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転生したら棺桶でした  作者: 半間浦太
第二章:棺桶の就職
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時間遡行:ミゼルローンからの逆介入


 時間遡行じかんそこう

 それは、時を遡る魔法だ。



 時間遡行先は、六竜歴1557年12月19日。

 カーンが生まれてから3日目の日だ。



 光を超えて時空洞じくうどう内を飛翔するフラスフィンの前に、敵意が立ち塞がった。



「貴様、何を転生させた?」



 時間遡行が強制的に遅延させられた。六竜歴1557年12月19日に存在する生物から、逆介入されたのだ。


 

 フラスフィンの時間遡行が遅延した瞬間を狙い、白のローブを纏った青き髪の少女が現れる。



 慈悲の神帝にして水竜神、ミゼルローンだ。

 彼女はこちらの魔力波長に合わせて、自身を少女として顕現させたようだ。

 

「貴様には以前から問い質したいことがあった。今度こそ答えて貰うぞ」


 時の門番の如く振る舞うミゼルローンは、すっと深呼吸した。時空洞じくうどう内に空気は無いのだが、何となく感覚でやっているのだろう。


 ミゼルローンは息を吐いて、告げる。


「我は今まで、ずーーーっとカーンを観察してきた! 【神帝の観察】の効果を経由して、魂の表層記憶まで遡って調査させて貰った!」

「そこまでいくとストーカーじみているのでは?」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 ミゼルローンは怒った。


「うるさい! われが先にあやつを見つけたのだ! われがあやつの養い親だ! 貴様にあやつに養育権は無い!」

「カーンを転生させたのは私です。私に養育権があるはずでは?」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 ミゼルローンは怒った。


「うるさい! 一言、苦情を言わせて貰うぞ! あいつの内面は異常だ! 見ているこっちの頭がおかしくなりそうだ!!」

「何がどう異常なのですか?」

 

 フラスフィンは冷静に反論した。

 ミゼルローンは怒った。


「バカ! いいか、よく聞け! 普通の人間は、人を殺したら精神的ショックを受けるのだ! 罪悪感のあまり嘔吐したり、活動不可能なまでに精神が追い込まれる!

 だが、カーンはそんな素振りを見せていない……この時点で何かがおかしい!」

「ただ単に物理的に吐けなかっただけでは?」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 棺桶の形状では嘔吐できないだろう。しかし、ミゼルローンは怒った。


「茶々を入れるな!

 普通の人間はここまでゲームをしない! 社会人だったらなおさらだ! 『魔王クエスト』と言い、『ラストファンタジー』と言い、『真・多神転生』と言い、どれもクリアに50時間以上はかかるゲームばかりではないか!

 社会人は物理的に長時間ゲームすることが出来ない! アニメや漫画も同様だ!」

「物理的に時間を作れば可能なのでは?」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 無職になれば80年は遊べる。何なら無を捏ねて時間を作ればいい。しかし、ミゼルローンは怒った。


「そういう問題ではない! 西暦2003年に『アルティメットオンライン 聖魔の地』が発売されて以来、あやつはずっと同じネトゲをやっていたそうではないか! しかも並行して別のネトゲまでやっている始末だ! どう考えても物理的に不可能だぞ!」

「効率よく遊べば可能なのでは?」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 効率は大事だ。しかし、ミゼルローンは怒った。


「効率でネトゲの人間関係が回せるか!

 普通の人間は、30代後半にもなれば昇進する! 30代後半で平社員は無い!」

「会社によります」


 フラスフィンは冷静に反論した。

 会社によって昇進ルールは違う。しかし、ミゼルローンは怒った。


われが知る地球観に異論は許さん!

 そもそもの話、普通の人間がここまで仏教に詳しいか!? 自殺するためにわざわざオーストラリアまで行くか!? 全財産を毟り取られた上で、どうやって航空費を払った!? 借金を背負うための保証人は、誰が名乗り出た!?」


 フラスフィンは、静かに微笑んだ。


「彼は凡人ですよ。私のような()()に釣り合った、至って普通の地球人です」


 フラスフィンは時計の針を召喚した。428899本の時針が円を描いて、フラスフィンの背に広がる。


「普通ではない……普通ではないぞ。あやつは人として重要な、何かがズレている。

 ――ここまで言った上で、もう一度問うぞ」


 ミゼルローンは金剛杵ヴァジュラを召喚した。六竜歴1557年のウラグルーンを背景として、1000本の金剛杵ヴァジュラが時空に広がる。



 ミゼルローンは問う。カーンの魂を地球に呼び込んだ、全ての元凶にして災厄。【未来地平の魔女】に、根源的な問いを投げかける。



「――貴様、一体()()()()()()()?」



次話は三人称視点(ミゼルローン視点寄り)です。


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