32話:面倒くさいので10年ぐらい眠りたい
よしよし。これで餓死する心配は無くなった。
オーロラウェーバーを火で炙って殺菌消毒完了! 採取済みの素材は【異次元収納LV10】にポイポイ放り投げておく。
てなわけでマッハで魔物を刈ってガンガン素材を入手して食事を済ませた僕は、決闘領域に帰還した。【オーロラウェーバー】の一時貸与スキル《バトルランダム合成》を使えばこの場で合成できるが、それでは意味がない。自分の力を誇示するためにわざわざ決闘領域内に戻り、イリシャの眼前で【オーロラウェーバー】で【バトルランダム合成】する必要があるのだ。
お空をマッハ15ぐらいで飛翔し、決闘領域に再度侵入する!
僕が決闘領域を出入りする度、紳士ことセイル先生はぴくりと眉を動かしていた。さすがはセイル先生だ。決闘領域を勝手に出入りする僕に気づける辺り、世界救済会社で《古き救済》のパーティメンバーとして行動していただけのことはある。
ちなみに闇竜神となった僕は【思考超加速】【多重並列思考】持ちなので、複雑な思考を一瞬で処理できるようになっていた。そのため、僅かな時間で他の詩文を検索・閲覧できるのだ。
錬金術師詩文をチラッと見る。ほうほう、なるほど。セイル先生のステータスはこうだ!
『ステータス
名前:セイル・ラザム
LV:99
性別:男性
種族:翼人族
職業:教師
生命力:555
魔力:888
活力:777
筋力:888
敏捷性:999
運:10
装備:モノクル、黒いコート、白いシャツ、赤いネクタイ、黒いジャケット、ズボン、ベルト、革靴
スキル:素材発見LV10、素材採取LV10、合成LV10、ランダム合成LV10、バトルランダム合成LV10、分解LV10、戦闘時装備、鷹の飛翔、異次元収納LV10、風属性耐性、味見、存在分解、秘匿
称号:錬金術の英雄』
なに? ステータス欄が僕と違う? そうだよ、この世界はβ版なんだ。β版の住民はHPが生命力と表示されるし、STRが筋力として表示される。β版はそういうものだ。むしろステータス欄にSTRとかINTとかが表示されている僕の方が異質なのだ。
しかし強いな。セイル先生は実に強い。【神帝】と渡り合えるんじゃないかと思うステータスだ。スキル《秘匿》も強いし、何より《存在分解》が強い。
セイル先生はどれほどまでに強いのか。錬金術師詩文を少しだけ覗いてみよう。ああ、詩文と書いてルートと読むのは少し面倒だから僕が話している時はルートで統一しよう。
錬金術師ルートでは、第19話「チートVSチート」において僕とセイル先生が同化していた。セイル先生は僕の《存在同化》を食らった状態で《存在分解》を発動し、僕と自分を切り離したのだった。
そして、こんなやりとりをしていた。
▼ 錬金術師ルート 第20話 「憑依生物じゃありません!」▼
「解析が終わった。《存在同化》は自身と標的の《魂の格差》を参照する」
た、魂の格差ぁ?
「魂の格があまりにも高い相手と同化を試みれば、逆に同化されてしまう。そういう代物だ。君のユニークスキルは実に危ういな」
ぐっ! 下手をすれば僕は雑魚に同化されていたのか!
▲ 閲覧終了 ▲
というようなことがあり、【存在同化】は実は自爆技に近いスキルだったらしい。
【存在同化】は自身と標的の間の【魂の格差】を参照する。魂の格差が大きければ大きいほど、逆に同化されてしまうというとんでもないデメリットを備えていたのだ。
レベル1のキャラがレベル99のボスを同化しようとしても、レベル1のキャラがレベル99のキャラに同化されて終わりという悪意満々な仕組みだったのだ。
錬金術師ルートでは、セイル先生と同化して僕が消滅しそうになる。そこをセイル先生に助けられた挙句、僕はセイル先生を生涯の師として崇めてしまうらしい。
そして、同化による記憶共有を通じて僕の今生の秘密を知ったセイルは、こんなやりとりをするのだ!
▼ 錬金術師ルート 第21話 「ドキッ☆ 悲壮なる真実!」▼
「ふむ。極めて複雑な魂の構造だ。君の魂に【暗号防壁】がかかっている」
ほう! ははーん、さてはあれだな。ここは魔法と錬金術が組み合わさってて解けないとか、道具を4つ揃えてこいという話になるんだな。分かるぞー、それぞ王道だからな!
