58話:世界を搾取する者
精神的にショッキングかもしれないシーンが多分に含まれます。
ピコン。
『人工闇竜・成体に進化します。
成体進化記念、特別措置実行。進化用養分として消費する項目を選択して下さい』
おや。進化の時間だ。
成体進化記念として、進化用養分として使う項目が選択できるようになったらしい。
メニューを開いてみよう。
『ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:10
性別:男性
種族:人工闇竜・成長体
職業:無職
HP:517
MP:257
SP:472
STR:481
VIT:398
DEX:225
INT:355
AGI:256
LUK:297
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神、巨乳美女を警戒する、古代兵器級、地雷屋さん
隠し称号:神帝から観察されている
装備:リスタルサーク、リスタルサーク
所持品:雷電器官、奈落の種子
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、鼻伸ばし、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、無限加速宇宙、未来集約、主人公交代、幼き日の光、AaE開花進化
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク、ピノッキオンズ・アビスアース、ピクシー・アビスウィンド、スライム・アビスウォーター、スライム・アビスアース、クラッツバイン、ザンダーバイツ、ケトゥアローウァ、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース
存在ストック上限:13/50
パーティ:【安らかなる旅路】に所属
パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン
隠し効果付与:神帝の観察』
どの項目を進化用養分に変換しよう。
レベルは10から1にしよう。再びレベルを上げていく楽しみがある。
サラマンダーに代表される精霊種は、【精霊魔法】を使う上で必要になるので残しておく。
ピノッキオンズ・アビスアースとピクシー・アビスウィンドとスライム・アビスウォーターとザンダーバイツとケトゥアローウァを進化用養分に変換するか。彼らと同化して得たスキルはそのまま残しておく。
スキルは、【鼻伸ばし】を養分に変換しよう。
隠し効果と称号も進化用養分に変換するか。ヘイ、フラスフィンさん、隠し効果と称号も進化用養分に変換できるの?
ピコン。
『肯定。可能です』
フラスフィンさんが答えてくれたので、躊躇なく隠し効果と称号を養分に変換する。
すっ……。
僕に纏わりついていた魔力が消えたような感触が魂の上を走った。
こんなもんかな。
進化しまーす。
緑の風にしてフラスフィンさんの魂の一部である【進化の風】に包まれ、僕は光の繭に包まれた。
「うひゃっ! 何事デスカ!?」
「進化だ」
「おお! 進化か!」
「カーン様に翼が――」
「幾ら何でも成長早すぎない!? この成長速度、異常よ!」
「ほうほう。興味深いですね」
パーティメンバーや審判が騒然とする中、僕の魂は闇に落ちていく。
闇?
僕は一瞬、ぞっとした。
なぜだ。進化とは上昇ではなかったのか?
『拾い上げなさい。自分の記憶を』
僕は疑問に感じながらも、フラスフィンの声に導かれるまま、闇の大海を潜り続ける。
光の中から暗闇の中に落ち、落ちて落ちて落ちて、底に手を伸ばす。
記憶の闇の海で、僕は遂にそれを拾い上げた。
それを拾い上げた瞬間、僕の魂に地球の記憶が逆流してきた。
――ああ、またか。
僕は、勘違いをしていたことを悟った。
僕は、バラバラだった。
今生を生きてきて、何度か疑問に思ったことがある。
僕はあまりにもバラバラな記憶を持っている。なぜここまで一貫性が無く、脈絡が無いのか。
僕を見た誰もが口を揃えて言うだろう。矛盾している。一貫性が無いと。
ある時は食品会社の営業員。
ある時は結婚詐欺師に騙された男。
ある時はハーレム拒否を信条として掲げる者。
ある時は宗教家。
ある時は無垢な少年。
ある時は無慈悲な死を与える者。
ある時はゲーマー。
ある時はハッカー。
ある時は狙撃兵。
ある時はドローン兵。
ある時は地球を何度も救った英雄。
ある時は狂言回し。
ある時はどこにも居場所の無い人間。
それらの記憶は、生前の僕が瀕死の重傷を負う度に移植されたものだ。
バラバラな記憶の正体は臓器に宿る記憶であり、転生時に混在し、一緒くたになってしまったもの。
それらの記憶全ては嘘偽りでもなければ矛盾でもなく、事実であり、真実だった。
僕はなぜ【奈落の種子】に汚染されないのか。
答えはシンプルだった。生前に【奈落の種子/楽園の種子】を移植されていたためだ。
元から汚染され切っている人間に改めて【奈落の種子/楽園の種子】を寄生させても種子の特性が発現しない。フラスフィンさんが言った「地球の魂は【奈落の種子】に汚染されません」とは、そういう意味だったのだ。
僕はバラバラだ。
ある時は食品会社の営業員。
ある時は結婚詐欺師に騙された男。
ある時はハーレム拒否を信条として掲げる者。
ある時は宗教家。
ある時は無垢な少年。
ある時は無慈悲な死を与える者。
ある時はゲーマー。
ある時はハッカー。
ある時は狙撃兵。
ある時はドローン兵。
ある時は地球を何度も救った英雄。
