2歳児後半
今日はスキルを使った隠れんぼの日だ。
物置小屋は初めて来たが、大きい。前世の家2軒分くらいはある。
「アイリス、此処が物置小屋よ。今日からしばらくは此処で鬼ごっこするの。
ここで隠れんぼしてアイリスが私たちに勝てるようになったら、またお家で隠れんぼよ」
前世の家2軒分…。あれ、これは小屋と言うのだろうか……。まぁ家と比べれば小屋並だよね!
そう、前世で極一般的な家庭で育ったアイリスは「小屋」の大きさに戸惑うが、今世では貴族からしたら小屋である。
試しにみんなで小屋に入り、どんな構造をしているかや、危ないところが無いか確認する。
お母さんは
「長い間放置してたから埃っぽいかもしれないわね」と言ってましたが全然そんなことないと思う。
「アイリス、今日は初めての場所で隠れんぼだから私達は10分経ってから探し始めることにするわ」
「分かった!どこにかくれてもいいんだよね?」
「もちろん、高そうな物が近くにあろうと全然構わないわ」
(出来れば奥様と一緒に探す私の身にもなって頂きたいです……)
お母さんはどこに隠れてもいいよ。って言うけどフェルは顔色がちょっと悪いね。
でも実はもう何処に隠れるか決めてるんです!
ズバリ、入口近く!
初めての場所で隠れんぼすると大抵奥の方に行きたくなるじゃない?
だから裏をかいて近くに身を潜める。
フフフ、我ながら完璧。
隠れては行けない場所が無いか最終確認をし、自分の考えを脳内で確認して上機嫌になっているアイリス。
こういう所はやはり体に精神が引っ張られているのだろう。
「お母さんたち、目ーつぶってて」
「ハイハイ」「…」
よし、瞑ったな、レッツ隠れんぼ!
物置小屋の中は思っていたより薄暗い。窓が壁についているが保管してるものが傷まないようにカーテンがかけられていた。
まぁ、入口近くに隠れる予定の私には関係ないんだけどね!
えーと、入口付近にある隠れ場所は…
1、いかにも高そうな屏風?の裏
2、安っぽいツボの中
3、積まれた箱の裏
んー、2かな!私も前世は庶民だし、高そうな物を壊したら怖いものね、それに狭い所って安心するし。
時間はあるけどもう入っておこう。
…………。
「アイリスー、もう探すわよ〜」
きた!
スキルを使うことをイメージして気配を消す。
「あら?うふふ、アイリスみーつけた」
え、探し始めてから10秒経ってないんだけど、もう見つかったの?
スキル使うとこんなもん?
開始から5秒。速攻で居場所がバレてしまったアイリスにフェルが助言をしてくれた。
「アイリス様、私が言うのも恐縮なのですがスキルを使うのが遅かったと思われます。
奥様は気配察知のスキルを持っていますので…」
「気配察知のスキルを持ってるとどうして早くスキルをつかうの?」
「それはねぇアイリス、私が、アイリスの気配をアイリスがスキルを使う前から追えるからよ?」
?どういうこと?
と思ったらもう1回噛み砕いて教えてくれた。
曰く、
気配を消す前に隠れたら、うっすらだが気配の痕が残る。
しかも私は他の場所を見に行ったりもしなかったせいで、痕が入口にしかなく、ちょっと探しただけで見つかったと。
なるほど。
これが人混みの中だったりしたら見つからないだろうけど、ここはあまり使われて居ない物置小屋だし、気配を追いやすかったって事か。
次回からは最初からスキルを使うことにしよう。
「もう1回!!」
今回の失敗を活かして次はもう少し長く隠れてみせる!
アイリスは勝つ事を諦め、どれぐらい隠れていられるかを測るようになった。
そうしてスキルを磨きつつ2歳児を過ごし、アイリスは明日で3歳になる。
そう、家庭教師が着く日だ。
誕生日に家庭教師着けるって頭が可笑しいのでは?
誕生日プレゼントが私に優しくないよ…。
と周囲に対する不満を感じつつも辺境伯の娘としてしっかり教養を身に付けなければと、気合を入れ明日に備える。
でも、せめて優しい人が良いなぁ。
こうしてアイリスは3歳の誕生日を迎えるのだった。