13話:【異次元収納】が欲しくなってきました
結晶迷宮という名前の癖に、地底湖は割と普通だった。
全面鏡張りの地底湖を想像していたんだけど、実際にはフツーの地底湖だった。
至って普通の鍾乳洞です。はい。幻想的と言えば幻想的なんだけど、僕的にはそろそろフィールドマップ的な場所に出ていきたいです。
『到着した。ここを野営地とする』
フェリスさん、巻物を取り出した。
バッと広げた巻物から黄色い魔方陣が浮かび上がり、地底湖の傍にテントっぽいものを出現させた。
フェリスさん、自信満々に「フフッ」と微笑んでみせた。
『【簡易住居作成】の巻物だ。驚いただろう?』
へぇぇぇぇぇ、そんなことも出来るんだ!
しかしそのドヤ顔、その自信は、一体どこから出てくるんだ? 謎すぎるぞ。
エミルちゃんが僕の前足をちょんと引っ張った。
『カーン様カーン様、フェリスはね、この世界の技術を自慢したいんだよ。気を悪くしたらごめんね』
エミルちゃんの解説に助けられた。
しかし、幼女にフォローされる女騎士とは一体何なのか。哲学的疑問を抱えつつも、僕はフェリスさんとエミルちゃんに誘われるまま、謎テントの中に入っていった。
意外にもテントは僕の体がすっぽり収まってしまった。しかも内部はやたらと広い。やたらとファンシーな敷物が敷いてあったり、ベッドとかランタンとか鍋とか置いてあるし、明らかに物理法則無視してるよね、コレ。
『これは【異次元収納】というスキルの応用でな。外見は原始的かもしれないが、内部はこの通り。
持ち込める道具や生物の数に上限こそはあるが、工夫さえすれば、色々な道具を詰め込めるというわけさ』
例によってフェリスさんがドヤ顔で解説してくれた。
あれか。魔法のテントか。小さいナリして内部はめちゃんこ広い系のテントか。
しかし【異次元収納】かー。欲しいな、そのスキル。どのモンスターと同化したら入手できるんだろう。
僕がきょろきょろとテント内を物色していると、エミルちゃんがそわそわし出した。
『ねぇ、フェリス。そろそろ仮面外してもいい?』
『エミル王じ……いや、エミル! 本当にいいのか!?』
また王女って言おうとしたー。この女騎士さん、機密情報の扱い大丈夫? 僕が人事担当だったら絶対に指揮官にはしないぞ。
『カーン様に隠す必要は無いから。
カーン様には見て欲しいの。あたしの素顔を』
フェリスさん、その言葉を聞いて、一瞬だけ凄く緊張した。ミラーニューロン的作用が働いて、僕も緊張してしまった。
謎の緊張を経た後、エミルちゃんは仮面を外してくれた。
●ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:2
種族:不明
職業:無職
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神
スキル:存在同化、自動翻訳、情報把握、地属性耐性、疾走撃、その他色々なスキル、傲慢LV1、同化存在解放
存在ストック:ナイトメア
存在ストック上限:1/3
パーティ:フェリスのパーティに所属