正々堂々
色々なキャラの視点が混じった特殊な形式です。
ダウングレードしたフラスフィンが所持するスキルの数は少ない。
理由としては、勇者活動を始めた頃の肉体を使用しているためである。
それ故、現状におけるフラスフィンの主たる武器は『味方の指揮』であった。
「イリシャに命令を下します」
ヴァラド国軍の現状を推測したフラスフィンは、イリシャに命令を与える。
「素材を集めて【聖水】を作り、ニューウェーバーと合成させなさい。
聖水効果が付加された剣で、首都の亡霊を成仏させなさい」
「は!? 今から素材を集めるの!? っていうか、錬金星剣自体を合成するの!?」
【聖水】は、水系素材と祝福素材と容器系素材を合成すれば作成できる。
製法自体は簡単だが、相当な無茶振りだった。普段ポンポン使用している異次元が【恐怖】に封じられたも同然の状態にあるので、仕方が無いと言えば仕方が無いのだが、無茶振りにも程がある。
(待って、待って! 井戸から水を汲んで、祝福付きの札を持ってきて、容器も用意!?
容器は動物の骨か植物で代用するとして――あ、でも水を入れる容器が無い!?
水用の容器も採取して、聖水を合成して、更に聖水と錬金星剣を合成!?!? 移動時間も採取時間も何もかも足りないわよ!?)
頭の中で必死に素材の在り処と調達法を計算するイリシャの傍らで、フラスフィンはシロガネに命令を与える。
「シロガネに命令を下します。剣刃翔機にイリシャを乗せて、素材採取を手伝いなさい」
「承知しました」
「あ、それなら移動時間は短縮できるわね。――って、これに乗るのぉ!?」
剣刃翔機は浮遊する剣であり、遠隔操作できる板でもある。
地球のスノーボードと同じ要領で人が乗れるため、移動手段として使える。
シロガネは魔法を唱えた。魔力でイリシャの足と剣刃翔機をしっかりと固定し、発射準備を整える。
「準備はよろしいですかな?」
「待って、心の準備ができてな」
「シロガネ。発射しなさい」
「発射しますぞ」
「――もうどうにでもなれぇ!」
イリシャを乗せた剣刃翔機が飛翔するや否や、王城の窓を突き破り、素材採取の旅に向かう。
「コルバットに命令を下します。シロガネの剣刃翔機と共に上空を見張り、【精神会話】で適宜状況を報告して下さい」
「了解デス!」
「シロガネはイリシャの後に続きなさい。現地で行動するイリシャの要請に応えるのが貴方の役目です」
「承知しました」
深々と頭を下げると、シロガネは自身とコルバットを乗せた剣刃翔機を空に発射した。
「ちぃっ! フラスフィン! 何を手間取っている!」
フラスフィンが指示を出している最中であっても、敵の行動が止まるということはない。
彼女が指示を下す間に誰が【恐怖】と戦うのかと言うと、勿論、シュトルムである。
星剣【蛇遣い座】と【貪欲の黒剣】が激突する。
2メートルを越す大剣同士がぶつかり合い、火花を散らす。
「セイル殿、加勢だ! 加勢するぞ!」
「殴り合いは趣味ではないのだがな」
シュトルムと【恐怖】が繰り広げる剣戟の合間を縫い、フェリスとセイルが【恐怖】の顔面を殴りつける。
鍛え上げた筋肉のパワーが元素外殻を通じて【恐怖】に伝わった。
元素外殻の操縦者たる【恐怖】は右腕を振ってフェリスとセイルを弾き飛ばす。
「全く、面倒な連中だ」
【恐怖】はフラスフィンの背後に意識を定め、転移した。
司令塔たるフラスフィンを潰せば戦線が瓦解する。そう踏んでの転移だった。
しかし、フラスフィンはスキル【暗殺無効】を所持している。奇襲、不意打ちの類は通用しない。
転移を弾かれた【恐怖】は、元の座標に実体を結び直すと、シュトルムの斬撃を星剣【蛇遣い座】の刀身で防いだ。
(転移自体を防ぐとは、どういう理屈だ?)
スキル【暗殺無効】は、奇襲・不意打ちに対しては絶対防御として機能する。
つまるところ、【暗殺無効】とは、敵対者を強制的に正々堂々と戦わせるスキルと言える。
【恐怖】は元よりこの世界の仕様に疎い。彼は開き直った。
「七面倒くせぇ。力ずくでやっちまうか」
元素外殻の右掌部に搭載された【掌部加速元素線発射装置】に紫の光が集中する。
【加速元素線】は、元素を加速して発射する現象だ。
いわゆる、ビームである。
「!」
【恐怖】の右掌部から加速元素線が発射された瞬間――
莫大な化学反応を引き起こし、謁見の間を大爆発が襲った。
●ステータス
名前:フラスフィン
LV:1
性別:女性
種族:system error
職業:system error
HP:100
MP:0
SP:200
STR:100
VIT:100
DEX:300
INT:0
AGI:200
LUK:0
装備:人工なる破滅の杖、神帝のローブ
スキル:暗殺無効、味見、棒術
称号:system error
ステータスポイント:0
スキルポイント:0