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異世界での活動と奮闘日記  作者: ミツバ
17/19

王都6

案内されたのは昨日ミリナ姫と話した庭園だった。


まさか2日連続、ここでお茶会をするとは思いませんでした……。


フゥ。と息をつき、これからのお茶会で粗相をしないよう、気を引き締めるアイリス。


それも今回は私と皆様の顔合わせですからね。少し緊張してしまいます。そう考えると、昨日皆様と少しではありますが会話出来たのは良かったです。

これで初めましての方ばかりでしたらとても気を使わなければいけませんもの。


そう、今日のお茶会は(ほとん)どアイリスのために開かれるのだ。緊張もする。


「こちらで少々お待ち下さい。皆様をお呼び致します」


「分かりました」


1人になると一気に緊張がやってくる。


昨日あった限りではみんな普通の人達だったし、こちらに対して特に敵意の様なものは抱いていないはずだ。

頭ではわかっているのだが、今世ではこの方々と基本的に行動を共にすると言っても何ら過言ではない。

しかも内2人は王族である。


はー、緊張するー。


心の中で声を出して、気持ちを落ち着ける。


少しするとミリナ姫が駆け足でやって来た。


第一王女様ともあろうお方が走ってきて良いのでしょうか。

まだ4歳ですし平気ですかね?


緊張で変な事に意識が回りつつ、ヒヤヒヤしながら迎える。


「アイリス!昨日ぶりですわね!また会えて嬉しいですわ!」


「はい、おはようございますミリナ様。

またお会いできて私も嬉しいです」


抱き着くと言うより飛びついてきたミリナ様を頑張って支える。


凄くいい匂いがするけどなんの匂いだろう?


やはり変な所に気が回るアイリス。

だが、そんなことはミリナ姫には伝わる訳もなく。


「アイリスとまた会えるって聞いて美味しいお菓子を沢山用意して貰いましたの!

今日は沢山お話しましょう?」


と、実に可愛らしい笑顔で話しかけてくれる。


「私の為にわざわざありがとうございます」


「おや、ミリナの側仕えになる者は加護持ちだと聞いていたが君だったのか」


声に振り向くとそこには殿下とべレク様がいた。

2人は相手が私だと知らなかったのだろう。少し驚いているようだ。


「はい。これからよろしくお願いします」


「ああ、よろしく」


殿下はニコッと微笑んでくれたがべレク様は無反応だ。アイリスにとっては最早それだけで不安である。

だが、対象的にミリナ様はニッコニコの笑顔で


「これから、そう、これから一緒に過ごすんですもの!ふふふ、よろしくお願いしますわ!!」


と言葉を噛み締めて喜んでくれている。


うん。かわいい。


ミリナ姫でホッコリ癒されるアイリス。


「ふんっ。側仕えとして恥ずかしくないよう、俺が心得をしっかり叩きこんでやるからな」


つまり先輩として色々教えてくれるらしい。


「はい。ご指導よろしくお願いします」


「ああ、任せろ」


どうやら返事に満足してくれたようで、満更でもなさそうな顔で頷いている。


よかった。


やっぱりまだドキドキしている心臓を抱えつつ、お辞儀してミリナ姫の近くに控える。


「ですが、今日はまだ顔合わせを兼ねてのお茶会ですわ。

難しい話はまた今度にして今日は楽しくおしゃべりしましょう」


「そうだね。今日は顔合わせだ、お互いについて知る良い機会だろう。

質問があれば遠慮なく聞いて欲しい。勿論、べレクもだよ」


「私もですか?」


べレク様は人によって「俺」と「私」で一人称を使い分けているみたいだ。……面倒そう。


やっぱりまだズレた思考をしつつも、成り行きを見守る。


「改めて互いを知る良い機会だからな」


「はぁ、わかりました」


若干納得してなさそうだが頷くべレク様。


「皆様、お待たせ致しました。お茶をお持ちしました」


「ありがとうございます、ギリへスさん」


「席順はどうします?」


ここで全員が顔を見合わせて考える。


「やはり、ミリナとアイリス嬢は隣では?」


「じゃあ、べレク様とアイリスもお互いに同じ立場になるのですし、隣では?」


「おしゃべりなら前の席に座った方がしやすいのではありませんか?」


「そうか?あまり変わらないと思うぞ。なぁべレク」


「はい、どちらでも問題ないかと」


「そうかしら?」


「はい、私も問題ないと思います」


主に殿下とミリナ様が意見を出して私とべレク様はただ頷いているだけである。


そうして席順が決定、丸い机を時計回りで

殿下、ミリナ様、私、べレク様。の順で座ることになった。


ちなみにだが、アイリスはギリへスと会った時から親和術を使っている。

仲良くなりやすいスキルを持っているのに使わないつもりは無いし、使わなかったらそれはそれで仲良くするつもりはないのか、となる。


スキル頼みとか言わない。スキルは立派な才能なのだから使わねば。

いつでも使うつもりはないけれど。


誰に言うでもなく自分の意見を言いつつ、周りを見回す。


それにしてもここの空間だけ顔面偏差値が異常に高いですよね。

私からすれば目の保養ですけど。


そう。先程から近くを通る使用人達が皆、眩しそうな顔をしているのだ。


分かりますよ。その気待ち。


殿下は整った顔立ちに、優しさを滲ませる笑顔。その瞳には思慮深い光が浮かんでいるようだし、

ミリナ姫は人形のような美しいお顔に喜色を滲ませて、美しさに華を加えている。

べレク様は氷のような美麗な顔立ちを緩めて微笑ましそうに御二方の様子を見ている。


カメラに収めたいくらいの光景だ。この世界にカメラがあるとは思わないが、画家がこの場にいたら急いで筆を動かすのではないだろうか。


一応言っておくが、アイリスもかなりの美形である。


「お菓子をお持ち致しました」


「ありがとうギリへス!