「いや。全部分かったぞ。君は異世界【地球】出身だ。慈悲を受けて死亡した後、ウラグルーンに転生した地球の生物だ。今生の君は人工冥界の化身だ。動く人工冥界にして生きる人工冥界だ。と言うのも、君は闇竜神にして【冥】の神帝になるべくして作られたヤドカリ系人工素体、いわゆるホムンクルスだ。魂内領域に拡張性を持ち、レベルが上がるごとに魂内領域が拡張する。【存在ストック】とは、魂内領域を君のために分かりやすく翻訳した言葉だな。六竜神のご配慮が窺える。君は愛されているな。君のレベルが上がるごとに魂内領域は拡張し続け、いずれは一世界の魂を全て収納できる人工冥界と化すだろう。そして【存在同化】とは生者を死者に変換してその魂を人工冥界に強制転送する行為であり、人工冥界になるべくして生まれた君のための固有スキルだ。【存在同化】が極限まで進化することによって、この世界を任意に冥界に強制変換させることが可能となる。それはすなわち、来たるべき災厄の日に備えてこの世界を停止させ、保護するという意味を孕んでいるのだ。喜びたまえ。君は人工冥界であると同時にこの世に生きとし生ける者たちの魂をその身に宿して奈落の闇を移動する世界の種子でもあるのだ。しかしながら、君を製造した古代文明においては君は失敗作だ。ホムンクルス製造工場で作られた闇竜神人工素体4番の君は魂の始動に失敗して廃棄された。だが製造日から1557年経ってから魂が本格的に始動し、君という自我が目覚めた。魂の始動が失敗した理由は、地球転生者である君と闇竜神人工素体4番の魂が融合したためであり、そのために魂の始動が遅れたのだ。いわゆるスロースターターというやつだな。魂を始動させてから1557年経ってから自我が芽生えるという点を見ても、君は大器晩成型と言える」
おい!
おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
そこは悲壮めいた感じを漂わせて「ふっ僕は1557年前に生まれた古代文明の兵器だ(キリッ」とか言う場面だろぉぉぉぉぉぉ!!
▲ 閲覧終了 ▲
嘘ではない。錬金術師ルートを辿ると、こんなギャグみたいな展開を毎回のように繰り広げているのだ。
我ながら恐ろしい。
このような人材がゴロゴロと在野に転がっているのがβ版の世界の悪いところだ。優秀な人物には高い地位と給料を与えなければならない。
しかし文明の発展と改良は面倒くさい。【古き救済】のメンバーと合流したら10年ぐらい眠ってしまおうか。
あー、いかんいかん。闇竜神になると余裕が生まれてしまうのでつい余計な考え事ばかりしてしまう。
今はイリシャと向き合おう、そうしよう。
えーと、何だっけ。
そうそう、合成だ。オーロラウェーバーでぐるぐる空間を回してポイポイ素材を放り込んでハイ完成ー。【雷撃剣】ー!
オーロラウェーバーで【バトルランダム合成】した僕を見て、イリシャはぽかーんとした表情になっていた。しょうがないか。イリシャからしてみれば、僕がいきなり光ったと思ったらデカくなって1分ほど姿が消えて再度出現したらバトルランダム合成をしているという謎の展開になっているのだから。
「あ、あんた、何なのよ。何者なのよ!」
通りすがりの闇竜神です。
あ、そーれ。【雷撃剣】装備ー。
オーロラウェーバー&雷撃剣、二刀流!!
さあ、決着をつける時間だ!
●ステータス(未来)
名前:カーン・オケ
LV:99
HP:999
MP:999
SP:999
STR:999
VIT:999
DEX:999
INT:999
AGI:999
LUK:999
装備:オーロラウェーバー
スキル:闇竜神
状態:未来集約・錬金騎士詩文、錬金騎士詩文最終形態
●ステータス(本来)
名前:カーン・オケ
本名:佐藤孝一
LV:1
種族:人工闇竜・幼生体
職業:無職
称号:人殺し、忍耐の精神、守護の精神、巨乳美女を警戒する、古代兵器級
隠し称号:神帝から観察されている
スキル:存在同化領域、自動翻訳、情報把握・強、火属性耐性、地属性耐性、味見、素材発見LV2、素材採取LV1、毒耐性、休憩LV1、傲慢LV2、同化存在解放、剣化、甲殻虫の飛翔、晶化斬、潜伏LV1、炎破、受け流しLV4、二刀流、熟練度把握、発想値把握、闘気制御、生物知識・基礎、ゲーマー魂覚醒LV2(NEW!)、未来集約
存在ストック:リスタルサーク、リスタルサーク
存在ストック上限:2/8
パーティ:フェリスのパーティに所属
隠し効果付与:神帝の観察
スキル 発想値
『《スキル交換》 50/100』
『《スキル譲渡》 50/100』
『《???》 ???/100』
『《無限???》 25/100』