14話:この世界の始まりっぽい何かの説明
仮面を外したエミルちゃんは――
美少女でした。
そらもう、絶世の美少女でした。
うん、ちょっと違うな。美幼女だ。年齢的に幼女だから美幼女。どうよ、この完璧なセンス!
ごめん。僕、やっぱセンスないわ。
ごほんごほん。とにかくも、あれだよあれ。
目鼻立ちが整ってらっしゃる! お肌はつるつるすべすべで色白だし、瞳の色は真紅だよ! ブロンドの髪とマッチしすぎ!
てかさ。
なんでエミルちゃんも額に宝石埋め込んでんの?
しかも黄金色に輝いていてちょっと後光みたいだわ! イヤー、眩しい! 君の若さが眩しい!
思わずのけぞる僕に、フェリスさんがフォローを入れてくれた。
『驚かせてしまったようですまない。
実は我々は、純粋な人間族ではない。竜人族なのだ』
ド……竜人と来ましたか。
シミュレーションゲームの《アイスエムブレム》にもドラゴニュートっぽいキャラいたなー。あっちは宝石を使って竜に変身してたっけ。
『私たちの額に備わるこの宝石は、【竜眼石】と言う。
この【竜眼石】は、私たちが竜人族であることの証左なのだ』
へー。そうなんだ。スナックあったらポリポリ食べていたい気分。
で、それで何か問題でも?
『我々が住まう《リレイン国》は――竜人族の国だった。
代々の国王は、六竜神が一柱【黄金竜神】の血を引く竜人族であり、国に仕える貴族もまた、六竜神の末裔たる竜人族だった』
人間はいないんですかね。
疑問に思って尋ねてみた。
『人間族はいないのか?』
エミルちゃん、目をキラキラと輝かせて言った。
『うんっ! 純粋人間族はね――家畜なんだよ!』
う
うわあああああああああああああああああああああ!!
やばい! とんでもない世界に転生してしまったぞ、僕!
よりにもよって人間族が家畜とは! やばすぎるだろ、この世界!
『黄金竜神様が世界を創造した時、最初に作った試作生物が純粋人間族なんだ!
それでね、次にエルフ族、ゴブリン族などを作った後、最後に竜人を作ったんだ!
だからね、竜人族が生物としての完成形なんだよ!』
やべぇ。
エミルちゃん、種族の説明する時、めっちゃ輝いてる。ダメな方に輝いている。
矯正するなら今しかない。
今の内に、人間族とは仲良くするべきだと教育するしかない。そうじゃないと、「自由を求めて反乱するぜヒャッハーディストピアは破壊だー!」的な人間勢力が生まれかねん。
つーかよくそんな国が今まで存在できたな! 存在自体が奇跡だわ!
フェリスさんはなぜか拳(ガントレット付き)をぎゅっと握り締めて宣言した。
『何を隠そう、私も【光竜神】の末裔! ウェイン公爵家の一人娘にして、次代ウェイン公爵なりッ!
しかもッ! 私は生まれた時から光の精霊の加護を受けているッ! 騎士の中でもエリート中のエリート、キングエリートなのだッ!』
そこ、自慢するところなの!?
――わからん。フェリスさんの感性がまるでわからん。
フェリスさん、言うだけ言うと、今度はいきなり意気消沈した。
『リレイン国は竜の血を引く王の統治によって栄華を極めていた。
だが……ある日、リレイン国は陥落した』
いきなり話が吹っ飛んだな! 脈絡なくね!?
『【白蛇教団(ハクジャキョウダン】》を名乗る組織に襲撃され、国王は崩御なされ……。
かろうじて襲撃を免れた私は、大臣よりエミル王女を託され、亡命中の身にある』
過去を回想しているのでしょう。フェリスさんは涙を流していらした。
よくある話だなー。
つーか白蛇教団って、竜人族に弾圧された人間の勢力か何かじゃないのか? そうだとしたら自業自得だぞ。
とりあえず、同情しているという姿勢を表すため、ナイトメア君の頭を頷かせておいた。
フェリスさん、僕の下半身(ナイトメア君)の前足をガシッと握って何度も頷いた。
『分かるか! 分かってくれるのだな!? おお、友よ! これほど嬉しい日はないぞッ!』
あ、うん。君の気持ちは分かるんだけどさ、ガントレット付きの手でナイトメア君の前足を握り潰そうとするのはやめて欲しい。ナイトメア君が謎の甲冑着込んでるとは言え、君の握力でHPゲージ減ってるんで。
あっ、HPゲージが赤色になった。
フェリスさん。
君、握力強すぎ。
●ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:2
種族:不明
職業:無職
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神
スキル:存在同化、自動翻訳、情報把握、地属性耐性、疾走撃、その他色々なスキル、傲慢LV1、同化存在解放
存在ストック:ナイトメア
存在ストック上限:1/3
パーティ:フェリスのパーティに所属