フラスフィン視点:侵略汚染開花世界・地球
フラスフィン視点です。
――フラスフィンは不意に、違和感を覚えた。
誰かにコントロールされているような感覚。意図せぬ方向へストーリーが進んでいるような、超常的遊離感。
この感覚には覚えがある。
首都ゴルバンへの転移の最中、フラスフィンは一冊の書物を開いた。
森羅万象のストーリーが全て記されているその書物には、自分が今辿っているルートの結末が記載されている。
現在の自分が辿るルートは、2話前で分岐が発生したルートだ。ラストページを開いてみると、このルートが辿り着く先は赤色。赤の未来地平に通ずる、デッドエンドルートだ。
間違いない。フラスフィンは確信した。
世界記述の強制力によって、ストーリーがコントロールされている。それが意味するところは一つ。世界記述が奈落の種子に汚染されているという事実だ。
フラスフィンはストーリーに干渉する影響力の発生源を探った。放出された探査用意識が無数に枝分かれし、各時代と並行世界を超光速で走査する。
ヒット件数――無し。
フラスフィンは思案した。
思うところがあり、地球に探査用意識を発射する。
ヒット件数――3299件。
反応あり。
地球の未来が奈落の種子で汚染されていた。
地球世界の未来地平に探査用意識を伸ばす。
未来地平の終焉に蠢く物が一つ。一個の巨大生命体と化した地球だ。
黒く塗り潰された未来地平には、異世界に奈落の種子を放出拡散させる【侵略汚染開花世界・地球】の姿があった。
――地球には地球の魂で対抗する必要がある。
フラスフィンは首都ゴルバンへの転移を完了させた後、カーンにこの世界の現状を伝えることを決めた。
次話は一人称視点(カーン視点)に切り替わります。