対応した光も出てこないし、魔方陣すら出現しない。正直言うと、僕もこうなるのは想定外だった。


 案の定、その場にいるパーティメンバーは驚きまくっていた。


「なんだ、この力は!?」

「力が漲ってくる」

「遥か古の叡智――地の果てより来たる者、あるいは、【始原魔王】に由来する力か……?」


 やべーぞ。セイル先生から早速怪しまれてる。


 セイル先生に怪しまれると人体実験されそうな気配がするので、怪しまれないように次からは色が付いた光と魔方陣のエフェクトを入れておこう。


「いや、今のは僕の新しい力だ」


 かなり苦しい言い訳だったが、一応、この一言で皆は納得してくれたようだ。


 確かに、納得はしてくれた。だが、AaE限使に代表される規格外じみた力を無闇に行使すると、やはり原住民に多少なりとも感情を喚起させてしまうようだ。

 地球の日本では、規格外の行動は周囲に警戒心を発生させる。警戒心は疑心暗鬼を生み出し、出る杭は打たれるようになり、最終的には魔女狩りさながらの光景が繰り広げられることも珍しくはない。日本という環境ではそういうパターンに陥りがちだったので、僕は少し怖気づいた。



 ……こえーな。力っていうのは、使うだけでこんな心理的影響を及ぼすのか。



 僕は内心の動揺を鎮めると、フラスフィンの背後で涙ぐむエミルちゃんに視線を向けた。


「ごめん、エミルちゃん。もう心配は要らないよ」

「カ……カーン様ぁ!」


 エミルちゃんは僕に抱きついてきた。


「本当に、本当に、大丈夫なの!?」

「うん、大丈夫。大丈夫だ」


 僕はエミルちゃんの頭を撫でた。


 今まで色々とあったので、姿が変化しまくるのはお互い慣れっこだ。僕が純粋人間族ピュアヒューマンに近い構造の肉体になっても、特に抵抗も無いのだろう。



 大丈夫だ。

 もう泣かせはしない。



 フラスフィンさんの前に立つ。


 言葉は要らない。


 お互いに頷き合うと、僕は上空の【恐怖テラー】を見据えた。



「決着を付けよう」



 スキル【未来集約ギャザーフュチャー】は、【過去集約ギャザーパスト】に変わっていた。



 今の僕は、未来地平を越えた場所に立っている。



 スキル【過去集約ギャザーパスト】、オン。

 白蛇神・第一使徒【恐怖テラーと】第二使徒【裏切り(ビトレイヤル)】の行動と心情を検索し、表示せよ。



 検索結果出力完了。



 ――なるほど。


 【裏切り(ビトレイヤル)】。確かに、お前の想像通りだ。


 イリシャに変神の力を使って以来、僕は変神に罪悪感を覚えるようになった。自身が取れる選択枝の中から、無意識の内に変神という選択肢を除外していたのは否定できない事実だ。


 僕は僕の良心に従って行動する。けれども、強大な力の行使は、自己の良心を容易く麻痺させる。


 圧倒的な力は、制御などできやしない。なぜなら、どんなに制御したとしても、強大な力は無自覚の内に周囲の人間を変容させてしまうからだ。


 この状況は、僕の未熟さが招いた事態だ。それは僕自身がよく理解している。これからは、責任を以て力を使うことにするよ。




 聞け、【恐怖テラー】よ。

 



「これから行う変神は、お前たちを倒すために使うものだ。

 ――よく見ていろ。これが、僕の在り方だ」




 僕は星剣を振ると、青空に向かって()()()




「――変神!」





●ステータス

 名前:カーン・オケ

 本名:system error(佐藤孝一?)

 LV:system error(測定不能)

 性別:男性

 種族:AaE限使

 職業:system error(無職?)

 HP:system error(692?)

 MP:system error(267?)

 SP:system error(572?)

 STR:system error(602?)

 VIT:system error(498?)

 DEX:system error(185?)

 INT:system error(125?)

 AGI:system error(356?)

 LUK:system error(112?)

 称号:system error(古代兵器級?)

 装備:星剣【蛇遣い座】

 所持品:雷電器官、元素硬化爆弾など

 特徴:AaE限使の能力はAaE限使自身の想像力に依存する

 スキル:system error(存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、思考超加速、無限加速宇宙、過去集約、主人公交代、幼き日の光、AaE開花進化など)

 人工冥界:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース

 人工冥界居住可能人数:8/一世界

 世界所持数:1

 パーティ:【安らかなる旅路】に所属

 パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン


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