表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
126/240

50話:全てが滅びた後に遺せるもの


「今から1年後、私はこの世界を破壊し、【攻撃特化型世界】として再創造します。

 また、1年ごとに【概念集束剣イデアソード】を発動する予定です。

 【概念集束剣イデアソード】は3回に渡って発動します。最初は錬金術、次いで、剣。次いで、魔法。使用可能な概念は1年ごとに減っていきます」



 セイル先生は目を細めた。

 イリシャは顔を引き攣らせていた。

 フェリスさんとエミルちゃんは唖然としていた。


 僕は、【未来集約】を発動させた。


 未来地平検索。全てのルートの結末を簡潔に表示せよ。



 検索結果出力完了。

 他のルートの結末を見た僕は、フラスフィンさんの意図が何となく分かった。


 フラスフィンさんは、どのルートにも存在しないルートを選択したのだ。この世界を破壊し、【攻撃特化型世界】としてやり直すというルートを。


 全ては破壊される。剣も魔法も錬金術も破壊される。その上で問われる。


 なぜ、剣と魔法と錬金術、ひいては世界と関わらなければいけないのか?



 存在を証明するためだ。



 何一つ手元に残らないとしても、僕たちは存在を証明し続けなければならない。



「闇竜神候補者、カーンよ。貴方に命令を下します。

 勇者と魔王を育成し、闇竜神になりなさい」


「なぜ我輩にそのような命令を下す?」


「貴方以外に出来る者がいないためです。

 【テラ・コンダクト】の元ハッカーよ、貴方なら出来るでしょう」


 僕は内心、苦い気持ちを抱える羽目になった。

 まさか異世界に転生してまで【テラ・コンダクト】の名を聞けるとは思わなかった。


 そうだな。

 まあ、そうなるよな。


 僕は割と、人の生死に頓着が無い。


 僕が守りたいと願うものは、逆境に遭いながらも、なおも未来に進もうとする意志だ。 


 僕はフラスフィンさんの神経に敬意を表し、命令を受諾した。


「承知」


 フラスフィンさんはセイル先生とイリシャに視線を向けた。


「セイル・ラザム、イリシャ・フィームよ。

 両名ともに、カーンの指揮下に入りなさい。これは風竜神としての命令です」


 セイル先生は眉根を寄せた。


「これはもしもの話なのだがな……。

 もしも、仮に私がカーンの指揮下に入らなかったら、どうなる?」

「全てが滅びた後、この世界に遺せるものを考えなさい」

「なるほど」


 セイル先生は唇の端を歪めた。

 それは、新たな主を見つけた喜びから来るものだった。


 セイル先生は勢いよく跪き、頭を垂れる。


「――御意。風竜神のめい、このセイル・ラザムがかと承りました」


「りょ……了解です!」


 イリシャがぎこちなく返す。


 フラスフィンさんは微笑んだ。


「では、フレンド申請をします」



 ええ……? ここは神様がフレンド申請してくる世界なの? 僕はカルチャーショックを受けた。



 ピコン。


『フラスフィンからフレンド申請されました。承認しますか? イエス/イエス』


 イエスの項目しかないんですが。

 フラスフィンさんはお茶目だなぁ、ハハハ。



 ぽちぽちとイエスを押す。ふと思い立ち、この場にいる全員にフレンド申請を送ってみた。


「カーン殿からもフレンド申請が届いているのだが」

「承認しておくね」

「まあ、いいだろう」

「仕方ないわね!」


 MMORPGでよくあるシチュエーションだ――誰かがフレンド申請したら、皆がフレンド申請しまくる。MMORPGで死ぬほど見慣れた光景だった。


 こうして僕は、皆とフレンドになった。


 早速、メニューのフレンドリストを開いてみた。



▼ フレンドリスト ▼


フェリス・ウェイン:ログイン中@ヴァラド国なら安心だ

エミル・リレイン:ログイン中@トウマ君、どこにいるんだろう?

セイル・ラザム:ログイン中@イリシャが勝手な行動をして困る

イリシャ・フィーム:ログイン中@錬金騎士に転職したい!

フラスフィン:ログイン中@ログアウトまで残り1年




 MMORPGで死ぬほど見慣れた光景が広がっていた。

 どこまでMMORPG風味にすれば気が済むんだと僕は心の中で突っ込んだ。


 僕らとフレンドになったフラスフィンさんは言った。


「フェリスよ。パーティを解散しなさい」

「りょっ、了解いたしました!」


 フェリスさん、緊張しすぎて噛んでる。


 分かるー。緊張するとこうなるよねー。


 パーティが解散され、僕たちは野良になった。


 フラスフィンさんは言った。


「カーンよ。パーティを作成しなさい」


 ええー!? 僕がパーティ作るのー!?


 フッ、しょうがない。惚れた弱みだ。メニュー開いて、えーっと、これかな? パーティ作成。ぽちぽちー。


 ピコン。


『パーティ名を決めて下さい』


 しまった! パーティの名前なんて考えてなかった!


 皆が僕を見つめている! えーと、どうしよう。どんな名前にしようかな。【マグロアタック】、【魚介類バンザイ】、【ヤドカリ名人アルティメット】、【マツヤとノアの箱舟】、【ポテトウィンド】、【あしたのナーガラージャ】、【猫派VS犬派】、【きのこ派VSたけのこ派】、【特攻野郎AAAチーム】、【むせる】、【てきとう】などなど……候補を挙げればキリが無い。


 ここは初心に帰るべし。僕は安らかに死にたい。良し! こいつで決まりだ!


 ピコン。


『パーティ【安らかなる旅路】を作成しました』


 ほいっ。皆をパーティに招待っと。


 ピコン。


『イリシャ・フィーム、フェリス・ウェイン、エミル・リレイン、セイル・ラザム、フラスフィンがパーティに参加しました』


 よし! 【安らかなる旅路】に5人の仲間が加わったぞ!


 さーて、どうしようかな♪ 今後の妄想が捗るぞ♪


「まずは眠りなさい。今日一日で大変な思いをしたはずです。

 適切な休憩を取り、明日に備えなさい」


 あ、はい。


 フラスフィンさんに命じられるまま、僕たちは布団で寝たのだった。







 世界破壊まで、残り365日。






●ステータス

名前:カーン・オケ

本名:佐藤孝一

LV:1

種族:人工闇竜・成長体

職業:無職

称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神、巨乳美女を警戒する、古代兵器級、地雷屋さん

隠し称号:神帝から観察されている

スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV5、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、異次元収納LV10、鼻伸ばし、地雷操作、ゲーマー魂覚醒LV2、無限加速宇宙、未来集約

存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク、ピノッキオンズ・アビスアース

存在ストック上限:3/30

パーティ:【安らかなる旅路】に所属(NEW!)

パーティメンバー:フェリス、エミル、イリシャ、セイル、フラスフィン

隠し効果付与:神帝の観察


  スキル      発想値

『《スキル交換》  50/100』

『《スキル譲渡》  50/100』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