イリシャ視点:あの子に謝りたいこと
(【精神会話】って、疲れるのよね)
フェリスなる女騎士のパーティに入ったイリシャは、【精神会話】の仕様に難儀していた。
魔法は使えないが、恩恵は受けられる。普段滅多に交わさない【精神会話】は、思いの外にイリシャの気の調子を崩していた。
イリシャは魔法への適性が無い。故に、魔法と接すると気に乱れを生じさせてしまう。いわゆる、【魔法酔い】に近い症状であった。
「はぁ。お腹が減ったわ」
隣を歩くセイルが眼前の魔物を吹き飛ばすついでに、チョコレートを差し出す。
「そうぼやくな。帰ったらスライムたちの料理が待っているぞ」
イリシャはチョコレートをかじる。空腹に染みる甘みが舌の上で広がった。
「ん。ありがと」
「さっさと行くぞ。今回の件は君に責任があるのだからな」
セイルに指摘され、イリシャの胸中に苦い思いが広がる。
エミルと言ったか。あの子のあの表情。何度思い返しても、胸の中にもやもやが残る。
(あの子にはちゃんと説明して、謝らないと)
イリシャは森林地帯の入り口を見つけるや、【異次元収納LV10】を発動した。
森林地帯には多くの魔物が潜んでいる。【夜視】に映る魔物の影を数えるに、優に100体は超えているだろう。
(これも自業自得かしらね)
イリシャは新錬金星剣【ニューウェーバー】を取り出すと、夜の闇に刃を振るった。
次の話ではカーン視点に切り替わります。