アイリス、このお菓子はどれも美味しいのですけれど、オススメはコレとコレですわ!

ぜひ食べて下さいね」


「ありがとうございますミリナ様」


ギリへスが持ってきたお菓子は、美味しそうなクッキーだった。その中でもミリナ様が示した2つはどちらもチョコレートのような色をしている。


「では頂こうか」


この中で一番地位が高い殿下が食べてからお茶会が始まる。

アイリスがお菓子に手を伸ばした瞬間からミリナ姫の目が期待するようにキラキラし始めた。


……これは先程教えて下さった物を食べなければ。


もはや使命感のように感じながらお菓子を手に取り口に運ぶ。ちなみに手に取った時からミリナ様はアイリスをガン見している。


サクッとした歯ごたえと同時に口の中に広がる甘み。チョコレートというよりはココア?

今世では全くお目にかかる事がなかった味で、懐かしさに思わず口角が上がっていく。


「それは私の大好きな味なんです!アイリスも気に入ってくれたようで良かったですわ!」


「ええ、美味しいです」


この世界では魔法がある代わりに科学技術が全く発達していない。

同じように食事関係も発達していないと勝手に思っていたが、そんなことはないようだ。すごく美味しい。


「アイリス嬢はお菓子が好きなのかい?」


殿下から質問がとんでくる。


「好きですよ。ですが普段はあまり食べませんね」


「それはどうして?」


「機会がないからでしょうか。今まであまり意識した事もありませんので……。曖昧な返事ですみません」


「いやいや、構わないよ。

べレクはこういうお菓子、結構好きだよね」


「そうですね。肉の方が好きですけど」


「あははっ

それはそうだろうね。一緒に食べてるとよく分かるよ」


「皆様はいつも御一緒に食事なさっているんですか?」


「うん、そうだよ。家庭教師まで一緒だからね」


「私だけ一人なんですわ」


「歳が違うから仕方ないだろう?同じ事をしても分からないじゃないか」


「私だって頑張ればいけますわ!」


ムキになって言うミリナ様だが、2つ違いの彼らに追いつくのは中々厳しいだろう。

現に殿下もべレク様も苦笑いでスルーしている。


「アイリスは普段どんな事をしてますの?やっぱり勉強?」


「勉強は勿論やっていますが。魔法の訓練や武術もやっていますよ」


武術と言った瞬間、え?という顔をする皆様。


「まぁ!武術も?私、武術はまだやっていないのです。具体的にどんな事をするのかお聞きしても?」


「はい、やっているのは筋トレやストレッチ、組手ですね。

昨日は走り込みと乗馬をしていました」


「へぇ、もうそういう事やってるんだね。

僕達が武術を始めたのは5歳の頃だよ。君はまだ4歳だろう?大変じゃないかい?」


「私は3歳の頃からやっていますから、ほとんど日課のようなものです。あまり大変だとは思いませんよ」


「「「3歳!?」」」


おお、キレイに声が揃いましたね。


「なるほど、それくらいからやっているなら確かに日課のようなものだね」


「でも3歳って、私はその頃ようやく勉強を始めたんですよ?」


「……辺境は魔獣の脅威が多いと聞くからな、当然と言えば当然、なのか?」


納得したように頷く殿下。驚愕を隠せないミリナ様。納得しようとして出来ないべレク様。


反応は様々だが驚いて頂けたようで何よりだ。



ちなみに、この国では貴族であろうが女の子であろうが武器を握る。

理由は簡単、戦えない者は死ぬからだ。


昔、娘を溺愛していた貴族が優秀な護衛を大量に雇った上で娘を外に出さないようにしていた。

ところが、突然起こった魔物のスタンピードで護衛は全員生き残ったにも関わらず、溺愛されていた娘は亡くなった。


こういう話がこの世界ではゴロゴロある。


そして過去にこういった事が起きてからは、可愛がっているからこそ武器を持たせる。という考え方が主流になった。

というより、国の命令で余程体が弱い者以外は全員体を鍛えることが義務となった。


当時は貴族の反対が多かったらしいが、魔獣によって命を落とす者が目に見えて減った結果、今でもその義務は残っている。



「アイリスは辛いと思わないのですか?

日課とはいえ、やっぱり疲れるでしょう?」


「辛いと思う事は多いですよ。

ですが、魔物の話しを聞いたらやはり鍛えておいた方が良いと思いますし、辞めても良いと言われても続けるでしょうね」


ちなみにアイリスが一番怖がっているのは誘拐である。常に力を蓄えておきたいと考えるのは当然だろう。


「へぇ、凄いね」


「そうでしょうか?」


「うん。流石辺境伯の娘だね」


「ありがとうございます」


「さて、変な空気になっちゃったし、他の話をしようか」



…………





こうしてアイリス達の顔合わせは始まった。

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