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異世界での活動と奮闘日記  作者: ミツバ
4/19

2歳児

アイリスが幼児の体を使いこなそうと奮闘している間に2年の歳月がすぎていた。


その2年の間、アイリスは出来うる限り体を思うように動かそうと、周りに不自然に思われない程度に発声練習っぽい事をしてみたり、ハイハイを出来るだけ早くやってみたり等、色々な事に挑戦していた。


が、その挑戦はアイリスが大泣きして終了した。


そもそも、学生をやっていたアイリスにとってはストレスがあり過ぎたのだ。

前はやりたい事を直ぐに実行出来た。物を掴むなど造作もない事だ。が、今は違う。

赤ん坊の手では碌に物も持てず、立つ事も出来ない。歩く走るなど以ての外である。


赤ん坊だから仕方ない。


と、最初は受け入れていたアイリスだがそれがずっと続くなら話は別だ。

だんだんイラつき始め、気分転換しようと考えても出来る事が限られている。


少し質の悪い紙を与えられ、絵を描こうと思ったら思うように筆を持てない。これでまたストレスが溜まる。


仕方なく深呼吸したり眠ったりすると、今度は周りが騒ぎ出す。

赤ん坊の寝顔が可愛いのは認めるが、中身は学生だ。寝顔を覗き込まれればそれまで襲ってきていた眠気など消える。そうしてまたストレスがかかる。


こんなことをしているうちにアイリスの精神は限界を迎えた。


結果が大泣きである。

ずぅっと我慢していた分、キレた時の勢いが凄まじい事になった。泣きながら物を叩く投げるの大騒ぎ。


今まであまり泣かず、騒がなかった娘の突然の暴挙に両親は何が起こったのかと目を剥いた。

当然のように病気を心配し、医者に見せる。

そして医者から出た診断結果はストレスと寝不足。


寝不足気味だったのは知っていた為、納得し、「眠そうな時はそっとしておく」という事で落ち着いた。


しかし問題はストレスだった。周りはアイリスにとって何がストレスなのかわからない。

結局、「周囲に危険がない場合はアイリスの動きを阻害しない事」で落ち着いた。


この「阻害しない」が良い方向に働いた。


アイリスは、母に「危ないから行っちゃダメよ?」と言われていた屋敷内を思う存分探検した。

初めて見る場所に大はしゃぎして遊びまわり、疲れて眠るという行為を繰り返した。

そうしてそんな生活を何週間も繰り返したアイリスは、ストレスとは無縁の健康体に変わった。



更に、アイリスが絵本を持てばみんなが読んでくれる。そうして語学の勉強をして、難しい言葉もどんどんわかるようになっていった。

何気に、言葉がわからない場所に1人放り出されたのは不安だったアイリスは死ぬ気で覚えた。


そして今は母に文字を教わってる。

実を言うと絵本を読んでもらっているだけだが、本人は


文字も頑張ればかける気がしなくもない。


と考えているようなので、満足しているのだろう。


あとはダンスや作法を始めている。とは言ってもダンスは両親が踊ってるの見ているだけだが。


しかもダンス中に両親がイチャイチャしてるので目のやり場に困る。

前は


「今日も君の髪は綺麗だね」


なんて言いながら、母の髪にキスしている所を見せられたアイリスがイラッとしてつい


「どーして髪にチューするのー?」


と聞いてしまった程だ。そしたらドヤ顔で


「親しい相手には親愛の情を込めてこうするんだよ」


なんて言うので、タチが悪い。

前世では 年齢=彼氏無し だったアイリスを苛立たせるには十分である。

どうすればこの苛立ちを解消出来るのか、本気で悩んだアイリスは近くにいたウィリアムに


「ウィリさん髪にチューして〜」


とニコニコ笑顔で走りよって行く事にした。慌てて


「え、あ、待ってアイリス!」

「あら〜アイリスってば大胆ねぇ」


と、止めようとした父を見て。


「フッ」


とアイリスが鼻で笑った事など誰も知らないだろう。


溜飲(りゅういん)が下がったアイリスだが。

父が本気でウィリアムを睨んでいるのを見てちょっと引いた。

ウィリアムはだいぶ困っていたが、結局は髪にキスしてくれた。

アイリスは


ウィリさんゴメン。でもこれに懲りて堂々とイチャつくの辞めればいいと思う。


と、ウィリアムへの謝罪を胸に秘めつつ。あまり悪びれた様子はなかった。


あと作法の事だが、コレは皆がやんわり教えてくれている。3歳になったら家庭教師が着くそうなので、それからビシバシ教えてもらうのだそうだ。


3歳になるのが今から憂鬱だね。


アイリスが問題児だから尚更である。




どうせ3歳になったら作法とかでお母様、お父様呼びになって甘える機会も減るでしょうし、今のうちに甘えておこう!

と、思ったアイリスは、レイファとフェルが目を離した隙に隠れた。とは言ってもカーテンの裏にだが。

甘える事がどうして隠れる事に繋がったのか、アイリスの考えはこうである。


隠れんぼって良いよね!

私は前世のちっちゃい頃から大好きだよ。祖母の家のワンコに見つからないよう隠れるんだけど、やっぱりバレちゃうんだよね〜。流石、人間の100万倍の嗅覚。


そんな軽い気持ちで隠れたのが悪かった。

レイファはガチ泣き、フェルは真っ青。


「きっと誘拐されたに違いないわ!」

「申し訳ありません奥様!私が目を離したばっかりに!」


隠れていたが故に顔が見えず、

「アイリス〜?どこにいるのー?」

「アイリス様、どこですか?」


と探している2人の必死さがわからず、ただ普通に探しているだけだと思ったせいで起きた出来事だ。


「ごめんなさい!!」


アイリスは当然直ぐに出ていき。幼いなりに必死に謝った。

出て行くと2人ともホッとした表情を見せた後、本気のお説教をした。思い出すだけで、アイリスが恐怖で震え上がる程の剣幕だった。

その後に誘拐等の話と怖さをみっちり教えられ、寝物語に聞くお話が全部、誘拐関係のものになった。

過去には王族も攫われた事があるとか。


それからアイリスは、きちんと行く場所を伝えて移動するようになった。


「お庭に行ってくる!」

「お父さんの所に行ってくる!」

「本のお部屋に行ってくる!」等など


「アイリス様。お呼びした時にお返事を頂ければ、別に行く場所をお伝えしなくても大丈夫ですよ?」


「だって誘拐は怖いもの」


そんな会話を何回も繰り返した。


しかし、なんだかんだで隠れんぼもしたいので時々遊びに付き合ってもらっている。

だが、誘拐の話をされてから、鬼の人が他の部屋に探しに行くとついて行くようになってしまった。


勿論、気配を消すように頑張りつつ。


いや、どういう隠れんぼだよ。


とアイリスは自分でも思っている様だが。あれだけ怖い話されると恐怖で耐えられないらしい。


「だって他人事じゃないよ?私は辺境伯の娘だよ?狙われますって」


と言うのがアイリスの言い分だ。そんな隠れんぼをしていたからだろう。ある日なんの前触れもなく


『スキル、隠密を取得しました』


人生で初めて、スキルを取得した。

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