42話:クリスタルゴーレム・アビスアースのパンチは痛い
【クリスタルゴーレム・アビスアース】。全身がクリスタルで出来たゴーレムだ。
何でも、奈落の土で育ったからアビスアースという名前になっているらしい。
奈落の土とは何ぞや? それは、【奈落の種子】に汚染された土壌のことである。これは白蛇教団・第二使徒【裏切り】が関係しているのだが、今は時間が惜しい。後で説明しよう。
イリシャは【クリスタルゴーレム・アビスアース】を見て、瞳を爛々と輝かせた。
「クリスタルゴーレムよ! いい素材が採れそうだわ!」
「やめておけ。普通の魔物とは様子が違う。無闇に【素材採取】を行えば、悲惨な目に遭うかもしれんぞ」
セイル先生は至って冷静だった。地球のSF映画では未知の物体に触って未知の生物に寄生されるのはお約束なので、セイル先生の判断は理に適っていると言える。
『来るぞっ!』
ドンドコドドコドコボフボフボフと腐葉土を乱暴に踏み鳴らし、クリスタルゴーレム・アビスアースが迫る。
さて、中ボス戦と大ボス戦なので最終形態を顕現しよう。
今回はどのルートの最終形態にしようかな。
良し、賢者ルートにしよう。魔法を極めた賢者ルート最終形態の知恵を以てすれば、【無限加速宇宙】を扱えるのではないかという淡い希望を抱いての選択だ。
賢者ルート顕現要請! フラスフィンさん、頼みます!
ピコン。
『賢者詩文最終形態権限まで残り120秒』
要請は無事に受諾された。120秒後に僕は賢者ルート最終形態になれる。
フェリスさんが【光波盾】でクリスタルゴーレム・アビスアースの殴打を防ぎ、イリシャが【激烈炎破爆弾】を投げる。セイル先生は【マジッククリスタル】でMP回復だ。
定番と化したいつもの戦法だが、相手は中ボスだ。【炎破】並の威力を持つ爆弾を投げても、表面が焦げ付く程度のダメージしか与えられなかった。
「硬っ!? 爆弾が効いてないわよ!?」
「工夫をしろ。何のために【ニューウェーバー】があると思っている」
セイル先生はイリシャに忠告すると、【スタミナクリスタル++++】を掲げた。クリスタルから放たれる特殊な波動によってパーティメンバー全員のスタミナ(SP)が全回復する。
クリスタルゴーレムの殴打を剣でガキンガキンと弾くフェリスさんの傍らで、イリシャは【ニューウェーバー】で空をぐるぐるとかき回した。
「【バトルランダム合成】!」
そこでそのスキルを使うのか? 【平和の音】で攻撃キャンセラ効果を付加して欲しかったのだが、まあいいか。僕は合理的な判断を内心で下す反面、イリシャがどんな素材でどんな物を作るのか、ちょっと楽しみに感じていた。
腐葉土を空間に突っ込んでぐるぐるぐるー。ハイ出来上がりー。
「【地裂爆弾】ー! ってコレ、ゴーレムに効かないヤツじゃない!」
そう、クリスタルゴーレム・アビスアースは地属性の魔物。地属性の爆弾ではほとんどダメージを与えられないのだ。
というか、爆弾を投げるという発想から離れられないのだろうか。せめてもっとこう、爆弾を地面に埋めて罠代わりにするとか、別の方法があるんじゃないだろうか?
ピコン。
『発想値が100増加しました。スキル【地雷操作】を獲得しました』
ピコン。
『称号【地雷屋さん】を獲得しました』
スキル【地雷操作】を獲得してしまった。
しかも何だ、称号【地雷屋さん】って。全く嬉しくない称号だぞ。僕は闇の武器商人か何かか。
「待って、もうちょっといいアイテム合成するから! 異次元に収納してある素材に風属性の【ウィンドレーセル】があるから、これに火属性の【デンバー鉱】を足して……」
うおおおい、まだ合成する気なの!? えーい、人工闇竜・幼生体は【前衛】で頑張る! イリシャが素材を探している間は僕が【受け流しLV5】で敵の攻撃をしのぐぞ!
このクリスタルゴーレム・アビスアースはレベル55だ。僕よりレベルが遥かに高いので、【存在同化領域】は使わない方が良い。
うおっ、ゴーレムに殴られた! 痛い! HPゲージがきゅーんと減っていく! 一発でHPゲージが半分近く持っていかれたではないか!
「イリシャ。いつまで時間をかけているつもりだ」
「いい素材が見つからないのよ!」
イリシャと漫才を繰り広げる間、セイル先生は【ライフクリスタル++++】を使い、僕らのHPを全回復させていく。
うわー、これは何をやっても赤字だな。セイル先生の懐からゴッソリと高額なアイテムが消費されている様はぞっとするものがある。
パーティメンバーが使った消耗品は誰が補填するのだろうか。請求費は如何ほどになるのだろうか。
僕は金という資本主義社会の頂点に立つ存在に恐れ戦きながら、ゴーレムとどつき合いをするのだった。
ピコン。
『賢者詩文最終形態顕現まで、残り30秒』
●ステータス
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:9
種族:人工闇竜・幼生体
職業:無職
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神、巨乳美女を警戒する、古代兵器級、地雷屋さん(NEW!)
隠し称号:神帝から観察されている
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV5、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、異次元収納LV10、鼻伸ばし、地雷操作(NEW!)、ゲーマー魂覚醒LV2、無限加速宇宙、未来集約
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク、ピノッキオンズ・アビスアース×28
存在ストック上限:30/30
パーティ:フェリスのパーティに所属
隠し効果付与:神帝の観察
スキル 発想値
『《スキル交換》 50/100』
『《スキル譲渡》 50/100』