スキルの精度
初スキルをまさかこんな形で取得する事になるとは。
普通の隠れんぼだよ?
……取り敢えず、スキルをゲットした事は内緒にしてスキルの精度を調べよう。
そう考えたアイリスは
「お母さん、フェル、隠れんぼしよう!」
「ええ良いわよ」「はい、かしこまりました」
と、二人を隠れんぼに誘った。
(誘拐の話をしてから全然隠れられてないから見つけるのは簡単ねぇ。怖がらせ過ぎたのは良くなかったかしら?)
レイファは全く隠れられなくなった娘を少し心配しながらも快諾。フェルは当たり前のように直ぐに頷いた。
「じゃあ、10数えたら探してね!ゆっくり10だからね!!」
「ハイハイ」
よし、じゃあ内開きのドアの影に隠れよう。
スキルがそんなでもなかったらすぐに見つかるし、精度を調べる分には申し分ないでしょ。
スッとドアの影に潜み、気配を消す事を意識するアイリス。
「じゃあ探すわよ〜?アイリスはどこにいるのかしら〜」
5分後、
(可笑しいわね、何時もなら割と直ぐに見つかるのに、部屋を出てから振り返っても居ないし)
(変ですね、何時もなら大体部屋を出ようとすると慌てて着いてこようとするのに、今日はその気配がありません)
((??))
何時もならもう見つけているはずなのに……。と不思議がる二人を見つつアイリスは更に検証を続ける。
お母さん達気付いてないよね。じゃあちょっとだけ物音をたててみよう。
カタッ
「みーつけた!」
「ここにいらっしゃったのですか」
「見つかっちゃったー!」
うん、物音をたてれば流石に気づくか。でもスキルを使うことを意識しながら必死で気配を消せば視界に入ったくらいじゃ気付かないと。
うん!これ便利だね!
検証結果にアイリスは大満足である。
「アイリスは初めからここにいたの?」
「うん!いたよ!」
「ですがそこは私がちゃんと見たはずですが…」
「うーん、もしかしてアイリス、スキル取得した?」
「うん!」
ずっと此処に隠れていたと答えると納得いかなそうに首を捻るフェルに、直ぐにスキルの存在を見抜くレイファ。特に隠す必要性は感じなかったため素直に答えたアイリス。
「えっ!?」
「見つからなかったって事はそうよねー。
じゃあ今度からはお母さん達も本気で探すことにするわ」
「えっと、奥様それはつまり」
「スキルにはスキルで対抗するのが当たり前よねー」
え、次回から難易度上がるの?
こうしてアイリスは、次からは難易度が上がった隠れんぼをする事になった。
「ねぇあなた、アイリスの事なんだけど」
「アイリスがどうかしたか?」
「スキル取得したみたいよ、それも自身を見付けにくくする系統の」
「あの子はまだ2歳だぞ?
どうしてそんなスキルを取得したんだ?そんな機会ないだろう」
「前に隠れんぼで騒ぎになった事があったじゃない?あの後怖がらせすぎて、その次の隠れんぼから気配を消す努力をし始めたらしいのね。
それでつい最近取得したらしいわ」
「我が娘ながら才能が凄まじいな、遊びながらスキルを取得するとは」
「ええ、本当に、貴方の血をひいてるわね……。
それで、よ。折角取得したのだから磨かなければ勿体ないわ。今度から遊びの中で私達もスキルを使うことにしたのだけれど、貴方から何か提案はある?」
「そうだな、今の状態で普通に隠れんぼをすればお前達の圧勝だろう。
物置小屋でやればいいのではないか?
あそこなら隠れるスペースが多くて少しはハンデになるだろう」
「確かにそうね、じゃあ今度掃除させておくわ」
「ああ、スキルを磨くなら根気が必要だ飽きるまでやらせよう」
両親はスキルを取得した娘の才能を磨いてくため、遊びながらスキルを使わせる事にしたようだ。
が、二人は知らない。アイリスが隠れんぼの事をどれだけ好きなのか。
工夫を繰り返し、一日中隠れんぼをしたがるアイリス。
飽きること無くずっと遊び続け、アイリスよりも先に飽きを感じたのはレイファ達である事を。