ある時は狂言回し。
ある時はどこにも居場所の無い人間。
それら全ての記憶を持つ人間。
地球の管理者の血を引く凡人が【奈落の種子/楽園の種子】を移植され、無理やり兵士に仕立てあげられ、何度も何度も敵地を工作・爆破・爆撃しては各勢力から危険視され、幾度と無く暗殺されかけた人間。
あまりにも体を切り刻まれ、手や足や腕や臓器を失い、多くの人間の臓器を移植され、血を注入され、何度も何度も何度もそれを繰り返し、痛みと恐怖のあまり、精神が幼児退行化した人物。
その人物は超人でもなければ天才でもない。
超人は、体を切り刻まれても痛みを克服し、任務を完遂する。
天才は、体を切り刻まれても痛みを耐え抜き、任務を達成する。
凡人は、体を切り刻まれすぎた末に痛みに耐え切れず、安らかな死を選ぶ。
ありきたりな凡人。
凡人代表。
テラ・コンダクトの管理者が愛人に生ませた、【奈落の種子/楽園の種子】移植用の実験体4番。与えられた仮の名前は、佐藤孝一。
あまりにも弱すぎるがために、他の存在を取り込まなければ生きていけない存在。
僕はようやく、生前の僕が何者であるのかを思い出した。
自己の定義は更新された。
僕の掟は極めて利己的だ。自分の良心が痛まないために子供たちと世界を守る。自身を裏切らない相手を花嫁として選ぶ。安らかな死を迎えるために動く。
全て利己的だ。これを利己的と言わずして何と呼ぶのか?
生前叶わなかった願いを叶えるためだけに転生した凡人。
剥き出しになった世界に対して、抑圧され続けた自我を解放した醜悪な存在。
僕はそれを口にした。
「僕は、そういう人間だ」
そうとも。
僕はこの世界を搾取するために生まれてきた。
僕は、侵略的外来種だった。
闇が渦巻く記憶の大海から浮上し、僕は光に浮上する。
全ては、光を手にするために。
薄光が魂を満たし、僕は現実世界に帰還した。
視界に表示されるメニューには、下記の文章と数値が記載されている。
『ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:1
性別:男性
種族:人工闇竜・成体
職業:無職
HP:692
MP:267
SP:572
STR:602
VIT:498
DEX:185
INT:125
AGI:356
LUK:112
称号:古代兵器級
装備:リスタルサーク、リスタルサーク
所持品:雷電器官、奈落の種子
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔(NEW)、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、無限加速宇宙、未来集約、主人公交代、幼き日の光、AaE開花進化
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース
存在ストック上限:8/50
パーティ:【安らかなる旅路】に所属
パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン』
レベルを養分に変換したせいか、ステータスが変動している。DEXとINTとLUKが大幅に低下したようだ。
しかし、中には上昇しているステータスもある。どうやら進化するとステータスが増減するものらしい。
おや? 背中に違和感がある。背中に意識を集中すると、何やら動くではないか。
ぐぐっ、と力を込めて、解放する。
背中に生える何かが、思い切り広がった。
翼だ。
翼が生えてきたのだ。
――ありがとう。これで、もっと世界を搾取できる。
僕は、体内の電気を増幅させた。
進化おめでとう……? と言っていいのでしょうか。作者も困惑する主人公の境遇。
●ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:1(NEW!)
性別:男性
種族:人工闇竜・成体
職業:無職
HP:692
MP:267
SP:572
STR:602
VIT:498
DEX:185
INT:125
AGI:356
LUK:112
称号:古代兵器級
装備:リスタルサーク、リスタルサーク
所持品:雷電器官、奈落の種子
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、竜の飛翔(NEW)、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV10、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、治癒、マグマシールド、サンダーシールド、強酸化、表面体液、水圧波、自己電気制御、マグマプロージョン、サンダーストーム、リフレッシュヒール、合体、集束太陽光、スキル交換、スキル譲渡、異次元収納LV10、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、無限加速宇宙、未来集約、主人公交代、幼き日の光、AaE開花進化
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク、スライム・アビスアース、クラッツバイン、サラマンダー・アビスファイア、ウンディーネ・アビスウォーター、シルフ・アビスウィンド、ノーム・アビスアース
存在ストック上限:8/50
パーティ:【安らかなる旅路】に所属
パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン